表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウォーター国創世記  作者: 雪香
3章―ケープラナ動乱編―
75/100

密議

紗季とモリスを挟む卓に、モリスは一つの巻物を静かに置いた。


「此処に、現在の中級役人以上の名が全員記されています。」


全員…か。


「…まあ、名前見ても分かんないけどね。」


ポツリと呟き、巻物をしゅるりと開くと文字を追う。


「モリス、何か書く物は?」


紗季の言葉に懐から筆を取り出す。


んーと、まずは。


脳裏に浮かぶ待っている者達。


「…モリス。」


「はい?」


「下位の者へ威張る者、上位の者へ媚びへつらう者……種族で差別する者は名を消してくれない?」


淡々と言う言葉には、明らかな拒絶を含む。


モリスは小さく微笑み頷くと、素早く手元を動かしていく。


絶対、ルピアは嫌がるよね。


初めて此処へ来た時の若い官吏のレビュートへの視線。


ルピア、レビュート、サイラ、ローマネは唯一この世界での私の味方。

嫌な思いなんてさせたくない。


「これでよろしいでしょうか?」


ほとんど線を引かれた巻物に目を通す。


エリリィア・グラウンド

あ、女の人だ。


ナント・セクスハイム

…えっと、会議でちょっとどもってた人かな?


シュラ・シークラッツ

覚えてる!赤い目で恐そうな感じの人。


ユーチェロ・ノトス

あー、あの若い緑の髪の。


メーリング・グラウンド

…名前だけ聞いた気がする。


気にかかった名前のみ印をつけていく紗季は、次第に息を吐く。


顔も分からない人と国ってつくれるのだろうか…。


うーん。


アルバンド・ライトーク


あ。


「モリス。」


「…はい。」


思わず相手へ顔を向けた紗季は、知らず眉を寄せた。


「アルバンドってどんな感じ?」


「…優秀ですよ。」


変わらず微笑むモリスの間に引っ掛かるものがある。


「そう。じゃあ、仮にウォーターの宰相にしたら出来ると思う?」


モリスの笑みが薄らいだ。


「…出来ないでしょうね。」


「え?意外と厳しいのね。貴方の後継者って聞いてたんだけど?」


目を瞬き驚く紗季に、モリスはあくまで官吏として冷静な見解を述べる。


「確かに歳の割にアルバンドは聡明で、真面目で有能ではあります。それは長年の基盤が整った大国では今のままでは良いでしょう。しかし、新しい国ではどうなるでしょうか。」


一呼吸置いたモリスは、紗季を真っ直ぐに見つめる。


「貴女は、アルバンドが宰相になり、国を任せられますか?信じられますか?失敗を許せますか?」


紗季は知らず目を付せて、唇を紡ぐ。


「…分からない。でも、宰相って普通の人は難しいんじゃないのかな。」


力を無くす紗季に、モリスの瞳は真剣そのものだった。


「…では、まず印をつけ終えたら役職を考えてみましょうか?」


「…役職?」


ええ、とモリスは頷く。


「国づくりを想像していけば、良い考えが浮かぶかもしれませんし。」


「そう、かもね。」


混乱する思考を止め、紗季は曖昧に返す。


…なんか、すっごい大変なんだなあ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ