表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウォーター国創世記  作者: 雪香
3章―ケープラナ動乱編―
47/100

大国官吏と新米王

…正直吐きそう。




紗季は巨大な扉の前で、深く息を吐いた。




アルバンドが城内の上級官吏を呼び集めたのは、城の中央広間だった。




出払っている官吏達も多い為、全員とはいかないが多くの上級役人達が集まったらしい。




緊張で鼓動を速くしつつ、開けられた扉に足を向けた。




レビュートとローマネは、何も言わず後ろに着いて来た。




…まあ、1人よりは良いけど。




部屋の中には長いテーブルと、等間隔に椅子が置いてあった。




若そうな官吏が扉を開けた。




「…ウォーター国王陛下が参られました。」




「ご苦労。」




先ほど聞いたばかりの声に、紗季は足を進めた。



部屋には、アルバンド、他に見た限り上級役人が20人近く待っていた。





…帰りたい。




紗季が入ると、全員がそれぞれ礼をしたり、頭を下げて敬意を表した。




緊張を押し込め、紗季は空いている椅子に腰かけた。




レビュートとローマネは、紗季の後ろに立ち止まった。




紗季が座ったのを確認し、アルバンドが口を開いた。





「…此処にいらっしゃるウォーター国王より、ケープラナへ取り引きをしたいとのお話しを受けました。…重要な話しの為、皆さんにお集まり頂きましたが…。」





アルバンドの言葉に、金髪美少年が声を上げる。



「…うんと~?無知でごめんねぇ。ウォーター国って、どの辺りにあるのかなぁ?」




金髪美少年…ハンニエルの疑問に、他の官吏も同意を示した。




アルバンドが答えようと口を開きかけたが、ある人物の声に口を閉ざした。




「…あの、クデルト国の、あっ…前に位置する…新しい、国でしたっけ…?すみません…。」




ゆっくり途切れ途切れの話し方には、皆何も言わず内容に関心を持った。



「…何故それを?」




驚いた表情のアルバンドに、また自信なさげに返した。




「…各地にいる部下、から…連絡が、あありまして。ある日、突然…その、新しい土地が、出来たと…。」




不安そうな表情の官吏は、しかしその瞳には知性が伺えた。




「ふぅん。そうなんだ~。まあ、ナント君が言うから本当だろうね。」




ナントと呼ばれた官吏は、オドオドと頷く。




「…いえ。」





「それよりも、取り引きというのはどういったものですの?」




柔和な笑みを浮かべた女性官吏が、ゆったりとした口調で紗季に向ける。




…へぇ。女官吏も居るんだ。




内心感心しつつ、軽く息を吸い呼吸を整えた。




「ええ。この取り引きは、この国にも利点があると思うの。」




紗季の台詞に、官吏達の表情が変わった。




…緊張するって!



今までは少人数ゆえの紗季の度胸も、長年生きる百戦錬磨の官吏達の視線に汗をかいた。




……やるしかない。




「…私は、この国の国民を、ウォーターに貰い受ける。」




紗季が言い切ると、目を見張る者、口を開けた者、表情を固くする者が見えた。




若そうな官吏には、唾を呑み込み者もいる。




そんな中で、ローマネは面白そうに瞳を煌めかせた。



(…さあて、どうするのかのう?)




一拍の静寂の後、アルバンドの隣から声が上がった。




「…それは願ってもない申し入れですが〈取り引き〉ゆえ、勿論…貴女様から交換条件があると…?」




30代前半頃の、理知的な男性が淡々と言い終えた。




男性の声には誰も口を挟まず、皆紗季に視線を戻した。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ