文句を言わせて貰います
紗季は人類至上、初めて神様を正座させると、眼光鋭く神を見下ろした。
「…で?何で初めに出て来なかったわけ?」
神は悪びれた様子も無く、にこりと笑った。
「だってさぁ?王が神殿で水晶に手を触れないと、出てこれないんだもん。」
「…じゃ、あの説明書に書いとけば良いじゃん!」
紗季の言葉に、神は瞳を輝かせた。
「あ!あれ見てくれたぁ?…じゃあ、もう美形集めて逆ハーでモテモテウハウハでしょ?」
妙にニヤける神に、紗季は半目になった。
「悪いけど、今仮側近1人だから。あんな説明書で出来るわけないでしょ?」
ふざけんな!
逆ハーウハウハなんて余裕ねぇよ!
生活に困ってんのによ!
神は、あれ?と首を傾げた。
「…え~まだぁ?つまんない。じゃあ、またあとで…」
と言って消えようとする神に、紗季は腕をがっちり掴んだ。
「…その前に、一から説明しろ。」
神は紗季の気迫に、思わず頷いていた。
「…うんとね。まずは、この世界には、100年に一度王を選ぶって役目が私にあるんだよね?
それで、城と土地はあげて後は放置なんだけど。」
紗季は相槌を打つ。
神は続ける。
「まぁ、王はなった日から不老不死だから、国が機能すれば好きに過ごせる。側近や官吏が最低限政が出来ればね。
でも、上手くいかなければあっさり国は潰れる。様々な理由でね?」
紗季は、ふとトレガーを思い出した。
神は紗季を見つめる。
「…君は丁度100年の境に命を落とし、魂がこの世界を通った。偶然だったんだ。」
そういう事か…。
頭を抑えたが、過ぎた事に何か言うことはしなかった。
「てかさぁ…私が不老不死って事は、周りは死んでいくんだよね…。」
少し寂しそうな声音の紗季に、神は首を振った。
「いや?君が選んだ上級役人以上の者なら、不老不死にできるよ?」
はい?
「…どうやって?」
神は懐から分厚い本を取り出した。
「…これは《神書》。ここに名前を書き入れた者は不老不死になるよ。あと、国の細かな法や決まりも書き入れてみて。」
神書かぁ。
「ただの国民は駄目だけどね。…あと、君以外は書けないよ。」
紗季は本を受け取り、本をじっと見つめた。
そして、神を見返す。
「私を選んだのは貴方だからね。…文句言わないでよね。」
紗季の言葉に、神は微笑んだ。
「うん。生きるも死ぬのも君次第。まあ、好きにやってみて?」
紗季は黙って俯き、しばらくそのままでいた。
しかし、次に顔を上げた時には何か決意をした表情を浮かべていた。
やってやろうじゃん!
つくるよ私の国を!
.