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ウォーター国創世記  作者: 雪香
3章―ケープラナ動乱編―
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夜の中庭で




…自分が思っているより、難しい問題だったらしい。



紗季は、宛がわれた客室の中でため息を吐いた。



あの後、なんとも言えない重苦しい空気となり、だんまりが続いた…。



紗季は仕方なく、一晩ケープラナの官吏だけで話し合う様に薦めたのだ。


…はぁ。

どうなることやら。



極度の疲労と緊張で、紗季はベッドにぐったりと横たわる。



…帰りたい。



そう思い、脳裏に浮かぶのは元の世界。



そして、ウォーター国…。



やっぱり他国って、なんーか疎外感あるよねぇ。



ウォーターにいた時は、自分の居る場所って無意識に思ったし…。



てか、ネルビアとセラどうしたんだろ?



まさか、死んでは…いないよね?



最悪の不安が過るが、なんとか抑え込む。



もし、紗季に何の役割も無く居るなら泣いたり喚いたりしようが、一つの国を背負い、自分の決定で他者の人生を左右出来る立場にある為、それはしなかった。



紗季は胸に沸く様々な思考を振り払う様に、部屋を出た。



静かな廊下を過ぎると、中庭への細道を見つける。



不安を煽るような冷たい風に眉を寄せ、足を進めた。



広い中庭に立ち、足元に咲く小さな花に手を伸ばした。




「…綺麗。でも、ひとりぼっちだね。寂しそう…。」




ポツリと呟いた時、背後に気配を感じた。




「?……レビュート。」



「…1人じゃ危ねぇだろ。」



そうに言いながら、しかめ面のレビュートに紗季は噴き出した。




「…クスクス。いっつもそんな顔で疲れないの?」



「はぁ?どんな顔だよ?」




「こんな顔!」




紗季は目を細めてレビュートを睨み上げた。




「んな顔はしてねぇだろうが!」



「…いーや、してるね!鏡でじっくり見てみな。」



少し気分の上昇して来た紗季は、楽しげに笑みを浮かべる。



そんな紗季に、レビュートは何か妙に落ち着かない気持ちになった。




「…おい。」



「ん?」



首を傾げて自分を見つめる紗季に、思わず視線を下げながら口を開く。




「……悪かった。あん時は。」



…はい?


何の話だ?



「何の事…?」



紗季の不思議そうな問いに、レビュートは僅かに口をつぐんで続けた。




「…昼間の屋敷の事だ。言いすぎた、って言ってんだよ!」



…昼間の?



ああ、あの時?



人間なんかに分かるか~とかだっけ…。



「…いや、確かにレビュートの言う事も尤もだしね?私もキレちゃったし。」



「そんな事ねぇ。俺が言いすぎた…謝らせろ。」



でも、上から目線…。



「…ううん。気にしなくて良いから。」



「いや!俺が悪かった!」



「…だからぁ~もう良いよ。」



「うるせぇ!素直に受け入れろよ!」




しつこいなぁ…。



紗季は内心面倒くさくなっていた。




「…何でそんなにムキになってんの? 元々私に着いて来たのもサイラが言ったからでしょ?…私に気を使う必要ないじゃん…。」




「…………。」




あれ?



何故か黙り込んだレビュートに、紗季は戸惑う。



「…どうしたの?」




「………確かに…。」



「はい?」



レビュートは目を泳がせながら、ゆっくり語り出す。



「…確かに、初めはサイラが言ったから…ってのはあった。」



「うん。」



そりゃそうだよね。



「…だが、お前も色々苦労してるってのは分かったし、そこらの人間の女とは違うと思った…。」



「うん…?」



それでなんだ?




「……俺は、お前の国の官吏だろ。」



レビュートの言いたい事が分からず、紗季はキョトンとした。



レビュートは一瞬口を閉ざし、何か決意した様に紗季を見据えた。




「…お前、サキの官吏になってやる。お前の願いなら聞いてやるよ。」




……



「…えっと、ありがとう?」



複雑そうな顔の紗季に、レビュートはムッと眉を寄せる。



「…何でんな反応なんだ!」



「いや、何かレビュートにそんな事を言われると思わなかったから…。」


…何か変な気分だなぁ。



紗季の言葉に不機嫌になったレビュートを見て、紗季は知らず笑んだ。




「…でも、嬉しいよ。ありがとう。」



「…っあ、ああ。」




レビュートは温度の上がる自身の顔を隠すように、紗季に慌てて背を向けた。



(…何だよ?妙に息苦しい…。)




僅に芽生えたレビュートの仄かな思いには、本人すら気付かなかったのだった。







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