若手と熟練者
登場人物が増えて、解りづらくて申し訳ないです;
「…てか、俺…じゃなくて私は思ったんス、ですが!」
声を上げたのは、20前後に見える緑色の髪の青年だった。
青年の声に、その場に苦笑が零れた。
「…いつも通りで良いよぉ~ユーチェロ君。」
「え?!…でも、失礼じゃないッスか?」
いや…と頭を振ったのはアルバンドだった。
「…いえ、話が進まない方が良くないかと…。」
「ん?そっか。分かったアル…宰相!じゃあ、続けるッスけど…。」
ユーチェロは一度咳払いをして、背筋を伸ばす。
「…俺は、年齢経験関係無く、ウォーター王殿が官吏にしたい者を選べば、良いと思うんスけど。」
はっきり告げられた言葉に、一瞬その場が静まった。
紗季は少し目を瞬き、若い官吏を見つめた。
ユーチェロも紗季を見返したが、見ていると微かに頬を赤らめる。
…ん?
それを不思議に思うが、今の状況では追求している場合では無い。
…官吏を選ぶ…ねぇ。
確かに簡単な方法だけど、私に区別出来ないしなぁ…。
それに、そういうのって自分の好みで選んじゃ駄目だよね?
紗季が考え込んでいると、痛い位に感じる視線に気付く。
…え?何か睨まれてる?
相手の赤い瞳を見返すと、官吏は頭を深々と下げてから口を開いた。
「…発言の許しを頂けましょうか、ウォーター国王陛下。」
紗季に対する敬意がありありと見られる官吏に、少しドキリとした。
今まで出会って来た中で、その様な人物は初めて出会う種類の人間だったのだ。
官吏はまるで手本の様な姿勢のまま、話し出した。
「私は、ユーチェロの意見に同感でございます。私共が何か申し上げたとて、至高の御方の考えの妨げになりましょう。」
…うわぁい!固っ!
固いなーこの人…。
紗季は、馴れ馴れしく出来ない部類の人種だと思いつつ、先ほどよりかは余裕を持ち、周囲に目を向ける。
紗季に聞こえるか聞こえないかの音で、レビュートの声が聞こえた。
「…どうする?」
彼の短い問いに、紗季自身は曖昧に目配せするに留めて置く。
どうするかって、私が聞きたいっての…。
紗季の言葉を待ってか、その場は静かな緊張感に包まれている。
とりあえず、二通りの意見が出たわけかぁ…。
「…じゃあ。」
紗季は頭で意見を整理しながら、話し始めた。
「…すぐには決められないから、少し時間をくれない?私も、何も知らない人を自分の側にすぐ置けないから。」
殊更ゆっくり言い終えると、官吏達から肯定の仕草が返された。
それに安堵しながら、紗季は続けた。
「それじゃあ、2つ目の取り引きね…。」
その言葉に、アルバンドが微かに目を伏せた。
「これは個人的な事…キリス・トレガーの罪を、赦して欲しい。それだけ。」
ひゅっと息を呑む音が聞こえた。
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