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ウォーター国創世記  作者: 雪香
3章―ケープラナ動乱編―
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国境で



向かい風に目を細め、なんとか視界に景色を映す。

少し上を向けば、直ぐに目に入る精悍な顔立ちに内心鼓動を早めていた。

国境の様子を見に行くと言った紗季に、ファウルは直ぐ様護衛を申し出た。

勿論馬に乗った事など無い紗季は、ファウルの前に共に騎乗したのだ。


その横を、レビュートが寸分違わぬ速度で並走している。


…今は冬なのかな?


肌を刺す冷たい風に身を震わせる。


「…お寒いですか?」


耳元で問われた疑問に、慌てて首を振る。


「あ、大丈夫よ。」


「是。寒いようでしたら仰って下され。速度を落とします。」


ハッキリとした物言いに似合わず、ファウルは細々と気が付ける男であった。


さすが…500歳越え。


年を聞いた時は正直驚いた。

それまでレビュートは将軍に対し警戒した態度を崩さなかったが、ふと年齢を聞けば少しだけ態度を軟化させた。


ファウルの快活な様子と、獣人へ変わらぬ接し方も良かったらしい。


途中人通りの無い街を抜け、薄暗い森に入ると馬を止めた。


「ふむ。申し訳ございませんが、今日の所は野宿と致しますが…。」


大丈夫かと視線で問うファウルに、特に異論無くあっさりと頷く。


「ええ。分かったわ。」


紗季の答えにホッと笑みを浮かべるファウルは、数人着いてきた部下達に幾つか指示をしてから手頃な場所に火を焚く。


野宿か~。

キャンプは経験あるけどね。

まあ、クデルトの森での事があるからそれを思えばね…。


一人苦笑した紗季は、自然と隣に座るレビュートを確認しあることに気付く。


「…そういえば、ローマネは来なかったみたいかな?」


「だな。ったく、勝手な奴だぜ…これだから魔族は。」


舌打ち混じりのレビュートは、心配する素振り無く直ぐに話題を移した。


「…確かめに行くんだろ、指揮した奴を。」


「うん。もしかしたら、トレガーかもしれないでしょ?」


交渉は済んだのだ。

トレガーをウォーターに連れ帰る事に拒否はさせない。


うん、と張り切る紗季は何故か黙り込んだレビュートに首を傾げる。


「…どうかした?」


「………………たら」


ん?


「何?」


レビュートの眉根が寄り、口元が下がる。


「もし、そいつが居なかったらお前どーすんだよ?」


不機嫌なレビュートに紗季は困惑しつつ、相手を落ち着けようと理由を考える。


「えーっと、そしたらまた探すよ。セラとも約束してるし…もし面倒だったら先戻っても………


「違う。」


常とは違い、レビュートの声には静かだがハッキリと意思が感じられた。


「…そいつにそこまでしてやる義理ねーだろ。もし居なかったら放っとけよ。お前、サキが王だろ?王から行くより、来るのを待つもんじゃねぇの?」


………そっか。

ある意味それも合ってるのかも。


「…でも、それは国境に行ってから考えるよ。」


軽く返した紗季の様子に、レビュートは複雑そうに表情を歪める。


「お前が、それで良いなら良いけどよ。」



その時、タイミング良くファウルの声が掛かった。


「それでは、少し仮眠を摂りましょう!」


兵達が焚き火の番をしてくれるらしく、レビュートは外套を被り木に背を凭れ目を閉じた。

紗季も焚き火の側に丸まるように横になる。


ボーッと目を向けると、ファウルが先程より距離を縮めて来た。


「…眠れませぬか?」


「そうね。…ねえ、ファウルって500歳よね。…モリスとかは?」


何と無く沈黙に気まずさを感じ、無難な話題を降ってみる。

確かアルバンドは24才だよね。


ファウルはふむ、と小さく頷く。


「我が国では、モリス殿とハンニエル殿は700を越えておりますな。」


わー。て事は重臣中の重臣だ。


「どーりで…。」


納得する紗季に、ファウルはクスリと笑みを浮かべる。


「基礎を作り上げたお二方故に、拙も尊敬しておるますが。あのお二人にすれば、まだまだ拙も子どもでしょうな。」


何か思い出しているのか、その眼差しは温かいものだった。


500歳が子どもって…。

じゃあ私だったら、孫とか?


「ふーん。じゃあ、上級役人ではライトークが一番若いのかしら?」


紗季の口より出た名前に、表情を僅かに引き締めた相手は自然と居ずまいを正した。


「…あの者はまだまだ若い、ですが…これから伸びて行く可能性を大いに持っております。故に、此処で朽ち果ててしまうのは惜しい。」


ファウルのあまりの真剣さに、知らず知らず言わんとする事を察してしまう。


…そーいうことだよね。


今の現状でいっぱいいっぱいの紗季は、正直言うとアルバンドをウォーターに入れるつもりは無いのだ。


ふと、側で身動ぎする気配を感じた。


「おい紗季、全く聞く必要ねーぞ。」


「…レビュート。」


鋭い視線をファウルに向けたレビュートは、紗季を守る様にすぐ側に乱暴に座る。


「…てめえの国の尻拭いしてやって、更に意見押し付けるとか何様だ?あまりうちの王を舐めるな。」


レビュートにしては冷静だが、言葉の端々の怒りが彼の不快さを物語っていた。

ファウルの部下が戸惑い気味に此方を見るが、特に口出しはして来ずに固唾を飲んでいる。








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