終わる町へ
元騎士団団長キリス・トレガーの後を着いて行っていた、鳥人セラと孤人ネルビアは目を疑っていた。
野獣や魔獣が国に侵入していると聞き、キリスは自分の部下を通して城へ応援を送った。
クデルトに居たキリスは部下を連れ急いで駆けてきたが、その場は想像と悪い意味でかけ離れていた。
野獣と聞き、キリス達の頭には巨大な犬や兎の様な生き物が浮かんでいたのだ。
しかし、目の前の生き物は違っていた。
ギョロリと見開く瞳は充血した様に真っ赤に染まり、牙は獰猛な肉食獣の様に鋭い。
何よりも目を引く異様に長い足は、しっかりと大地を踏んでいるのにも関わらず、前足は大地から離れている。
遠目に見たセラは、小さく悲鳴を上げ口元を押さえた。
「…あれは、何?」
ネルビアは眉根を寄せ黙っていたが、キリスの苦い表情に視線を向ける。
「…どうかしたの?」
「ああ…騎士団は、来ている様なのだが…」
キリスの言葉に、騎乗する集団を見つけ直ぐに察してしまった。
立ち竦むか、逃げ惑う武官達。
キリスの固い表情は、伏せた目を上げた瞬間決意を込めていた。
「…あの場には若い武官しか居ないようだ。直ぐに向かおうと思う。ネルビア…セラを頼んでも良いか?」
「キリス様?!」
声を上げるセラに小さく笑みを向け、キリスは黙って駆け出した。
ネルビアは深く溜め息を吐く。
「…まだ返事してないんだけどー。」
しかしネルビアは断る気も無かった。
行動を共にしたキリスは、少なくとも異種族に対する偏見は見られなかった。
セラとの関係性を見ても、まるで親の様に接しているし、狡猾と言われる自分の意見を疑わなかった。
まあ、だからと言って全部信用してはいないけど。
「……ん?!」
その時、嗅覚が鋭く反応を示す。
「セラ…。」
「っ何?」
ネルビアが呼び掛ければ、セラも異変に気付いたのか目を合わせる。
「…サキちゃんの匂いがする。…たぶん、狼ヤローも一緒っぽい?あと、知らない人間の匂いも。」
冷静に考えるネルビアに、セラは慌てて周囲を見渡す。
「そんな呑気に考えてる余裕は無いわ!急いで離れる様に言わないと!」
ネルビアも小さく頷くと、セラに促されその背に乗り高く舞い上がる。
とは言え、どうしてもキリスを気にしてしまうセラは、焦り呼吸が乱れがちだ。
救いと言えば、野獣もどきに飛行能力が無い事だろう。
目を凝らして地上を見渡せば、町に近付く数頭の騎馬が見つかった。
直ぐに高度を下げて、騎馬達の前方に舞い降りる。
「サキ様!!」
「…え?セラ?!あ、ネルビアも。」
急に現れたセラに、サキを乗せた騎馬を操るファウルは、相手が敵では無いと察し馬を止めた。
「セラ何処行ってたの?てか怪我とか無い?」
純粋に疑問をぶつける紗季だが、セラは後方を忙しなく確認し早口で返す。
「ご心配お掛けしました、サキ様。詳しい事は後で必ず…!それより、速く此処から離れて下さい!」
「どういう事だ?」
それに直ぐに反応したのはファウルであった。
「…拙は、救援を受け向かっていた!先に騎士団が、もう着いているはずだが?」
セラはぎゅっと唇を噛み締めた。
「貴方がどんな救援を受けたか知らないけど…今、町は破壊され人間も半数は死んでいるわ。…野獣の様な怪物に!」
セラの震える声と真剣な表情に、ファウルの目も細まる。
「…鳥人殿、騎士団とその野獣の数は?指揮している者は分かるだろうか?」
ファウルの部下達の顔色が悪くなる中、当の本人は冷静にセラに問うた。
「いえ…数まで。」
「…野獣っぽいのは30~40ぐらい。騎士団はほとんど逃げてたから500いかないぐらい?」
首を傾げるセラの横で、ネルビアが淡々と語る。
ふむ、とファウルは頷く。
「礼を言う。狐人殿、ちなみに指揮は誰かしているだろうか?」
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