第一話 第二章
光の奔流が収まり、意識も戻ってきて目を開くとそこにはとても信じられない光景が広がっていた。
「なん・・だよこれは?」
「え?・・・なにこれ?」
二人共疑問を抱かざる負えなかった。だって、俺の目には幾千もの人間のような形をした黒い体、ねじれた角、コウモリの翼、手には無骨な大剣まで持っている、悪魔と言われたらしっくりする生物がうごめいているのだ。
「すみません、また呼んでしまって。助けてください、助け人様!」
周りを見ていて気づかなかったが、目の前には巨大な六芒星の障壁らしき物がありそれを形成しているであろう数人の杖を持った集団と一人の豪華な服を着て、これまた豪華な杖を掲げている、されどボロボロになっている美女がいた。
「あら?助け人様がお若い、神具が次の代に受け継がれたのですか。」
豪華な服を着ている銀髪、碧眼の美女がなんだかわからんが一人で納得してるぞ?でも、この声は
「もしかして、あなたは俺達を呼んだエルフィアさんですか?」
「ええ、そうです。ですが、すみません。今は話している余裕が無いのです。」
確かに、混乱している俺でも今のこの状況が良く無い事ぐらい分かる。
「お二人共、先代から説明があったと思います。なので、早速ですが助けてください。」
「・・・いや、それがさっぱり。」
「え?そんなはずは。もしかして、神具の継承の真っ最中にお呼びしてしまったのでしょうか?なんと、タイミングの悪い。」
いや、そんなやっちまったって感じに言われても。事実何もわからないのだから。
「えーと、それでここは一体どこなんでしょうか?私達はこれからありえない現象が起こるとしか聞いていなくて。」
そんな中、姫がまず聞きたいこと第一位の質問を問いかけてくれたよ。
「そうですね、時間が無いので聞きたいことすべてをまとめて言いますと、ここは異世界で貴方達は、この世界の窮地を救ってくださる為に呼ばれた助け人様なのです。」
は?何を言っているんだこの人は?ここが異世界?俺達が助け人?いろんな単語が一気に流れ込んできて、頭が痛くなってきたぞ。
「・・・そうですよね、いきなり言われても受け入れられないですよね。ごめんなさい、巻き込んでしまって。せめて私達が命を賭けてもお守りいたします!」
エルフィアさんは、巻き込んでしまった申し訳なさの表情と、必ず守りきるという決意をした目をしていた。
そして俺は、その命を賭けてという言葉を聞いた瞬間、親父が言っていた事を合わせて、これは遊びじゃなく本当の命を賭けた勝負なのだと感じ、ここまで困っているなら事情はともかく手を貸したいとも感じた。
そこへ、ピシッという聞きたくない音が聞こえてきた。そう、目の前にあった六芒星の障壁にヒビが入ってきたのだ。
「ねぇ、和也くん?あの壁、壊れちゃいそうじゃない?」
姫の考えは大当たり。見事に障壁は壊れ、悪魔のような物共が押し寄せてきた。しかも、標的はエルフィアさんのようみたいだ。
今、この瞬間。兵士達は障壁を崩された勢いで押し倒されている。なら、誰がこの美女を救える?
「そんなの、俺しか居ないだろ!」
決断しろ。エルフィアさんを、この世界を、救いたいと思ったのなら死ぬ気で戦え。文字どおり死ぬつもりで。
「ぜぇぇえええい!!」
叫びながら白百合を抜き放ち、制服をはためかせて一気に地面を踏み込んだ。
ほぼ一歩で悪魔(もう、めんどいからそう呼ぶ。)へ近づき切りつけて来ていた剣を払い除け胴体を一閃、真っ二つにした。
「えっ?」
今度は、エルフィアさんの方が俺の行動の意味が受け入れられない、という表情をしていた。
「どうして?とても戦える状態ではなかったはずですが?」
その質問に俺は、少し恥らいながらも堂々と答えた。
「ただ救いたいと思っただけだよ。それに本当の命を賭けた戦いなんだろ?目の前で人が死ぬところなんて見たくないからな。その代わり、この戦いが終わったらちゃんと説明してもらうからな?」
俺の言葉を聞いたエルフィアさんはみるみる明るい表情になり、活力が戻ったようだった。
「は、はい!ありがとうございます!必ず後で説明いたします。」
しゃーない、自分で決めた事だ。死ぬのは怖いが俺にしか出来ないなら俺がやるしかない。
「姫!エルフィアさんを守ってくれ。姫もここに呼ばれたからには、それ相応の力があるはずだろ。」
俺も一人でこの場を救えるとは思っちゃいない、だからこそもう一人、救ってもらうために呼ばれた、助け人を呼んだ。
「む、無理だよ!私に力なんてあるわけ無いじゃない!」
「最後に乙姫さんが言っていた事を思い出せ、きっと何かヒントがあるはずだ。・・・頼んだぞ、姫。」
姫にこの場を頼み、俺は単身で悪魔の軍勢に飛び込んだ。
「ちょ、ちょっと和也くん!?」
信じられないよ、普通事情も知ら無いで、命賭けて戦うかな!?
「全部隊に通達!今から彼を全力でサポートしなさい!」
・・・すごいな、エルフィアさんっていったっけ。こんな状況でも立ち向かうんだ。私だったら、すぐに逃げ出しちゃうよ。
「あなた様は下がっていてください、私が必ずお守りいたします。」
いや、違うでしょ。私だってエルフィアさんの表情を見て助けてあげたいと思ったのだから、
「・・・それは出来ないよ。和也くんに、あなたを守れと言われたもの。それに、和也くんと同じく、事情はともかく救いたいと思ったから。」
私も頑張って戦ってみる!
「!あなたも戦ってくれるのですか?」
さっきまでの私と違って驚いているのか、それとも単純に戦ってくれる事に驚いているのかどっちだろう、でも見栄を張ったところで私に何が出来るのだろうか?
「・・・あなたの母親、オトヒメはあなたの首に掛かっている勾玉へ霊力を注ぎ、様々な神を顕現させていましたよ。」
どうしてママの事を知っているの!?そう言おうとして遮られた。
「危ない!・・・求めるは槍、纏うは雷、貫け、雷の鋭槍!」
私が驚きと混乱で注意が散漫になっていたところを背後から悪魔に襲われ、それにいち早く気づいたエルフィアさんが手から雷の槍を出して・・・って雷!?もう何よここ、魔法も何でもありですか?
「すみません、また混乱させてしまいましたか。ですが今の通り、説明している時間が無いので。それに、もう魔力が・・・。」
そう言うと、エルフィアさんはひどく疲れているようで地面に膝をついてしまいました。
そうよ、また守って貰っちゃたけど、今度は私が守らないと、自分で決めた事なのだから、最後まで絶対貫きとうしてみせる。
心で固い決意をし、先程エルフィアさんから言われた事を思い出してみました。
「神様を顕現させる・・・。」
出来るの、私に?確かにママの教えで様々な神様を信仰していたし、霊力の扱いも覚えていたけど、神様を顕現させるなんて一度もやった事はないのよ?
でも、そうも言ってられ無いようね。新手の悪魔共が私達目掛けて襲いかかって来ていたからね。
「やるしかないのね・・・。」
ぶっつけ本番だけど、やれるだけやってみましょう。
私は、この人に言われた通りに霊力を勾玉に注ぎ、私が一番慣れ親しんでいる神様に力を借りるために、取り繕った言霊を紡いだ。
「うらぁっ!」
俺は、数十体目の悪魔を切り倒した所だった。ここまでこいつらと戦ってわかったのは、切られると死体になるのではなく、黒い粒になって消えていくということと、こいつらには知能がほぼ皆無だって事だ。多分、剣を振るうという事ぐらいしかわからねーんじゃねーか?つまりは雑魚で、戦いの経験の無い俺でも何とかなる程度だ。
「でも、数が多すぎる!」
見た限りでは地上に五十、空中に二十といったぐらいか。
と、そこへ一気に数体の悪魔共が全方位、さらには空中から同時に襲ってきた。
「くっ!・・・仕方ない、あれやってみるか!」
さっき言った、知能が皆無は取り消そう。集団戦法ぐらいは知っていたらしい。でもな、逆にそれを利用できるって事をみせてやるよ。
「白刀流、春夏秋冬!」
白刀流の剣技の一つ、春夏秋冬は、三百六十度全てから襲われた時の型で、前後左右、そして空中へも高速の斬撃を放つ、だがデメリットとしてリーチが短いというのがある。だが今回は、悪魔の方から突っ込んで来てくれたので好都合だった。見事に悪魔共は霧散していった。
「まだ!まだぁ!」
今までの鍛錬で身につけた技術全てを惜しみなく発揮して悪魔の軍勢をなぎ倒していく。
「姫の方は大丈夫か?」
いくら頼んだと言っても、やっぱり心配だったのでふと見るとエルフィアさんの手から雷の槍らしき物を悪魔目掛けて放っていた。
いや、すげーな。もうそこまで驚きはしないが、ここでは魔法もあるのか。
「ってしまった!」
俺がよそ見をしていた間に数体の悪魔が姫の方に行っちまった。
「姫!」
だめだ、どうやっても間に合わねぇ。分かっていても駆け出していたが必要無かったらしい。
「敵をその拳でなぎ払う為にお力をお貸しください、毘沙門天様!」
首から下げていた勾玉が光りだしたと思うと、私の頭上に上半身だけの武神が現れ、襲ってきていた悪魔をその拳で殴り飛ばしました。
「いやぁー、すげーな姫!そんな力持っていたのか!」
遠くで戦っている和也くんが、よそ見してこちらに話しかけて来るので怒鳴ってあげました。
「そんな事より和也くん!エルフィアさんは私に任せたのだから、そんな雑魚達さっさと片付けてよ!」
もう、私の力に関心している暇があるなら一体でも悪魔を倒してほしいな。
「ああ、わかった!一体残らず蹴散らしてやるぜ!」
姫に怒られて再度、戦闘を開始しようとした時、
「それは、困るな。」
ドスの効いた声が宮殿に響いた。
「!・・・誰だ!」
反射的に声の主を探すとそこには、二メートルを超える身長を持ち、筋骨隆々なもはや体が黒いだけで、人と何ら変わりの無い悪魔が立っていた。
「俺様か?俺様はこの攻撃部隊を率いる部隊長のゲルマンだ!」
「部隊長?という事は、お前をぶった斬りゃあ、この悪魔共は引いていくのか?」
「何?俺様を切る?ガハハハ!そんなことはありえねぇが、確かに俺様を倒せれば、こいつらは指導者を失い引いていくだろうな。」
なら話は簡単だ。要するにこいつを倒せばこの世界の窮地は切り抜けられるって事だろ。ならやるべき事は一つしかねぇだろ。
「おい!ゲルマンっていったか、俺と一体一で戦え!」
「ガハハハ!この俺様と?どうやらそんなに早く死にたいようだな小僧!いいだろう、その勝負受けてやろうでわないか。」
よし、お相手さんは乗ってきたぞ。後は俺が勝てばいいだけだ。・・・親父、信じてるぜここに来る前に言ってた「白刀流の強さを信じて戦え。」っていう事を。
「行くぜ!」
「ふん!軽くひねり潰してやろう。」
そう言うと、ゲルマンはガントレットを装着して構えを取った。
なるほど、奴の武器は拳って訳か。たとえ素手であっても、最初っから全力で行くぜ!
「白刀流、花鳥風月!」
白百合を大振りに一閃、空中で空振りをした。すると、半月状の斬撃がゲルマンに向かって飛んでいった。
「カッ!この程度で俺様に傷が付くと思っていたのか、ぬるいわ!」
ゲルマンは花鳥風月に臆すること無く、拳を握り締めただの右ストレートを放ってきた。
「まじかよ。」
パキャンと音を立て、見事に花鳥風月が粉々に砕け散っていった。
こいつは強いな、そこらに居る雑魚とは違う。やべぇ、命賭けて戦っているのにちょっとワクワクして来た。
「何をにやけておる。今度はこっちから行くぞ!」
気がつけばいつの間にかゲルマンが一気に距離を詰めてきていた。
「ふんっ!」
またしても、花鳥風月を叩き割った、ただの右ストレートを俺に目掛けて撃ってくる。流石に、ぞくってくるぜ、あの威力の拳だ、一度でも食らったらアウトだろう。
「くっ!」
だが、どんな威力の拳だって当たらなければ意味はない。ましてや、ただの右ストレートだ。避けるぐらい造作もない。
「まだまだ、行くぞ!」
その後も、拳と蹴りのコンボを放って来るが全て紙一重で躱していく。
だが、避けてるだけじゃあ勝負にならない。タイミングを伺って反撃の時を待つ。
「ちょこまかと、うざったい奴だ・・・なっ!」
来た!性懲りも無く大振りの右を放って来る。これなら合わせやすい、俺は奴の拳と同じ方向に白百合を払い、拳を受け流した。
「ここだぁ!」
拳を受け流されたことによって体勢の崩れたゲルマンのがら空きの胴体に白百合をねじ込み、切り裂いた。
「ぐぬううぅぅ!」
反撃を喰らわぬように一旦、距離を置き白百合を構え直した。
「なるほど、一筋縄にはいかぬようだ、ならばこれでどうだ!」
傷が浅かったのか大して怯みもせずゲルマンは、手短にあった砕けた宮殿の柱を持ち上げぶん投げて来た。
「んなっ!」
おいおい、そんなのありかよ!まずい、デカすぎて避けられねぇ。
「和也くん!」
俺が避けられないのを悟ったのか、姫がザコ悪魔との戦闘を切り上げて俺達の戦いに割って入り、武神の力で柱を真ん中から叩き折った。
「小娘!一体一の戦いを邪魔するもんじゃないぞ。」
勝負の邪魔をされて感に触ったのか、標的を姫へと変えてゲルマンが襲ってくる。
「そうはさせるか!」
「ひゃあ!」
姫に怪我をさせるわけにはいかない。なので、ゲルマンよりも早く駆け出し姫の襟首を掴み、適当な方向へとぶん投げた。
「ふん、俺様の狙いは初めからお前だ。小僧!」
「えっ?」
姫に向けていただろうその拳は、俺に向けられていた。
「終わりだ。」
計り知れないパワーを持つ拳を鳩尾にモロに食らい、白百合も手放して、宮殿の端までぶっ飛び、壁にめり込んで止まった。
「ぐっ!・・・がはっ!」
まずい、まずい、まずい。
これは絶対、内蔵とかやばい事になってるだろ。吐血も止まらないし、何より全身の骨が砕けたかのように痛みが絶え間なく走っている。
痛い、痛い、痛い。
だめだ、意識が・・・もた・・ない。
和也くんに投げられて、お尻を打っちゃたけど、そんなことより和也くんが!
「和也くん!」
叫びながら和也くんの近くまで駆け寄っていきます。
私なんかをかばって・・・。
「返事してよ、和也くん!」
今度は、和也くんの体を起こしながら呼びかけてみます。
死んでなんていないよね・・・。
「無駄だ、俺様の一撃をモロに食らったのだ、生てはおらんさ。」
黒い巨体が近づいて来ながらそんな事を言っていたけど、そんなこと知らない!私が叫ぶのをやめたら、それは和也くんが最悪の状態になってしまったのを認めてしまうもの。
「和也くん!この世界を救うはずじゃなかったの!やるからには、しっかり最後まで護りきってよ!」
喉が張り裂けそうになっても、叫び続けます。
「騒がしい小娘だな、今すぐにあの小僧と同じ所に連れてってやるから黙っていろ。」
とうとう、ゲルマンが私の前にたどり着き、私の何倍もあるような手で首を掴まれ地面に足がつかなくなるほど持ち上げられてしまいました。
「ぐっ・・ううぅぅ。」
痛い、息ができない、手を振りほどこうにもビクともしない。
「・・・た・・けて。」
言葉にならない言葉で、それでも精一杯に、一人の少年の名前を叫びます。
「・・・たすけて・・・かずやくん!」
閉じていく瞼にその人は写っていました。
「おい、離せよ。」
俺は気がついたら、姫を掴んでいるゲルマンの手首を握り潰さんと手に力を入れていた。そして、体から白銀の風が吹き出していた。
「ぬっ!」
奴の手首がミシミシと鳴り始めると、さすがにまずいと思ったのか姫を手放し、俺の手を振りほどこうとするが、そうはさせない。
「おいおい、待てよ。さっきの、お返しがまだだぜ。」
俺の最大の握力で、ゲルマンを止めさせ、空いていたもう片方の手で奴の顔面に姫を傷つけた怒り全てを乗せた拳を叩き込む。すると、体から吹き出していた風が拳から大量に放出され、さっきの俺と同じく宮殿の壁までぶっ飛ばされた。
しっかし、今のは何だったんだ?もう、体から風は出ていないけど。ってそれより!
「姫!大丈夫か?」
ゲルマンが倒れている内に姫の下へと近寄り無事を確認した。
「けほっ!けほっ!・・・うん、なんとか。私なんかより、和也くんは大丈夫なの?」
「まぁ、大丈夫とは言い難いな、すっげー痛いし。それでも、ちゃんと最後まで守りきるさ。」
姫もその言葉を聞いて安心したのか、笑を浮かべて言ってきた。
「言ったわね、それなら何が何でも守ってよね。私は、少し疲れたから休むね。」
「ああ、休んでな。」
周りを見渡し、吹っ飛ばされた時に手放してしまった愛刀を探す。
「あった。」
俺が殴られた所からさほど遠くない地面に突き刺さっていた。
俺が柄を握り白百合を抜き放つと、ゲルマンが崩れた壁から出てくる。
俺が白百合を振ると、ゲルマンが首を鳴らし拳を鳴らす。
俺が近づいていくと、ゲルマンが近づいてくる。
「しぶといな小僧、あれを食らって生きているとは。」
「あいにくと、体が丈夫なのが取り柄でしてね。」
両者はにらみ合う、次こそは必ずその命を取ると。
両者は構える、己の扱う目の前の相手を殺すための獲物を。
両者は獲物を合わせる、相手へ出来る最大の礼儀として。
「小僧、なかなか楽しかったぞ。今までで最高と言っていいだろう。」
「そりゃどーも。でも、次で終わらせる。」
未だに痛みが走りまくっている体だ、あと一回刀を振れればいいところだろう。
次の一太刀で決着がつかなかったら、俺の負けだろう。なんとしてでも勝ちをもぎ取ってやる。
「「行くぞ!」」
刀は拳を弾き、拳は刀を弾き、二人は同時にバックステップを踏み一度距離を取り、再度突っ込んでいき俺は最後の一太刀を放った・・・ように見せた。
「白刀流、晴雲秋月!」
「むっ!」
おそらく、ゲルマンには俺がひと振りで六つの斬撃を放ったように見えただろう。
「こんなものが全力か小僧!最後の最後で拍子抜けだぞ!」
何の苦もなく、全ての斬撃を撃ち落とされた。そして気がつくだろう。
「ぬっ!これはっ!」
「そうだ、そいつは気迫で作った偽物だ。」
ゲルマンが、斬撃が偽物だった事に驚いている間に奴の懐へと入り込んだ。
「ぬ、しまった!」
何とかしてゲルマンは、体勢を立て直そうとするが。
「遅いっ!」
完全に何もできない状態のゲルマンへと、本物の一太刀を叩き込んだ。
「うぉぉおおお!!」
「ぐぬぁぁあああ!!」
肩から斜めに一閃、深々と切り裂いた。ゲルマンは膝をつき、そして倒れ込んだ。
「見事だ、小僧。俺様の完敗だ。」
「・・・和也だ。俺は白刀和也だ。名前ぐらい覚えていけ。」
「そうか、ならばカズヤ。一つ忠告してやろう、俺様に勝ったからといって、いきがるなよ。俺より強い奴などいくらでもいるぞ。」
「忠告どうも、だけど俺も一ついいか。俺はあんたと戦って勝ったが、楽に勝てたとは思っていないし、絶対勝てる勝負なんてある訳無いと思ってるよ。・・・まぁ、これからも戦うのかわからないけど。」
「そうか、それ・・・なら・・よ・い。」
その言葉を最後にゲルマンは黒い粒の光となって消え去った。
それを合図に、悪魔共は指導者を失い、混乱しどこへともなく逃げ去っていった。
「和也くん!生きてるよね!?」
戦いが終わったと見て、姫が駆け寄ってきた。
「ありがとう、よく戦ってくださいました。」
それに続いてエルフィアさんも寄ってきた。
「ああ、二人とも。なんとか勝・・て・た・がはっ!」
そういえば、体は酷いことになっているんだっけ。
俺は大量の吐血をして、意識を失いぶっ倒れた。






