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第一話 第一章

「九百九十八・・・九百九十九・・・千!」

最後の気合を入れて俺、白刀 和也は木刀を振り下ろした。

「よっしゃっ!朝のトレーニング終了!」

そう、俺はたった今、毎朝のトレーニングを終わらせた所だった。

俺の家は、昔先祖が編み出した白刀流という独自の剣術を道場で教えているのだ。そして、俺は白刀流を受け継ぐ後継者となりうる人材として日々鍛錬しているってわけだ。

「さてと、シャワー浴びるか。」

俺は、トレーニングでかいた汗を流すために道場に備え付いてるシャワールームで汗を流し、制服へと着替え家族と朝食の待つ母屋へと向かった。

「おはよう、親父、御袋。」

両親への挨拶を掛けながらリビングへと入った。

「うむ、おはよう。」

「おはよう、和也。早く食べないとあの子に怒られるわよ。」

俺の挨拶に二つの声が帰ってきた。親父と御袋、そう俺はこの両親と三人暮らしていて、親父は白刀流道場の当主。御袋は主婦をしている。

「おっと!確かにやばいな。」

御袋に言われたとおり、点いていたテレビを見ると、いつも出て行く時間ギリギリだった。なので、テキパキと食事を済まして家を出た。

俺は、一直線に学校には行かず、通学路の途中にある神社へと足を運んだ。

「和也くん!今日はずいぶんゆっくりだけど、どうしたの?」

「トレーニングで時間がオーバーしちゃってな、悪い。」

門前で待っていた女の子は、八雲 姫。俺の幼馴染でこの八雲神社の巫女をしている見た目も性格も、そのまま大和撫子のようなかわいいよりも可憐という言葉の方が合っている子だ。

「それはいいけど、トレーニングばっかりで体壊さないように気お付けなきゃだめだよ。」

彼女の特徴的な黒くて長い髪をなびかせて心配しているようので、

「ああ、心配してくれてサンキューな。さて、それじゃあそろそろ行くか。」

「うん、急がないと遅刻しちゃうしね。」

歩き出して十分くらい経つと、見えてきたのが我らが母校、清涼高校が姿を現した。清涼高校は全校生徒三百人程度と、一般の高校に比べれば少ない人数の生徒達が通っている。

「さて、今日も頑張っていこう!」

「・・・俺は、今日も寝ないか心配だぜ。」

半分以上本気の冗談を呟きながら俺達の教室、二年一組に入ろうとドアをあけた瞬間。


「死にさらせ!」


突然目の前から、ゴウと拳が飛んで来た。

「おっと!」

しかし、日々道場で鍛えている俺にとっては、その拳を避けることなど造作もなかった。なので、ついでに拳を放ってきた相手に殴り返してやった。

ピースで。

「ぎぃぃやああぁぁぁ!」

ブスリと良い音が聞こえそうな感じに、人間の目という部位に突き刺さった。

「あああああぁぁぁ!」

ちなみに、そこで悶え苦しんでいるのは猿火 弾。爆発したかのようにツンツンの髪が特徴的な奴で、皆からは猿の愛称で呼ばれている俺のもう一人の幼馴染で・・・バカだ。

「あああぁぁぁ!」

未だに痛がっていてうるさい猿の制服の襟をひっつかんで、

「まったく、大袈裟だな、おら起きろ!」

思いっきり揺さぶってやった。

「おおう、おおう、ってカズ!てめぇ何しやがる!?」

どうやら痛みから復活したらしい猿に質問を質問で答えた。

「それはこっちのセリフだ。いきなり殴りかかってきてなんのつもりだ?」

「え?え~と、親友との朝の挨拶?」

なんで疑問形なんだよ。

「・・・本音は?」

「お姫ちゃんと朝から、いちゃいちゃしてるからだ!コノヤロー!」

猿が本音を叫びながら再度俺に殴りかかってきたので、

「よっと。」

俺も、再度拳を避けて、今度は猿の背後に回り胴体に手を回して掴みブリッジをするように背中を曲げて、

「行くぞ~。」

バックドロップをかまして、床に叩きつけた。

「げふぅ!」

短い悲鳴と共に本日二度目のダウンを取った。

またしても床に倒れた猿に今まで観戦していた姫が近づいていき、

「もう、猿くん?私と和也くんはただ一緒に登校して来ただけで、いちゃいちゃなんてしてないよ?」

どうやら、俺達の無実を証明してくれているらしい。


「・・・とか言っても、あいつのこと気になってるんでしょ?」

「・・・そそ、それは!?え、えっと、気になってるといえばそうだけど・・・」


なにやら猿が姫に耳打ちしたら急に姫に顔が真っ赤になって一人でぶつぶつ言ってるがどうしたんだ?


キーンコーンカーンコーン


「お前ら席に着けー、ホームルーム始めるぞー。」

先生が教室に入ってきたので、騒いでいた皆が思い思いに自分の席に座っていくので俺も自分の席に座った。

「起立、礼。」

「「「おはようございます。」」」

「おはよう。それじゃあ、今日の連絡はな・・・」

朝の挨拶を済ませ、連絡を聞き、ホームルームは数分で終了した。ほどなくして一時限目の先生が教室に入ってきた。


キーンコーンカーン


放課後を示すチャイムが鳴り今日の授業は全て終了した。

「さて、俺は剣道部に顔出しに行くけど、姫は?」

「私も、歴史研究部にいくよ。」

「わかった、じゃあ校門でな。」

「うん。」

言ったとおり、俺は剣道部に入っていて、自宅の道場で練習しているだけあって、全国大会でもそれなりの成績を残している。対して姫は、歴史研究部で巫女に必要な神様の歴史をいろいろ調べているらしい。

「さてと、こっちでは頑張りますか!」

授業を受ける態度とは一転、やる気を発散させながら武道場へと向かった。


「悪い、待たせちまったか?」

やはり、運動部と文化部では終了までに差があったようで、校門で姫が一人で待っていた。

「ううん、大丈夫だよ。」

「そうか?じゃあ行くか。」

空、地面、住宅はオレンジ色に染まっていて、いかにも夕暮れと言える帰り道だ。

「そういえば和也くん?結局今日も授業中寝てたでしょ!」

「うぐっ!ばれてたか。いや、でもあれは不可抗力で・・・」

そんな他愛のない世間話に花を咲かせながら、綺麗に舗装されたアスファルトを踏みしめて帰路を歩いていく。

八雲神社まで帰ってきたが、二人は止まらずに歩いていく。

「このまま来るだろ、姫?」

「そうだね、いつもと同じでこのまま行くよ。」

八雲神社から白刀家までは歩いて一分とかからずに着く距離にある。

白刀家に着くと真っ先に二人は道場の方に向かった。道場の玄関は引き戸なので一気にドアをスライドさせた。すると、

「「「誕生日おめでとう。」」」

パンパンとクラッカーの音が数発ならされた。

「うぃーす。」

「うん、ありがと。」

俺達二人はわかっていた事なので、軽い返事をして道場へ入っていく。

「何よ!分かっていても、驚いてくれたっていいじゃない!」

この無駄にテンションの高い人は姫の母親の八雲やくも 乙姫おとひめさん。姫の母親だけあって姫と同じく黒くて長い髪をなびかせている美しい人だ。

「そんなこと言われましても、毎年やっているんですからなれてしまいますよ。」

そうなのだ、偶然にも俺と姫は誕生日が一緒で幼馴染ということもあり、いつしか合同パーティーをするようになっていたのだ。

「そうだよママ、毎年やって驚いて欲しいなんて難しいよ。」

「そんな、姫ちゃんにまで否定されちゃった。ママ悲しい。」

あーあ。自分の娘にまで否定されて乙姫さん落ち込んじゃったよ。

「ほらほら、皆さん!お料理が出来ましたよ。熱い内に食べましょう?ほら、乙姫さんも。」

御袋がいつもは作らないような豪華な料理を運んで来た。

皆、料理には目が無いらしく会話もそこそこに次々に運ばれて来る料理をたいらげていった。


「さぁ、二人共!お待ちかねのプレゼントタ~イム!」

夕食を食べて回復したのか、テンションマックスの乙姫さんが次なるイベントを持ち出し始めた。ちなみにこれも、子供の頃から続く物なのだ。

「まずは姫あなたへのプレゼントはこれよ。」

「うん、ありがとう。って、え?これって。」

さっきまで明る過ぎた乙姫さんの顔が急に真剣になり、まるで命を預けるかのように姫に渡したのは乙姫さんが毎日付けていた勾玉だった。

「いいのよ、受け取って。」

「う、うん。大切にするね。」

姫もこんなに真剣な乙姫さんを見たことが無いのか若干引き気味だぞ。

「和也、次はお前の番だ。」

どうやら俺には親父から渡されるようだ。さてさて俺には何が貰えることやら。

「ほら、これだ。」

渡されたのは白い柄、透き通った銀色の刃、綺麗に整った波紋。そう、まさに刀だった。

「これは?」

「白刀流に受け継がれる刀、白百合しらゆりだ。今のお前なら使いこなせるだろう。」

「どうしてこんな物を?俺はまだ白刀流継承までの実力を身に付けて無いぞ。」

親父は来たかという感じにいつもの渋い顔をさらにきつくして語りだした。

「いいか二人共。その刀と勾玉は代々、息子または娘が十七歳になると受け継がれる代物だ。そしてまず初めに言っておくが、これからありえない現象が起こると思うが受け入れてくれ、そうじゃないと・・・本当に死ぬからな。」

は?とうとう親父にもボケが始まったか?とは言えなかったね。

何故かって?急に体が光りだして足元には魔法陣のような物が浮かび上がっていたからだよ。

「なんだぁ!?」

「なにこれ!?」

自分の声以外にも声が上がったので、そっちを見ると姫までも体が光りだしていた。

「ちっ!もうか。まだまだ説明不足だっていうのに!」

「私たちが最後に向かった時も結構厳しかったからね。」

親父達がそんなことを言ってる間にもどんどん光が強くなっていく。

「和也!時間が無いから手短に伝えるぞ!お前には白刀流の剣術を大体教えた。後は実戦だ。白刀流の強さを信じて戦え!」

戦う?何と?聞きたい事は沢山有ったがどうやらそれも出来ないらしい、意識がだんだん飛んでいくのが感じられた。

「姫!あなたは、今まで崇めてきた神様達に助けを求めなさい、きっと助けて貰えるわ!」

姫はちゃんと聞こえただろうか?光が完全に体を飲み込んでいき意識が飛ぶ最後にある声が聞こえた。


「シンフォニアの王女、エルフィア・シンフォニアの名のもとに助け人様!私にお力をお貸しください!」


光の奔流に身を任せ、俺と姫はこの世界からその姿を消した。


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