ある室内での会話
※主人公出ません。
短めです。
「…ファウル将軍からの報告は、まだきておりませぬな。」
鋼鉄の様に固い声音に、大分低い位置から返事が返された。
「…そうだねぇ~?やっぱりクデルト王を説得するのは、ファウル君じゃ駄目かもねぇ。」
金色の巻き髪に、天使の様な相貌の美少年が書物を捲る。
美少年の言葉に、子どもの身長程差のある人物は眉を寄せた。
「…む。確かに、ファウル将軍は…。」
そこまで言いさし、口を閉ざした。
ケープラナ国国立軍総将軍ファウル。
正義感を持ち、忠誠心の厚い好人物だが少し暴走しがちである。
真っ直ぐ過ぎる為、取り引きは上手くない。
しかし、今は他に相応しい人材が居なかった。
「…キリス君がいればねぇ。」
ポツリと呟いた美少年に、青年は瞳に底冷えする様な光を宿した。
「…例え生きていたとて、赦せはしますまい。」
美少年は特に表情を変えず、興味深そうに微笑んだ。
「…命を終える道を選んだのは、王自身なのにぃ?」
「…関係ございませぬ。天より選ばれた尊き方に刃を向けた時点で、あやつは深き罪を負った。」
静かな怒りを宿す青年に、美少年は軽い口調で返した。
「そっかあ。まぁ、シュラ君は真面目だからねぇ~。
「…ハンニエル様は、トレガーを許せるのでございますか?」
「…ふふ。さぁてね?…僕の考えを言っても、分かるのはモリス殿くらいじゃない?」
ハンニエルののんびりとした口調に、青年…シュラは怪訝そうな表情を浮かべた。
「…左様ですか。」
(…どうせこれ以上問うても、答えは期待できまい。)
シュラは長い前髪をかき揚げ、紅の瞳を伏せた。
(…1人でも多く、民を救いたいものだが…)
その時、部屋の扉が叩かれた。
「…はぁい。だれ~?」
ハンニエルの声に、若い官吏の緊張した声が返された。
「…お忙しい中大変申し訳ございません!…宰相閣下が、今すぐ高官を呼び集めるようにと…!」
ハンニエルが小首を傾げた。
「…アルバンド君がぁ?」
「…はっ!」
高官が集まる場所は、常日頃中央広間が使用される。
シュラは軽く思案する様に顎を手に乗せたが、直ぐに扉に顔を上げた。
「…承知した。宰相に参ると伝えよ。」
「…はっ。」
「僕も~。」
官吏が急いで廊下を駆けて行くのを耳にし、ハンニエルは椅子から立ち上がった。
「…じゃあ、行ってみよっかぁ。」
「…はい。嫌な話しで無ければ良いのですが…。」
二人の官吏は、廊下を早足で進んだのだった。
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