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ウォーター国創世記  作者: 雪香
3章―ケープラナ動乱編―
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気付かぬ変化


紗季の変貌からしばらく、アルバンドは黙り込み考えに耽っている。


時間が経ち、紗季も通常の雰囲気に戻っていた。


紗季は気付いていないが、影から見ていたローマネの見る目は変わっていたのである。


今までは、面白半分に紗季を見ていたが、瞳には探る様な光が生まれた。


また、レビュートは驚いてはいたが、態度自体に変わりはない。


王という存在を理解していないという点もあるが、彼の元来の性格の為である。


アルバンドは自国の王の王気に触れずに過ごしてきた為、動揺を隠せずにいた。


思考を重ねても、良い案が全く思い浮かばない。


とうとう痺れを切らした紗季は、悩むアルバンドに詰め寄った。

「…もう!時間が無いってのにいつまで待てば良いの?…貴方宰相でしょう!すっぱり返事をしてよ、一体何年官吏をしているわけ?」


詰め寄られたアルバンドだが、女相手の拒否反応が出る所では無く、紗季イコール王という方程式が浮かんだ。


アルバンドは、なんとか後ろに下がらず小さく答える。


「……20年です。」


…?意外と短いんだ?

ケープラナって700年なのに…。


「…じゃあ、実年齢は40歳くらい?」


上級役人以上は、神書に書かれてから歳をとらない。


アルバンドは直ぐに首を振った。


「いや、24歳です。」

「へぇ若いんだ……って、はぁぁ?!」




目を丸くした紗季に、アルバンドは少し決まりが悪そうに目を逸らした。


「…俺は、貴族の子弟でしたので4歳から城に上がり、運良く前宰相に見い出され政を師事されました。」


そして、深くため息を吐く。


「…神書に加えられたのは22歳、2年前でした。」


それを耳にして紗季は眉根を寄せた。


…本当に若いんだ。


官吏を貰いたいと思った時、実は宰相も欲しかった。


しかし、あくまで経験の長い人間だ。


「…そう。前宰相はどうしているの?」


紗季の質問に、アルバンドの瞳に一瞬影が過った。


「…今は、宰相では無く王の側近となっております。 ですが、まだまだ政に関しては力を持っておられます。」

なんとなく気落ちした様なアルバンドに、紗季は薄々勘づいた。


…自分の能力への不安。


前宰相への劣等感コンプレックス


若いから仕方ないのかもだけど。


ふむ、と紗季が思考しているのを見て、何を思ったかアルバンドは顔を引き締める。


「やはり…俺では役不足ですよね。」


「…え?」


…何が??


不思議そうな表情の紗季に、アルバンドは勢い良く背を向けた。


「…暫しお待ち下さい!上級役人方を連れて参ります。」


「え…ちょっと、待っ…。」


固まる紗季を他所に、アルバンドは駆けて行ってしまったのだった。






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