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遅くなりましたが、第二話です。

時は少しさかのぼる…。


2034年 12月24日 PM8:30

 日本 東京 首相官邸


奥田勝繁2佐の連絡を受け、首相官邸では対策の協議に入っていた。



「…という状況となっております。一刻を争う事態です。報告は以上です。」

「ありがとう、奥田勝繁二佐。」

「やはり、これは異常だ…。」

「ですから、自衛隊の派遣を要請すべきです!」

「しかし…、我が国は太平洋戦争後、軍隊と衝突するという事態に陥ったことがない。国民が納得するかどうか…。」

「しかし、中国とロシアは動いています! せめて国民に事態を知らせるという事はできるでしょう!! 」

「とりあえず自衛隊には待機命令を出すべきでしょう。いざとなっては遅すぎる。」

「それと米軍にも派遣要請を。この時こそ安保条約が役に立つ時でしょう。」

「…仕方ないか。アメリカ大統領に連絡を。相手方もこの状況がわかっているだろう。」

「首相! アメリカ側から電話です! 」

「どうした!? スピーカーに変更しろ! 」

「やあ。天野くん。そちらもいろいろ大変なようだね。」

「大統領! お久しぶりです。」

日本とアメリカの首相が電話会談を行う。緊急時のため、それは非常に短時間行われた。

「そちらも時間がないだろうから、手短に言わせてもらおう。」

「日米安保条約を破棄させてもらおう。」

「「そんな!?」」

「第七艦隊には、日本から既に日本脱出の準備をさせている。他の在日米軍も撤退準備に入っている。」

「しかし、条約の破棄には1か月の猶予があるはず! それすらも無かったことにしてしまうのですか!? 」

「こちらとて自国民の命を預かっている身だ。それに条約とは破るためにあるのだろう? 」

「貴国の奮戦に期待する。」

非情と言える一言を残し、電話は切られた。それと同時に首相官邸は混乱した。

「「これからどうするのか…。」」

首脳部は意気消沈してしまった。そこで総理大臣は決断する。

「…副官房長官。」

「はい。」

「国民への発表と国民の避難の勧告を。」

「防衛大臣は自衛隊の派遣要請と自衛隊の避難民の受け入れを。」

「…それと外務大臣。」

「君には各国に我が国の避難民の受け入れ要請を。」

「…それと中江君。」

そういわれた男が席を立つ。秘書時代から長年総理大臣に付き添ってきた者であり、閣僚の中では最年少である。

中江と言われた男は顔は小さく眼鏡を掛けている。背は小さく、小柄である。

髪は若干白髪が入っているが、まだまだ黒い。

スーツを着込んでいるが、汗はびっしょりかいている。

「はい…。」

「…君たちには念のためにアメリカに逃亡する準備をしてもらう。」

「どういうことですか!? 」

「…中国とロシア相手ではこちらの自衛隊だけでは分が悪い。在日米軍も撤退準備に入っている。自衛隊がやられるのも時間の問題だ。」

「しかし、自分の職務を放棄してまで自分だけ逃げるのですか!? 」

官房長官がそう反論する。しかし内心では分かっていた。



このままだと日本が滅びるということを。



「君たちはまだ若い。おそらく日本という国は亡くなってしまうだろう。この国は長い間眠りすぎていたのだ。」

「周りの国が戦争の準備に入っていても、中国が内戦になっても、それでもこの国は変わることはなかった。」

「この国は長い間眠りすぎてしまった。」

「私が全ての責任を取る。だが君たちはこの国が占領されてしまった後、亡命政府を築いてもらい、この国を取り戻してほしい。」

「それはとても長い道のりになるだろう。だが、君にやってもらう。」

「首相…。」

「これが証明書だ。」

そういって国印を渡してくる。それを受け取った官房長官は実際の重さ以上の重みを感じた。

「これは君たちにしかできないことだ。」

「やってくれるかね?」

「……分かりました。やらせてもらいましょう。」

「それと奥田二佐。どうか官房長官の護衛をしてもらえないだろうか? 」

「しかし…、いえ、了解しました。」

「では、君たちには横浜港へ。そこに輸送艦があるはずだ…。」

「分かりました。それでは…総理。今までありがとうございました…。」

「そうか…。君を長い間見てきたからな。」

「このような結果になってしまい、非常に残念です。」

「君は生きるんだ…。そして必ず日本を取り戻してくれ! 」

「分かり…ました…。それでは。」

「…引き続き私が護衛に着くことになりました。」

「君も大変な任務を請け負ったな。奥田二佐。」

「…いいえ。」



2034年 12月24日 PM8:45

首相官邸 執務室

 既にイスラフィールの部隊の襲撃を受けており、警備に当たっていた自衛隊、SPも大半がやられてしまった。

内閣の閣僚も大半が死亡、もしくは拘束されており残る重要人物はこの部屋に残る首相ただ一人となっていた。

「総理。もう限界のようです。」

近くにいたSPが話しかけてくる。このSPとも総理大臣になってからずっと仕えていたSPであり、多少の仲も知っていた。

「君にもずいぶん苦労を掛けたな。」

「それが仕事ですから。」

「そうか…。」

この部屋にいるのはもはや首相とSP数人だけである。

「君たちもよくやってくれた。今までありがとう。」

「ありがとうございます。そういってくれるといままでしてきた甲斐があります。」

そう話してくると、扉が開かれフラッシュバンが入れられる。

「隠れてください!!」 

そうSPの一人が叫ぶと、フラッシュバンが爆発する。辺りには閃光が満ちる。

そしてその後に、部屋に入ってくる部隊と交戦するSP。

しかし、フラッシュバンに気を取られていたSPは思うような反撃もできず、一人、また一人と沈んでいく。

そして、部屋の入り口から一人の男が入ってくる。

「さーって、目標は、っと?」

入ってきたのは20台後半の白人。肩には、SCAR-Lを下げ、腰にはフラッシュバンとフラグ、ホルスターにはmk.23と完全武装である。

背は180cm後半。髪をバックにし、金髪の男が来る。

「くそっ、これでもくらえ! 」

先ほどの銃撃で瀕死のSPが拳銃を持ち、反撃する。しかし、

「こちらは百戦錬磨の部隊を率いる隊長だ。お前ごときじゃ場数が違うんだよ!! 」

金髪の男は瞬時にホルスターに入れていたmk.23を引き抜き、SPの頭を撃ちぬく。

「ふう、やっぱり戦場の味じゃねーな。ここは。」

「お前も俺に立ち向かってくるか? 」

その視線は最後のSP、つまり先ほど話していた総理大臣になってからずっと仕えていたSPに向けられていた。

「…俺の腕じゃ、あんたに勝てそうにない。」

「だがな、俺にだって意地があるんだよ!! 」

SPは拳銃を瞬時に握り、リーダーと思われる男の頭に標準を合わせた。しかし、

「惜しい男だが…、じゃあな。」

既にSPの頭に標準が合せられており、mk23のバレルから銃弾が飛び出る。

そして、SPの生命活動は永遠に停止した。

「これで残るは総理大臣だけか。そこに隠れているのは分かっている。出てきたらどうだ? 」

金髪の男はmk.23を天井に向け、数発発砲する。

「…私をどうする気だ? 」

「お、やっと出てきたか。お前には俺たちの組織に降伏する日本最後の総理大臣を演じてもらう。」

「やはりお前たちの目的は日本の転覆か? 」

「いや、俺たちが目指すのはそれより遥か上。これはその第一段階に過ぎない。」

「お前たちはいったい何をするつもりだ? 」

「それは…、まだ秘密だ。」

「とりあえず首相を拘束しろ。時が満ちるまで監禁する。」



2034年 12月24日 PM9:00

人型のロボットに睨まれた奏太たち。そこに一発の砲が撃ち込まれる。

砲を食らったところで体勢を崩すロボット。

飛んできた方を見ると、近くに数両の戦車が戦車砲を撃ちながら進軍してきた。

人型のロボットはそれを見ると分が悪いことを悟ったのかその場から後退していく。


「お前ら、大丈夫か!? 」

戦車の中から、自衛隊の服を着た自衛官が出てくる。

40代の男で、坊主頭の鍛えられている男だった。肌は黒く日焼けし、目元にペイントを塗っている。

自衛隊の制服を着ており、腰には、P226をホルスターに差している。

「はい、僕たちは大丈夫です! でも…、」

そういって本来訪れるはずだったケーキ屋の方を見る。今も火災が発生し、肉を焼く悪臭が辺りに漂っていた。

「…そうか。すまなかった。」

「いえ…。」

「お前たち、避難命令の事は聞いていないのか? 」

「避難命令なんて出ていたんですか!? 」

「ああ、数十分前だがな。」

「元々は中国とロシアに対しての避難命令だが、どこからか別の部隊が飛んできている。それが君たちを襲った。」

「そんな…。」

ケーキ屋にいた人たちは避難命令の事を聞いていなかったのだろう。

そして普段道理に過ごそうとしてやられた。

頭で理解した瞬間、この世界はもう変わってしまったのだと感じた。

「こっちも状況を完全に理解していないが、お前たちには、港に行ってもらう。」

「港ですか? 」

「実はもうどこもこんな感じなんだ。さっき見たロボット集団だけじゃない。中国とロシアも攻めてきそうなんだ。」

「飛行機で逃げようとしても、あのロボットに撃ち落とされてしまうかもしれない。」

「だから港まで行って、逃げて欲しいんだ。海なら海上自衛隊が護衛に付くからな。」

「もうこの国に安全な所なんてどこにもない。国外に逃げるしか生きる方法が無いんだ。」

「だから君たちには船に乗ってもらい、国外に逃げてもらう。それしか逃げる手段はないんだ。」

急に言われても奏太の頭の中はできなかった。

自分たちが死ぬかもしれない状況に放り出された?

でもここで起きていることは現実だ。

「…自衛隊は何をしていたんですか!? どうしてこんなことに…!!」

「…本当にすまない。すまない…。」

誰も悪くない。そう理解していながらも八つ当たりをする奏太。

しかし奏太は、そうしている間にも遠くで爆音が鳴り響いていたことに気付く。

「…本当にもう、自分たちが平和に暮らしていた日本ではないんですね…。」

「…ああ、俺も部下もこんな事態になってとても辛い。俺たちにだって守りたいものはある。それは家族であり、親友であり、恋人だ。」

「しかし…、俺たちが君たちを守らなければ、被害はもっと大きくなる。俺たちだっていつ死ぬかもしれない命だ。」

「…。」

「君たちはまだ未来がある。俺たちはたとえ小さくともその光を守りたい。」

「うっ…」

「目覚めたか? 天登? 」

「奏太…。あの後いったい何が起きたの?」

「それは…、辺りを見ろ…。」

「こんな…、こんなのって…。」

「そうだ、母さんは!? 」

そう言われてハッとさせられる。

天登の母さんも、自分の両親も無事かどうか分からない。

「急いで探すぞ! 他の皆は!? 」

「私たちもついていくわ。未来がまだ気絶しているけどなんとかなる。」

「ここは危険なんだぞ!? 気持ちは分かるがさっさとここを離れた方がいい! 」

「それでも大事な親なんです! 僕には父親がいない。ただ一人の親が死ぬところなんて誰だって見たくないでしょう!! 」

「…わかった。だが護衛に着かせてもらう。お前たちもいいか? 」

「子供たちを見捨てることなんてできないですよ。つき合わせてもらいます。」

「それじゃ、道を案内しろ! 道を作ってやる! 」

「本当にいいのか? 天登…。もう巻き込まれて…。」

「それ以上言わないで!! 言わないで…!」

「…それじゃ、行くぞ…。」

「うん…。」


十分後

 奏太たちと自衛隊の部隊は天登の住むマンションに来ていた。

しかし、マンションにはすでに火の手が回っていた。その火を止めようとマンションの住人が必死に消火作業を行っていた。

「だめだ! 瓦礫が邪魔で上に進めない!」

「そんな! 上にまだ子供が残っているの!」

自分の子供が上に残されているのか。日の回るマンションに戻ろうとする母親。

「だめだ! 君が行ってしまったら、君まで死んでしまう。」

「息子を見捨てろというの!? 」

「母さん! 母さん!」

心臓マッサージを行っている大人がいる。それを見て必死に祈っている子供がいる。

しかし、母親は虫の息であるのは明白であった。

「医療道具は無いの!? 救急箱は!? 」

周りには満足な治療を受けられず、横たわるけが人たち。

「お前たち!急いで医薬品の配布を!」

「「はい!」」

辺りにいた住人達に医薬品を配り始めた。やはり住人達から八つ当たりされているようだ。

「奏太!! 無事だったのか!」

「父さん!母さん!」

「本当に良かった! こんなことになって心配していたんだぞ!」

「今はそれよりも大変なんだ! 天登の母さんを探さないと! 上に残っているかもしれないし…。」

「今はどこも混乱している! もしかしたら既に救助されているかもしれない! 」

「それじゃ、みんな手分けして探すよ!」

「集合場所はここでいいの?」

「じゃあ、ここに集合で!」

「「分かった(分かったよ)。」」


同時刻

 神奈川県 横須賀港


「全艦船撤退準備完了しました! 在日米国人もほぼ回収完了です!」

「よし、それじゃ出港。目標はハワイだ!」

「全艦船に連絡!」

「「了解。」」

「これで息を付けるか。しかし、前もって連絡を受けていたからここまで動けたものの、それが無かったら混乱したところだ。」

司令席に座る男が呟く。

「しかしこれでようやく一息つけましたね。」

「航海にはトラブルが付き物だ。警戒して行動しろ。」

「各艦に徹底させます。」

「それにしてもまさか日本がこうなるとはな…。」

「…ええ、この場にいる誰もが予想できませんでした。」

「本国は名目上日米安保条約の破棄を通告しているが、これは一波乱ありそうだぞ。」

「我々は軍人です。政治は政治家に任せます。それが我が国のルールです。」

「それもそうだな…。誰かコーヒーを…!?」

辺りに響く爆発音。それと同時に艦隊の護衛に付いていた駆逐艦が轟沈する。

「どうした!? 何事か!」

「て、敵の襲撃です!! 上空に大型アンノウン多数!」

「ばかな!? レーダーに反応せずにどうやって近寄った!? 」

「辺りに通信妨害発生! レーダーも使い物になりません!!」

「馬鹿な…。ともかくこの場から急速離脱だ! 空母から戦闘機を発進させろ!」

「ですが、通信が…。」

「馬鹿者! モールス信号でもなんでも全艦船に通達しろ! 全兵器使用自由!各個に柔軟に対応しろ!」

そうしている間にも空母の護衛に付いていた駆逐艦が轟沈する。

「戦闘機の発艦を急がせろ! 」


空母の方では急報を受け、戦闘機F-35E型を発進させようとしていた。

F-35Eは約15年前に正式作用されたF-35Bの改良機である。

F-35Bの弱点であった航続距離の拡大、最新式のエアロビクスへの更新が行われた改良機である。

今も空母の甲板にはF-35Eが配備されており、発進準備を終えていた。

しかしそこに低空から小隊編成のNORNが迫る。

「レーダー攪乱幕、電波妨害装置、チャフの準備完了! 」

「第一目標は米軍空母の撃破だ。」

「久しぶりの大物だよ! さっさとあいつを沈めよう! 」

パイロットスーツを着た少年は無邪気に笑う。

「速いって! こっちだって追いつくの大変なんだ。 それに護衛の艦船だっていっぱいいるぞ。 」

先ほど各種装置を展開した機体に乗り込む黒人の男がそう返す。

「いつものことじゃないか。俺たちはその中を生きてきたんだから。それにそんな機体に乗っているのが悪いんだよ!」

「お前たち! まったく…。」

「それじゃ、後は自由に行動。 …今日も賭けをするのか?」

「じゃあ、今度は撃墜された奴か一番艦船の撃破数少ない奴がおごりな! 」

「それじゃあそのルールで行こうよ! 」

「待て、その条件じゃ俺が一番不利じゃないか!? 」

「でも、射撃技術は一番うまいじゃないか! 」

「それはそうだが…、おい待てって…。やれやれ…。リーダーは賭けに参加しないよな? 」

近くの艦船の機関砲を回避しながら返答してくる。

「…こうなったらダメだというのはお前だって知っているだろう? 」

「もう殺ってもいいよね! やるよ! 」

「はいはい、やればいいんでしょ! やれば! 」

「作戦開始! 」

「さぁーて、久しぶりの戦場だ!!」

一機のNORNが突出し、40mmライフルを発進中のF-35Eに構える。

「君はどんな輝きを見せてくれるのかな!? 」

F-35Eに乗っているパイロットの姿が見える。ヘルメットで顔が見えなくても表情を予想する。

「君の命の輝きを見せてよ! 」

40mmライフルから銃弾が放たれる。その銃弾は的確にパイロット席を撃ちぬき、そして爆発する。

「獲物はまだまだいるから、もっと見せてよ。君たちの命の輝きを! 」

F-35Eに乗っていたパイロットはいつ死んだのかも自覚することもなく、爆発に巻き込まれていった。

「やっぱり命の叫びは気持ちいいね! 」


「獲物見っけー!」

近くにいたイージス艦目がけて、120mm対戦車砲を撃つ。一撃でイージス艦は沈まないものの、左舷側の対空砲や連射砲は大損害を受けていた。

「右舷をあのロボットに向けろ! ダメージコントロールはどうなっている!?」

「第60~67隔壁が火災のため、封鎖されました! 」

「第三砲塔からも応答ありません!!」

「上空にも多数の大型アンノウン確認の連絡がありました! 」

「これほどの戦力を一体何処から…。それに我が合衆国に知られずに一体何処で生産した!? 」

そして艦に響く衝撃。

目の前にはNORNがいた。

「お前たちに興味はないから、さっさと死んでよ!! 」

多目的近接刀を艦橋に構える。

NORNの内部からも逃げ惑う人々が見える。

そして無慈悲な一撃が加えられる。艦橋にいた人々がはじけ飛ぶ。

そして艦橋が切り落とされていく。切り落とされた艦橋が甲板に落ちる。

それをきっかけとして、その艦を中心として辺りに大爆発が起きる。

といってもそれは自明の理であった。

それまで、左舷を中心に艦はあち対空砲や連射砲が狙われていた。

そしてその近くの弾薬が誘爆することで、あちこちで火災が起こっていた。

そこに艦橋が落とされたことで、大きな衝撃が乗組員を襲う。

必死に火災を消火していた乗組員が衝撃に気付く。

そして逃げようとする。しかしそれよりも先に弾薬庫に火が回る。そしてその火は弾薬に引火する。

弾薬に火が付き、近くの弾薬に火が付きを繰り返し、あちこちに誘爆していく。

そして最後に大爆発を引き起こし、艦の機能はすべて消滅した。

「これで一つ。他の皆に負けないように頑張らなきゃ! 」

少年は弾をリロードしながら、楽しそうに笑う。


「密集隊形を取れ! 決して近づけるなよ!」

「7時方向に巨人機が接近中!距離50! 」

「まったくめんどくさいことしてくるじゃないの!! 」

NORNの襲撃を受けて、数隻の巡洋艦と駆逐艦が密集隊形を取っていた。

というのも、旗艦の連絡が襲撃後から来ているのだが、NORNの攻撃によって、分散戦術を取らざるをえない隊形になってしまった。

穴を見つけても、空中を飛ぶNORNの方が足が速く、先回りをされてしまっていた。

さらに悪いのはそれを何回も繰り返そうとした結果、いくつかの艦が各個包囲され、沈んでしまっていることだ。

故に密集隊形をとる。いや、そうせざるを得ない状況になっているのだ。

そしてその群に向かって、一機のNORNが迫ってくる。

「密集隊形になっているなんて、めんどくさいことしてくれるじゃないの!!」

そういった男はVLS発射装置に目がけて40mmライフルを撃ちこむ。

その弾丸は的確に命中し、辺りに爆発が起きる。

「賭けに三連敗で負けて、俺の首が回らないことになっているから勝ちたいんだよ! 邪魔するな!! 」

自機の周辺に飛んでくる弾を避けながら、飛ばしてきた艦を睨む。

「お前は後だ。今はこいつを…。」

 白人の男は120mm対戦車砲を構える。そしてゆっくりと目標とする艦船の左舷側を狙う。

「落ちろ! 」

そして40mm対戦車砲を3発連続で放っていく。

初弾は左舷に命中するが穴は開かない。第二射の弾丸も同じところを撃ち、船体に穴が開く。

そして第三射の弾丸は船体の穴を通り、内部で爆発する。

ただ穴が開くばかりではなく、艦の損害も中心部に近くになり、火災も大きくなる。

NORNは空中で制動して、狙いを付ける。しかし銃の反動、風や弾丸、重力の影響を受けるものだ。

しかし彼はそれでもなお、同じところを撃ち抜くことに成功していた。

狙われていたイージス艦の一隻はその弾丸によって、左舷に大穴が開く。

そして、浸水が始まる。

米軍側も必死にダメージコントロールを行うが、それでも浸水箇所は増えていく。

「まだ沈まないか。だがこれで! 」

左舷に空いた大穴目がけて、再び40mmライフルを数発撃ちこむ。

ただでさえ、被害が中央部に近づきつつあったところに、再び穴が開く。

そしてその弾丸は、中枢部である機関部ににも及ぶ。

機関部で起きる爆発。さらに空いた穴から浸水が進む。

それは艦の止めをさすにふさわしいものだった。

機関部が爆発し、航行不能になる。穴が開いたところから浸水箇所が多くなり、イージス艦の甲板がどんどん下がっていく。

甲板から救命ボートを降ろし、急いで脱出していく乗組員たち。

そして甲板の高さは海面より下になり、船体が海中に沈み始める。

アルカは全てを見届けることもなく、男の眼は先ほどいた別の艦に目を向ける。

(「止めがさせたら十分だ。さっさと次に回らないと…。」)

アルカは辺りを見回すが、明らかに先ほどいた艦の数より減っている。その原因は

今も空を飛ぶ黄色にペイントされた機体あ。そしてアルカの元に通信が入る。

「アルカが手間取っている間に、沈めておいたよ! これで2隻目だよ! 」

まだ子供と言ってもいい外見をしている子供だ。アルカも大人から言わせるとまだ子供だが、この姿は明らかに子供である。

「おいっ! 俺の獲物を横取りするなよ! 」

「でも、アルカ手間取っていたじゃん! 獲物は早い者勝ちでしょ!! 」

悪気はなさそうに、ただ真実を言う。

「あっ、別の獲物見っけー! 」

そう言い終わると通信を切り、別の機体に向かっていくところを見る。

「…。獲物はまだいるから頑張るか…。」

部隊の間でも苦労人と言われる彼の苦労はまだ続く。


「馬鹿な! これであの機体に4隻目も沈められたぞ! 対空攻撃を集めろ! ミサイルの状況は!? 」

「ダメですっ!! 赤外線誘導もレーダーも効果ありません!! 」

「ええい、連装砲で対応しろ! いくらデカブツでも少しは怯むだろう! 」

「観測員から連絡! 4時方向から巨人機がこちらに接近中!! 」

「付近の艦船にもモールス信号なんえもいいから連絡しろ! 援護求む!と。 」

「まだ後部の砲塔は残っているな! 迎撃をさせろ! 」

「了か…!? 後部砲塔とも連絡途絶!! 」

「まさかたった1個小隊でこれほどの活躍をされるとは…。我々は一体何と戦っているのだ…。 」

「我々は神とでも戦っているのか…? 」

今も尚、船体の後部から爆発音が聞こえる。優先的に狙われる個所などそう多くはない。

指揮所にいた全員が後部砲塔が破壊されたのだと悟った。

「全要員に連絡。…総員退艦だ。総員退艦! 」

「「はっ!! 」」


海上に救命ボートが浮かび、沈みそうになる自分たちの乗っていた艦船を見る。

だれもが、長くその艦船に乗っていたため、愛着がある。

しかし今見えるのは火災に包まれ、左舷側に大きく傾く艦船であった。


その上空を一機のNORNが通り過ぎていく。

「これでようやく4隻目…。まだまだいる。あわてるような時間じゃない…。」

コクピットで呟く黒髪の少年。長髪だが、それまで長くない髪。背は小さく、160cmほどだろうか。

左のほほに大きな傷がある。

「次の目標を叩く。ただそれだけだ。」

その少年は無口にそうつぶやく。辺りには彼に撃沈された艦船の残骸が広がり、生存者の救命ボートも広がる。

しかしそれには興味なさそうに視線をそらす。その翼は答えるように、排熱を出し推進力を大きくしていく。

艦船の残骸が小さくなったところで、

「イグアール様の恩に報いるにはまだ足りない…。こんなものじゃ返しきれない…。」

一人少年は呟き、次の戦場に飛んでいく。



2034年 12月24日 PM10:00


奏太たちは火災の起きているマンションの周辺を必死に探した。どこも負傷者の山となっており、鳴き声、悲鳴が辺りを包み、

その場の雰囲気にも少しずつ影響を与えていた。火傷がひどく、熱い熱いとうめく負傷者。がれきに押しつぶされ片手を失ってしまった男性。

「俺の腕が…。俺の腕が…。」

今もうめきながら、自分の腕を探している男性が目に入る。

奏太はそれに目向きもせず、天登の母さんを探す。

一人一人声をかけて、それらしい人がいないかどうか訪ねて回る。しかし、

「こっちだって忙しいんだよ! こんなことになるのなら日本に居なければ良かった! 」

「そんな…。こんなに苦しんでいる人たちがいるんですよ!? 助ける手伝いをしないんですか!?」

「こんなところにいて、死ぬなんてことになる方がごめんだね! 今も例の巨人機が動いている。 俺たちがいつ狙われるかわからない。

そんな状況で人助け? 冗談言っているんじゃないよ!!」

「いままでお世話になってきた人だっていっぱいいるでしょう!? それすらも見捨てるんですか!? 」

「一番重要なのは自分の命だろうが! こっちだって荷物があるんだ! さっさと逃げたいから邪魔すんな! 」

ドンと奏太たちの背中を押して、男たちは消えていく。

「どうして…。そんな簡単に人を見捨てることができるんだ…! 今までお世話になってきた人たちの事を見捨てて、自分だけが生き残るなんて

そんなの絶対に嫌だ!」

拳を固く握りしめながら、怒りをぶつける。非常時の対応としては奏太の助け合う行動は正しいだろう。しかし男たちが逃げていくこともまた、正しい選択だ。

自分が死んでしまえば、そこでおしまいなのだから。


何人も何人も負傷者や死んでしまった人たちを見て回る。

そしてついに天登の母親の姿を見つける。

しかし、腹のあたりを負傷しており、重症である。

今もマンションの住人が服を破り、包帯代わりとして手当をしていた。

「おばさん!! 大丈夫ですか!? 」

「君は彼女の知り合いかい!? 」

「はいっ、友達の母親です。」

「そうか…。私が手当てをしたが、思ったより血が流れてしまった。ちゃんとした医療施設で治療させたいところだが、この状況では…。」

「奏…太…くん…?」

「おばさん、あまりしゃべらないでください。体に響きます! 」

「いいえ…。あなたに頼みがあるの…。天登を…呼んできてくれないかしら…?」

「わかりました。すぐ呼んできます! 」

「それと、彼女の容体が急速に悪化することも考えられる。あと1,2時間が山と考えてくれ。」

「わかりました。急いで連れてきます! 」


奏太は、天登たちと待ち合わせした場所に戻り、近くにいた友達に説明した。

天登以外は冷静に対応できたが、天登は混乱しているようだ。

「そんな…。母さんまでいなくなるなんて…。」

「天登! しっかりしろ!」

「あんたがしっかりしないとお母さんだって安心できないでしょ!! 」

錯乱する天登を何とか取り押さえ、天登の待つ母親の元に引きづっていった。

「天…登…?」

「母さんが…、母さんが…、」

「いい、しっかり聞きなさい。」

「やっぱり僕は…一人なんだ…。やっぱり僕は…。」

天登は母親の危篤の連絡を受けてからずっとこの様子であり、ここに心非ずの状態であった。

「天登!!」

「おばさん、それ以上無理したら! 」

無理をして喋ったため、今まで止血していたところから多量の血が流れ出す。

「いいえ…、もう…いいの…よ…。」

「でも…最後に2つだけ…伝えて…おきたいことが…あるの…。」

「今まで…天登には…父さんは…いないって…いっていたわね…。」

「なんで今頃そんな話をするの…?」

「あれは…、嘘…。本当はあなたの…父さんが…いるの…。」

「そんな…。なんで今なの…?」

「そして母さんも…、本当はあなたの親じゃない…。」

「…薄々は気づいてた…。明らかに僕は母さんに似ていない。」

「そう、その通りなのよ。あなたはあなたの父さんが連れてきたのよ。」

「母さんはもう駄目…。でもあなたの父さんから話を聞いたわ…。あと真実を知るのは2人。そのどちらかに会えば分かると。」

「だから…、天登は…生きるのよ…。本当の父さんと母さんに会えるまで…。運命に…、負けちゃ…駄目よ…。」

「そんな…。」

「母さんも精一杯愛情を注いだつもりだったけど…、本当の親になることはできなかったわ…。」

「違うよ、母さん。母さんは僕を育てるために外でパートをしたり、参観授業の日でも毎回顔を出してくれた。

本当は忙しい中でも愛情を注いでくれた。今まで育ててくれてありがとう。」

「そう…、そう言ってくれると…。」

「母さん! 母さん!! 」

天登と母親を結んでいた手に力が入らなくなった。

「母さん! 母さん!!」

「…少し一人にしてあげよ?」

「そうだな…。」

「ちょっと席外すね…。」

 奏太たちは一旦離れ、遠くに移る。

一人になった天登は母の姿を見る。

手にマメがあちこちでき、あまり女性らしい手ではなかった。しかし、そのゴツゴツした手それ自体が

天登をここまで一人で育てたという勲章であり、その手はその役目を終えたように安らかに降りる。

天登の脳裏にはいままでの光景が蘇る。

今まで母親とどれだけの時を過ごしてきただろう。

あの時は当たり前だと思っていた風景。しかしもう見ることはできない。

「母さん…。 今までありがとう…。」

天登は涙を流しながら、今までのことを感謝する。



どれだけ泣いただろうか。

「母さん…、僕は今まで姿を見せなかった父さんと母さんを許すつもりはない。でも会って真実を聞き出したいと思う。

これだけは区切りを付けたいんだ。」

「一体本当の父さんと母さんは誰なのか知らないけれど、僕には一体どんな運命があったのか知りたいんだ。」

「だから、母さん。僕は行くよ。」

母の亡骸に背を向けて、少年は歩き出す。

自分に秘められた真実を探すために。



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