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不本意ながら魔女は汚れてしまう

カーマインのお願いにより、私は領地の端の方にやってきていた。

途中、なんか領民が馬車を止めたけど全部カーマインに対応させた。

領民の方はカーマイン同様にゴブリンがどうのこうの言っており、危機意識が私達と違うのだと実感させた。まぁ、身近だもんね平民にとってさ。


「にしても汚らしいですわね」

「あの人達、くさい」


馬車の中でルミーナと私は愚痴を溢した。

というのも平民の奴等は悪臭が酷かったからだ。

服は何年も同じ物をほぼ毎日、身体は基本的に洗わず、土と動物の血で汚れている。

こんな奴らと好き好んで関わるカーマインの気がしれない。

まだ、前世の記憶に出てくるホームレスの方が清潔であった。


「まぁ、そういうなよ……関わってみると良い奴らなんだぜ」

「余り関わらない方が良いわ、家の名前に泥を塗りかねない事態になるかもしれないですもの」

「姉ちゃんまでそういう事言うのかよ。まぁ、貴族らしいって言えばらしいのかな」


いや、別に私は平民が嫌いな訳でも汚らしいと……汚らしいとは思っているけどヘルマンや両親みたいに勝手に増えて税を押さえる道具として見てはいない。

ただ、世間全体で平民を人と見る風潮は余りないのだ。

というか、特権階級の意識が高すぎる気がしなくもない。


ここで、私達と平民は同じ人間だと言うと貴族と王様の立場は同じと言っているような物なのだ。

平民と貴族と王様、同じ人間だから権威なんてものは無駄無駄無駄。

社長と新入社員は同じぐらいの存在です、こんなことを言ってたら頭おかしいと思われると言う事が分かるだろう。

遠回しに、俺は王様は偉いと思わない。俺と同じ人間だろうとカーマインが言っていると取られかねないのだ。

とばっちりで一族全員斬首とかされるかもと思うと賛同できないね。


「そもそも、お嬢様って結構クズだし」

「オホホ、誰がクズですって」

「痛い、猫被りながら打たないで」


この駄メイドが!私は長い物に巻かれてるだけだ!別にクズじゃねーし、仮にそうだとしても私が生きる為には必要な事だし!


「っていうか、勝手に馬車なんて借りて来て良かったの」

「良いわよ、アルトリウスに宝石渡したら二つ返事で貸してくれたから」

「アルトリウス様、目がギラギラしてた」


魔法使いと言えば太極拳、ではなくて宝石かなと思った私は魔法で宝石を作ったのだ。

しかし、魔法で作った宝石には魔力が溜まっていなかった。

そして魔力を貯める手間が掛かる為、面倒になって放置していた宝石達をアルトリウスに譲渡したのだ。

魔力タンクとか材料的な価値はないけど、婦女子のプレゼント程度の価値はあるからね。

売れば金になる、魔力を込めればもっと金になると言う訳だ。

因みに、そこら辺の原子を集めるイメージで色々作ったから謎の金属とかも部屋には放置されている。

チタンとかアルミとかだとは思うけど、詳しくは知らない。


「でも、お尻が痛くってよ」

「ガタガタ、馬車って最悪」

「実は俺初めて馬車乗ったんだ」


クソが、道路を塗装しやがれ!あと、サスペンションだか何だかでも作って馬車が揺れないようにしろよ!

そんな悪態を内心で吐いていると、馬車が急に止まった。

慣性の法則が働き、私とルーミナは前に跳んで行く。

向かいに座るカーマインが慌てていたが、もう遅い。


「きゃー、カーマイン様えっちー」

「棒読み過ぎるでしょ」

「重い重い!ちょっと、降りてよ」


すぐさま身体強化でもしたのか逆さまになっている私達を元の座席にカーマインは戻して外を見た。

そして、小さく賊だと洩らした。

いやいや、賊って領地内ですけど。

そう思ってる私の横に、馬車を貫通した矢が現れる。

顔のすぐそばに矢尻が突き出ていた。


「ひゃ!?壁薄い!危ない!どういうこと!」

「まぁまぁ、落ち着け」

「ルミーナ、アンタは落ち着き過ぎよ!」


どうして領地の中に賊がいるんだよ!

普通山道とかじゃないのかよ、もうこれだから外って奴は嫌いなんだ。

もうやだ、セレスお家帰る。


「ちょっと行ってくる」

「じゃあ、私も掃除してくる」

「待って、一人にしないで!置いてくなー!」


ルミーナに抱きついて、這うようにして馬車から降りる。

すると、私達の馬車を囲むように男共が展開していた。

こいつら、さっきの平民と区別がつかねぇ……


「その恰好、盗賊と見た」

「アレって平民じゃないの?」

「平民でもあんな恰好はしない」


ごめん、二人とも分かるみたいだけどセレス違いが分からない。

汚いがスゴイ汚いになっても汚い事には変わらないじゃん。


「死ね!」

「おっと、危ない危ない」

「えっ、うわ!?危なっ!」


気付くのが遅れたが、私の目前に矢があった。

その矢は空中に制止しており、その理由はルミーナの背中に生えた悪魔さんが掴んでいたからだ。

マジで有能だな、おい。


「戦闘態勢」

「待て、ルミーナ!」


ルミーナは背中に白と黒の精神生命体を展開した。

様々な武器を持った黒い影と、私とルミーナを守るように広がり包む白い雲。

天使が防御に回り、悪魔が攻撃に回った姿で中に浮いたのだ。

そして、その身体が縦横無尽に駆け巡る。

卵の殻の中にいるような私達は目苦ましく変わる視界の中で、敵が屠られるのを見て行く。

スゴイ、悪魔さんが無双してらっしゃる。形も長さも自由自在だから変則的な動きで効率よく惨殺していくのだ。

うっぷ、スプラッターだな。流石悪魔、グロい殺し方をするぜ。


「食べていいよ」

「えっ!?そんな機能まで」

「埃掃除が楽だよ」

「鬼畜、お前鬼畜だよ!」


影で出来た悪魔さんは沼地のように広がって展開した。

すると、見せられないよな惨殺死体が影に沈んで数秒で跡形もなく消え去った。

このメイド、完全犯罪も目じゃないぜ。


さて、そんな感じで即座に戦闘が終わった。

しかし、何だか納得いかない様子のカーマインがルーミナに突っ掛って来た。

カーマインは声を荒げてルミーナを問い詰めたのだ。


「おい、どうして殺したんだ!彼らだって何か事情があったかもしれないのに――」

「セレス様が危ない。それに賊は如何なる理由でも極刑、これ常識」

「だからって、なんか違うだろ!」

「私は悪くない。法的に問題ない、セレス様も無事だし任務完了」


お、おう。そうだな、私への忠誠が重すぎる気もするが間違ってないぞ。

ただ、倫理的な事で言えばカーマインの言い分も正しいかもしれない。

でも、やっぱり賊は死刑だろ犯罪者だし危ないからな。


「おい、どこに行くんだ!まだ話は終わってないぞ!」

「セレス様の御召し物変える。早くしないと風邪引く」

「ちょ、何で言うし!?」

「御召し物?……あっ、姉ちゃんもしかして」


カーマインが何かを察した。

いやいや違うから、ビビってねぇから。

そんなことしてないから、何を言うつもりだ。


「おい!おい、お前!その次の言葉を言ったら、殺すからな!」

「そう、漏らしたから忙しい」

「ルミーナ、貴様!なんで言うんだよ!ふざけんな謝れ!」


まさかのメイドによる暴露に私は死んだ、社会的に死んだ、スイーツ。

しょ、しょうがないじゃないか。だって初めて人が死ぬのとか見たんだもん。

初戦闘、マジ恐かったんだもん。

でも女の子として複雑だわ……死にたい。


「あーあー、メイド服汚れた。しょうがないなセレス様」

「もうやめて、これ以上私を虐めないで」

「染みになったらどうしよう、やだな」

「悪かった、私がクリーニングするから!その問題に触れないで!」



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