第二話 第三章
そこは円形のテーブルが置かれている、会議室の様な所だった。
「和也くん!猿くん!良かった、無事だったのね!」
俺達が再召喚されて真っ先に、姫が駆け寄ってきてくれた。こっちも良かった、姫だけでもフェルニア城に着いて居てくれて、姫のおかげで助かったようなものだから。
「すみません、カズヤ。あなた達が何処に飛んでしまったのか、座標を調べるのに手間取ってしまって。」
「いや、こっちもなんとか無事だったから、問題ないよ。」
エルフィは、腰まで折って謝罪してきたので、慌てて大丈夫と説明した。
「カアアァァズウウゥゥゥ!!」
いきなり猿が発狂しながら、絡んできやがった。まったく、むさ苦しい。
「・・・なんだよ?」
仕方ないので、どうしたのかと尋ねると。
「いつからこんな、美人さんと仲良くなったんだよ!お前には、お姫ちゃんという人がいながら、別の女に手を出すのか!?」
目の玉が、飛び出す勢いで見開き、俺を問いただしてくる。・・・めんどくせー。
「・・・何を言っているんだよ、この人はエルフィ。お前にも説明しただろ。」
「へ?この人が、話に出て来たエルフィさんか!?」
話を聞いてようやく、わかったようだ。女にはがめついのに、鈍感だな。
「あなたがサルですね。ヒメから大体の話は聞きました。しかし、聞いた話では、ただの一般人のはずでしたが、その額のバンダナはもしや、神具では?」
そうなのだ、その事については、しっかり説明しとかないとな。
「それについてなんだが、実は間違って召喚された時に・・・」
姫やエルフィに、ここに来るまでの、事のあらましを説明した。
「・・・そういう事なら、サル?あなたに聞いておかなければ、いけないことがあります。」
サルへ、真剣な眼差しで見つめる。おそらくあの話だろう。
「な、何っすか?」
「神具を手に入れてしまったのなら、まず、私利私欲の為に神具を使わないでもらいたいのです。それと、私はあなたに、助け人としてこれから助けてもらいたいのですが、それは死を背にした戦いです。それでも、私のために、戦ってくれますか?」
砂漠のサメとの戦いで、この世界の戦いというものが、多少なりとも理解したはずだ。ここは慎重に考えて決断してくれよな。
「もちろんですとも!もうこの命、エルフィさんに捧げています!」
何一つ、ためらうことなく言い切った。
「おっ、おい!そんな簡単に決めるのか!?もっとしっかり考えろよ!本当に命懸けなんだぞ!」
こいつ、あんな事があったのに、何考えてんだ!?ただの遊びじゃないっていうのに。
「・・・いいのですね?」
「はい。」
大真面目の顔で頷いているが、俺には、どうにも心配だな。
「さて、新しい仲間も増えて、今回の助けて欲しいことを説明しましょう。」
そういえば、召喚の話ばかりで、今回のピンチは何なのか聞いてなかったな。慌てている訳ではないようだけど。
「地図を見ながらお話いたしましょう、こちらへ。」
エルフィの座る、テーブルに近づき、地図を覗き込む。
「シンフォニアは大きく分けて、四つの区域に分けられています。北は樹海、緑の区域。東は砂漠、黄色の区域。南は海、青の区域。西は岩のクレバス、茶の区域と、フェルニア城を中心に広がっています。」
今回が初めての猿はもちろん、一回は来た俺と姫でも、シンフォニアがどういう所か知らなかったので、素直に驚いている。
「そして今回の目的は、この緑の区域、樹海にて神具らしき反応を感知いたしました。」
そういえば、神具の大体はここで守っているが、未だに見つかっていない神具もあるんだよな。
「なので、私達は部隊編成し出撃させました。ですが、途中から音信不通になってしまいました。第二部隊も出しましたが、結果は変わらずでした。」
表情がどんどん暗くなってゆき、唇をぎゅと、噛み締めている。それはそうだ、誰しも部下が亡くなったとあれば、悲しみもするだろう。
「・・・おそらくは、悪魔に襲われたのでしょう。なので、カズヤ達には樹海を捜索し、悪魔よりも先に神具の回収、及び、悪魔と遭遇したら、殲滅してください。」
「それはいいけど、俺達は、シンフォニアには詳しくない、どうに行っていいのか、分からないぞ。」
下手したら、フェルニア城を出たらすぐ迷子だぜ。
「そのことなら、平気です。私はここを離れられませんが、この人に付いて行けば大丈夫です。・・・入りなさい!」
エルフィが一言言い放つと、背後のドアから、一人の女性が入ってきた。
「彼女は、第一騎士部隊、隊長、レニア・ヴィクス。彼女を今回の旅路に同行させます。」
「レニア・ヴィクスだ。よろしく頼む。」
レニアの特徴は、まずは真っ赤に燃えているような色の髪を短く揃えている。体つきは、限界まで余分な肉を削ぎ落としたような、スレンダーさだ。格好は、騎士の名に恥じない鎧を身につけている。年は俺達より少し上かな。
「俺っちは、猿火弾。まぁ、気軽にサルって呼んでくださいな。」
「私は、八雲姫と申します。これからよろしくお願いします。」
「俺は、白刀和也。よろしくお願いします、アニスさん。」
自己紹介をして、最後に握手を求めるように手を差し出すと。
「そんな事をしている暇はないぞ。用意ができているなら、さっさと出発するぞ。」
この一言で、アニスの性格が大体掴めた。この人は、随分な自信家のようだ。高圧的な口調を聞けば一発だ。
仕方ない、今回は付き合っていきますか。
「それでは皆さん、お願いします。お気を付けて。」
「はぁ、はぁ、砂漠程じゃないが、歩きにくいな。」
フェルニア城を出発して二時間。地面はデコボコで、木々が行く手を邪魔してくる、樹海へと到着した。
「なんだ、もうへばったのか?新しい、助け人は脆弱だな。見ろ我が部隊を、貴様らとは比べるまでもないぞ。」
そう、アニスは今回の作戦に、自分の部隊の連中を数十名連れてきていた。
「悪かったな、こちとら新人も、新人なんだ!」
猿の奴が、抗議の声を上げるがアニスは、だからどうした、という感じだ。
「ふむ、ここでいいだろう。ここからは二手に別れよう。貴様らは貴様らで。私達は私たちでだ。」
ここに来て、別れるのか。だけど、確かに効率はいいが。
「いいぜ、二手に別れよう。」
正直、アニス達が居ないと、迷いそうだが、何とかなるだろ。
「ここで、エルフィア王女に、貴様らの有能さを見せてみろ。」
最後に、喧嘩をふっかけるように、言い残して探索に出かけていった。
「何なんだ、あいつは!ったく、イライラするな!そうだろ、カズ!」
確かに、いい気持ちはしないな。だけど、今はそんな事を言っている暇はない。
「こっちも、探索に行くぞ。」
「そうだね、と言っても、どうやって探そうか?」
猿の神具の件から、おそらく、まともな場所にあるとは思えない。
「とにかく、歩きながら考えていこう」
ここにずっと、つっ立って、たってどうしようも無い。
「そうと決まれば、さっさと行こうぜ。あいつらには、絶対負けたくないからな。」
そう言うと、猿はずかずかと、先に行ってしう。
「あっ、猿くん!待ってよ!」
こうして、助け人組も探索を始めた。
一時間後。
「だぁー、ちきしょう。こんなに歩いて、何の手がかりも無しかよ!」
何てったって、見渡す限りの樹海だ。どこまで続いてるのかもわからない。でも、俺はそれよりも、気になる事がある。
「・・・。」
「和也くん?どうしたの、考え込んで?」
「何だカズ、神具の在り処でも、わかったのか?」
そうだったらいいけど、そんなことじゃあない。
「いや思ったんだが、エルフィの話だと、確か、部隊が悪魔に襲われたんだよな?だったら、今度も襲ってきても、おかしくないだろ。だったら何で、今のところ悪魔に遭遇していないんだ?」
俺はてっきり、樹海に入ったらすぐに襲われるかなと、思っていたんだが。
「確かにね、ちょっとおかしいね。」
「そんなに重要かそれ?」
ちょっとした、休憩中にそんな話をしていたら、突然それは聞こえた。
ズガアアァァン!
「何だっ!?」
音がした方を向くと、煙が上がっていた。
「和也くん!もしかして。」
ああ、おそらく悪魔だろう。ていうことは、戦っているのは。
「行くぞ、姫!猿!」
考えたくない、状況を頭によぎらせながら、煙の方へ駆け出した。
あの未熟な、助け人と分かれて一時間は経った頃に。
「おそらくこれが、神具の眠っている地下へと繋がっている階段か。」
大木の、根元にここだと言わんばかりに、階段が隠されてあった。思いのほか早く見つかったな。一日以上を掛けて、探すと見積もっていたが。そんな事を考えていると。
ドスッ
不意に、脇腹が熱くなった。触れてみると、手が真っ赤になってた。血、血だ。ナイフが刺さっていて、血が吹き出している。
「ケケケ、神具の場所を探してくれてありがとよ。礼に、苦しませて死なせてやるよ。」
背後には、いつの間にか、悪魔の軍勢がいた。そして、私を刺しているひょろひょろした奴が、部隊長か。もしかしなくても、この状況は、泳がされていたか。
「ぐっ、悪魔かっ!総員戦闘準備!」
刺されて、痛いながらも部下へ指示を飛ばす。そして私は、腰に下げていた剣を抜く。
「はな・・れろっ!」
背後の悪魔に向かって切りつけるが、あっけなく、よけられてしまう。
「おおっと、危ない、危ない、でも無駄だぜ、なんてたってあの人が来てるんだからな。ここに居る連中、皆殺しだ。」
あの人?一体何の話を、と考えていると、いきなり地面が黒に染まった。
「っこれは!?総員退避!」
「遅い、遅い。」
部隊長がにやけると同時に、黒く染まった地面から、無数に尖った槍のような影が生えて、次々と部下を貫いていった。
「あ・・・ああ・・皆。」
部下一人も守れないなんて、なんて無能なんだ私は!
「さすがっすね、オーディンさん?」
「随分と王国軍は弱いんだな。」
今度は、黒い地面から、これまた黒の甲冑を付けた、オーディンと呼ばれた騎士が現れた。こいつが皆を一瞬で殺した奴。許せない、絶対許せない!
「貴様あああぁぁぁ!!」
ナイフが刺さっているのを忘れ左手に、ありったけの魔力を集中させ、そのエネルギーを熱に変換。これにより、炎が生まれる。さらに魔力を集中させ、着弾時に爆発するという能力も加える。
「求めるは爆発、灯すは焔、爆ぜろ、紅蓮の炎爆!」
魔導部隊に、比べれば、大した威力はなくとも、騎士部隊にも魔法は使える。だが、それはあくまで、牽制の為だ。だけど、私はそれを主として使えるほどの、実力がある!これが私の全力だ!
ズガアアァァン!
小さな球体の炎がオーディンにあたり、爆ぜた。
「どうだ、これが私のちからっ・・グッ!」
確実に殺すつもりで放った魔法は、オーディンの鎧にすら傷一つ付かなかった。そして、私は影が伸びて首を絞めてきている。
「おい女、そんなチャチな魔法で、俺を殺せると思ったのか?」
戦力差は、圧倒的。なす術なし、ここまでか。
その瞬間だった、私の首を絞める影か消え去ったのは。
「お前達、来てくれたのか。」
デコボコの地面や、木の根をものともせずに走っていく。すると、少しだけ木々がなくなり、視界が開けた。そこには、イライラ女の、アニスだったっけかが、黒い何かに捉えられていた。
「なんだよあの女、大口叩いていたくせに、簡単に捕まってるじゃねーか。」
「そんなこと言ってないで、さっさと助けろ!」
まぁ、確かに目の前で人の死なんて、拝みたくないしな。
「仕方ねぇ、カズ、お姫ちゃん、先に行け!Reproduction、狙撃銃、SVD!」
俺はその場で寝そべり、狙撃銃を構える。スコープを覗き込み、黒い何かに狙いを付け、弾丸を放った。
標的は霧散し、アニスは拘束から解放されカズがそれを受け止める。
さて、もうここは、敵に位置がバレてる。なら、さっさと姿を現すか。そう考え、カズ達の後を追った。
「お前達、来てくれたのか。」
「大丈夫ですか!?怪我しているじゃないですか!待っていてください、・・・仲間の傷を癒すため、お力をお貸しください、少彦名神様!」
お姫ちゃんが、なにか呟くと、首から掛けた勾玉が光り、その背に幼い美少年が浮かび上がり、アニスの傷をみるみる癒していった。
「すまない。」
「いえ、お互い様です。それよりも。」
俺とカズは、真っ直ぐ目の前の敵を見据える。無数の悪魔と部隊長らしき細身の悪魔、そして、異様な殺気を放つ鎧の悪魔。
実践は初めてだが、アイツ等がどれほど恐ろしい存在なのかは、相対しているだけでも、ひしひしと伝わってくるぜ。
「ケケケ、オーディンさんは、先に行っててください。私ゃ、この子達と遊んでいきますわ。」
「そうか、なら先に行かせてもらうか。・・・手は抜くなよ、ロキ。」
そんなやりとりをすると、オーディンと呼ばれた奴は、黒くなっていた地面に消えていった。
「さぁ、さぁ、お子様達?どうやって解体されたい?」
すごい殺気だ、少しでも意識がブレたら、飲み込まれそうだ。でも。
「カズ、お前達も先に行け、もう一人に神具を取られる前に。こっちは、俺がやる。」
ここは、俺が踏ん張らなくちゃ、いけない場面だ。
「できるのか?」
「任せろ。」
はっきり言い切ると、カズは安心したように、俺に背を向け走り出した。
「行くぞ姫、アニスさん、ここは問題ない。」
「え?でも、猿くん一人でいいの?」
「ああ。」
姫も、理解してくれたようで、駆け出した。
「私は残る。こいつを倒さなくては、みんなの敵が取れん。」
「そうか。」
カズはまるで、そう言うと分かっていたのか、何も言わずに、アニスを置いていった。
「いやいや、行かせるわけ無いでしょ。」
ロキとか言う奴は、無防備なカズの背中目掛けて、ナイフを投げてきた。
「Reproduction、デュアル、ガバメントM1911!」
ガバを、両手に複製しナイフを打ち落とす。
「お前の相手は俺だぜ。」
ロキへと、銃口を向け挑発する。見た感じだと、奴は無数のナイフを扱うだけみたいだから、向こうから、突っ込んで来てくれれば、やりやすいんだが。
「そんな安い挑発には、乗れないねぇ、・・・悪魔さん、殺っちゃってください。」
数え切れない数の悪魔どもが、ロキの指示で襲ってくる。思えば、これが初めての悪魔との戦いなんだよな。でも、不思議と怖さは感じない、戦える!
「やってやるぜ!」
掛け声と同時に、二丁の銃で狙いを付け、悪魔どもを打ち抜いていく。
「くっ、Reproduction、マガジン、45ACP弾!」
だが、この数の多さだ。ハンドガンじゃ、弾がすぐに終わる。こんなことなら、向こうでサブマシンガンや、アサルトライフルもバラして、内部構造を把握しておけばよかった。
「ほらほら、背中が、がら空きだよ。」
しまった、悪魔どもに気がいっていたら、いつの間にか後ろを取られた!まずい、やられる!
「そう何度もやらせるか!」
アニスが剣をなぎ払い、一閃。ロキは、これを簡単に避けるが、俺を刺しそこねた。
「あらら、残念。しょうがない。悪魔さん、少しでも、お子様たちの体力を削ってください。」
こいつ、なかなか策士だな、自分が絶対に勝てる場面しか戦う気が無い。だったら、嫌でも戦わせてやる。
「サンキューな、悪いが、後ろを頼んでいいか?」
「ふん、礼を言われる義理はない。だがいいだろう、私の背中、頼んだぞ。」
こうして、相変わらず口が悪いアニスとの共闘が始まった。
こうなると、ロキを戦わせるのは、意外と早かった。
「ふっ!」
俺が、一息で三体の悪魔の眉間を打ち抜いてゆき、
「はぁあ!」
アニスが、魔法と剣術を組み合わせて、悪魔を倒していく。
そして、ものの数分もせずに雑魚悪魔どもは、壊滅した。
「うーん、やっぱり、モブには無理なお仕事でしたかね?」
自分から、モブなどと呼んだ悪魔共はもう居ない。
「後は、お前だけだぜ、ロキさん?」
今度の挑発には、乗ってきた。いや、正確には乗らせたか。
「いいですよ、乗ってあげましょう。まったく、何で僕が本気で戦わないと思います?答えは簡単・・・」
ロキは、俺との間、距離にして五メートルはあるだろう、それを瞬きの間に詰めてきた。
「なっ!?」
そのまま、鳩尾に拳をくらい、何度も殴られ、最後に顎に良いのをくらい、脳震盪で地に伏せた。だが、それでは飽き足らず、両手両足をナイフで突き刺し、完全に身動きが取れなくなった。
「僕が本気になると、皆簡単に壊れちゃって、つまらないからだよ。」
俺の顔を踏みつけながら、感情が全くない、無表情で睨んできた。この時、俺はしたくもない、後悔をしてしまいそうになる。エルフィアさんの為に戦うなんて言わなければ、カズたちに付いて来なければ、こんな痛い思いをしなくて済んだ。そんな後悔を必死に押しつぶした。
「紅蓮の爆風!」
そんな時、炎の竜巻が真横に飛んできて、ロキに直撃したように見えた。
「ひゃー、危ない、危ない。」
またしても、瞬く間にありえない距離を移動していた。
「ぐうぅ。」
それどころか、避けた瞬間に投げたナイフが数本、アニスに刺さっていた。なんていう早業だ。
感心している場合じゃねぇ、考えろ、今の俺に何ができる?今頼れるのは、神具だけだ。でも、体が動かねぇ。絶望的すぎるだろ。
「それでも、戦うんだ!」
突き刺さったナイフを無理やり抜き、全気力で立ち上がった。ただ、立ち上がった。立っているだけで限界なのに。
「そんな体で何ができるんだ?せめて、怪我は治してやる。だから、私の分まで戦ってくれ。」
自分の怪我などお構いなしに、アニスは俺の傷を癒してくれた。といっても、移動するのがやっとなんだが。
「最後まで悪いな、あんた、いい奴だな。」
さて、もう一度考えろ、相手は待ってはくれないぞ。俺は神具に何を願って、銃を作った?モデルや仕組みはガス銃、弾は創造。ん?待てよ、確かに俺は弾は創造したよな?ただの実弾を創造できるんだったら、どんなに非科学的な弾も作れるのか?
「何、まだ立つの?ふぅん、君はなかなか、壊れないんだねぇ。・・・楽しいじゃないか。」
呑気に試している暇はない、最初で決めるぜ。
「Reproduction、ハンドガン、トンプソンコンテンダー!続けてReproduction、弾丸、フラッシュバン!」
コンテンダーは、弾が一発しか入らない、実戦向けの銃じゃないが、銃身を変えるだけでハンドガンでライフルの弾が撃てるという、利点もある。その、コンテンダーを中折れさせ、さっき創造した、弾丸を装填する。
「でも、いい加減バラバラになれよ。」
ロキがあの見えない踏み込みを、しようとするのを察知し、早々にコンテンダーを撃った。
「アニス!目ェつぶってろ!」
次に起こることの為に、アニスに目をつぶらせ、自分も目を隠した。
「こんなもの、効くわけ無いでしょ!」
目を隠していて、わからないが、おそらく音からして、ロキが弾丸をナイフで切ったのだろう、思わず口がにやける、完璧に策にはまってくれたのだから。
カッ!!
「何だっ!?眩しい!ぐっ、目があぁぁ!!」
さっきの弾、フラッシュバンは本当は手榴弾の一種で、光で敵の目をくらます、非殺傷武器なんだが、それを弾丸に創造してみたのだ。
あんな、目の前で食らったんだ、ほぼ目は見えてないだろう。
「これで終わりだ、ロキ、Reproduction、弾丸、5.56mm×45弾。」
今度は、コンテンデーにあった、通常の弾丸を創造し詰め込む。そして、目を抑えてもがいている、ロキへと放った。
ズガン!
乾いた銃声が樹海へと響き渡り、ロキは倒れ、消え去った。
「勝ったのか?」
「何とかな。」
疲れているけど、今からでもカズ達の援軍に行かなきゃ。
そう、考え、足をうごかしたが、何もないところでつまずき倒れ、そのまま気を失った。