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ウォーター国創世記  作者: 雪香
3章―ケープラナ動乱編―
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王と面談と【上】

今回長くなる予定の為、話を分けさせて頂きました。

その夜、紗季は簡素な部屋で1つの机の上に置いた紙を何度も見ては呻いていた。



側近(王の次に権限を持つ、王と他官吏との連絡役)

レビュート

キリス・トレガー


内大臣(王と各官との連絡役)

ルピア


宰相(政の取り決め)

アルバンド・ライトーク


宰相補佐官

シュラ・シークラッツ


外務大臣

ナント・セクスハイム


内務大臣

エリリィア・グラウンド


司法大臣



大蔵大臣

サイラ


文部大臣

ユーチェロ・ノトス


総部大臣

ローマネスト・ルッフェ


騎士団団長

ネルビア


騎士団副団長

メーリング・グラウンド



うーん…あと、私の生活拠点の取締りも欲しいなあ。

セラとかやってくれないかな?

司法大臣、空いちゃったよ…。

てか、既によくわからなくなった。


あの、ハンニエルとか、ファウルってどーすんだろ?

モリスは…なんかお願い出来る雰囲気が無かったし。


コンコン。


あ、来た?


扉の音に軽く咳払いをし、背筋を伸ばす。

実は、気になる者は個別で呼び様子を見る事にしたのである。


「どうぞ。」


「…失礼致します。」


入って来たのは、短めの深い藍色の髪を持つスラリとした青年だった。


紗季の促しにも丁寧な詫びを入れ、椅子には座らず姿勢よく起立する。


「メーリング・グラウンドと申します。この度は真に感謝申し上げます。」


長くなりそうな口上を制し、紗季は軽く頷く。


「それで本題なのだけど…貴女にウォーターの武官をして貰いたいの。」


簡潔な物言いに、メーリングは寸の間口を閉ざし変わらなかった表情に動揺を浮かべた。


「…私が、ですか?」


ええ、と静かに見返す。


「我が国にも騎士団を作りたいわ。モリスに聞いたら、貴方は武官として優秀だと聞いたのよ?」



「あの、ですが私以外の者は…」


困惑し続けるメーリングに、紗季はあくまで冷静に突き放す。


「勘違いしないでくれる?私貴方の事情も興味無いし、ご機嫌を取るつもりもない。なるの?ならないの?」


紗季を知るものしか分からない程僅かに早口で言い切ると、相手を真っ直ぐにい抜く。


自分が王で、相手は消える国の武官。

立場を分からせねばならない。


彼らは、レビュートやローマネとは違う。

少し隙を見せれば、年若い女だと甘く見るだろう。

信頼しないだろう。


モリスから聞いた、王気が出せれば良いのだが。


そうとは知らずメーリングは、紗季の鋭い視線に口を閉ざし思考を始める。


(…お祖父様はどうなさるのだろうか?両親にも相談したい。しかし、今決めねば私の生涯はあと一年たたずで終わる。)


「…考えさせて頂けませんか?」


紗季の雰囲気に僅かに侮蔑が生まれる。


「なぜ、貴方の意見を私が聞かなければいけないの?」


メーリングの背筋に冷たい汗が流れ、同時にメーリングの相手が王だという概念が、畏縮させる。


(…私が、新しい国の官吏?…しかし、それはケープラナに対しての裏切りではないか?私は心から仕えられるのか?)


どのような問いにも一笑するだろう少女王へ、静かに視線を送る。


「どうか…考えを纏める時を下さいませんか?…日が落ちるまでに必ず、どうか。」


深々と頭を下げる青年に、紗季も軽く頷きかけるが表向きは淡々と言葉を投げるのみである。


「…遅いわ。日が傾いたら来なさい。来なければ、貴方は要らない。」


バッサリと切り捨てる口調に、メーリングは顔を上げず物音すら立てず部屋を出て行った。


紗季は、震える体に力を込めぎゅっと目を瞑る。


正しい王の在り方が分からない。


息も吐けず、扉が叩かれる。


「…どうぞ。」


知らず重くなる頭を振り、入って来た人物に目を向ける。


若草の様な瑞々しい髪は、綺麗に短く切り揃えられている。


青年は、膝を着き礼を取り顔を上げた。


「ユーチェロ・ノトスです。お呼びと聞き、御前に参上し…ました。」


二十歳前後に見えるユーチェロは、にこりと人好きする笑みを浮かべた。


紗季の促しに、青年は素早く椅子に腰掛け何処か嬉しそうに口許を緩めている。


えーっと


「…ノトス?話を始めるけれど。」


はい、とユーチェロは快活に返事を返す。


「あ、ウォーター国王陛下が良け、よろしければ、ユーチェロって呼んで下さいッス…です。」

下手な敬語だが、彼の太陽の様な明るい人柄に、紗季も何となく気が抜けていく。


「普通に話して構わないわ?…ユーチェロ。」


ユーチェロの瞳が見開かれる。


「…あ、いえ、それは失礼ッスのでできる限り頑張る、です。」


一生懸命言葉を選び、紗季へ何度も頭を下げる。


何か、変わった人。

だが、不快では無かった。


紗季は軽く喉を鳴らし、表面では感情を浮かべず続ける。


「…ユーチェロ・ノトス。貴方をウォーターの文官として迎えたいのだけど、どうかしら?」


紗季の言葉にユーチェロは寸の間動きを止め、直ぐにはっきりと返す。


「はい、喜んでお受けします!」


へ?


あまりにあっさりと決めた相手に、紗季は思わず口を開けて固まっていた。


「…っえ、どーいう事?」


「?何がですか?」


「何がって…貴方、私の言った意味を分かって言っているの?」


不審そうな紗季の視線に、ユーチェロはといえばキョトンと首を傾げ、何か思いつきああと頷く。


「えーっと、ケープラナを出てウォーターに行くんスよね?俺…私は、家族も居ませんし、残したいものもないんで、大丈夫です。」


あまりにあっけらかんとした相手に、紗季は反対に不安になっていた。


ちょっと、何かメーリングのがましじゃない?

いくらなんでも責任感無さすぎでしょ。

でも、モリスが名前を消去しなかったのは、駄目な人ってわけじゃないだろうし。


えーっと…?


「…ユーチェロ。一応言うけれど、貴方には文部大臣をして貰う予定よ。」


「文部大臣、ですか?」


「ええ。詳しくはまだ決めてないけれど、ウォーターの歴史を編纂、纏めたりする部署にするつもり。」


ふんふんと真剣に相槌を打っていたユーチェロは、顎に手を置き目を細めた。


「…ウォーター国王陛下。」


「何か?」


「実は、俺は現在、法を訂正し編纂する役割を担ってて…出来れば、そういった事をさせて、頂ければ良いかなと。」


法を纏める…司法大臣?とか。


出来ましたら、と繰り返す相手に紗季は少し思案し、顔を見据える。


「…考慮しておくわ。必ずとは言えないけれど。…日が傾く頃結果を伝えるわ。待っていなさい。」


胸中混乱しつつ、静かに話せば、ユーチェロは深く礼をし部屋を後にするのだった。





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