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「…………おお。」
紗季は一瞬固まり、小さく感動の声を洩らした。
「…あ?何だよ…。」
遊び始めた紗季に、じれて出て来たのはレビュートだった。
レビュートの不審げな表情に、紗季は思わずにまにまと笑う。
「…だって、私の名前呼んで来たの始めてでしょ?」
その言葉に、レビュートはハッとして目を逸らす。
「…別に、呼ぶ機会が無かっただけだろ…。」
「…ふぅん。」
…大抵は『おい』って呼ばれてた気がするけど。
「それより…。」
レビュートは、呆然としているアルバンドを横目で見た。
「…遊んでる暇ねぇだろ。」
「…まぁね。」
図星をつかれて、紗季は目を泳がせる。
そこで気持ちを切り替える為に深くため息を吐き、アルバンドから距離を取った。
「…ケープラナ国宰相ライトーク。話をしましょう。」
ゆっくり、だがはっきり告げたそれに、アルバンドは一瞬で焦点が合い、直ぐ様身を起こす。
立ち上がったアルバンドは、レビュートを見て少し目を細めたが、すぐに紗季に視線を向けた。
「…ウォーター国国王、2つの取り引きとは?」
キリリと引き締まった表情により、良い緊張感がその場に生まれる。
…うん。よし…。
「…まずこの国の民を私が貰いたい。」
アルバンドが息を呑んだ。
「王の居ない国は成り立たない、でも民の居ない国も国じゃない。丁度良いから、貰いたいの。」
アルバンドは唇を強く噛んでから、その場に片膝を着いて深く礼をする。
「…そうして下さるのならば、お願いしたい。受け入れてくれる国を探しておりました!」
アルバンドの真っ直ぐな視線を受け、紗季も真剣に見返した。
「…わかった。…それと取り引きだから、交換条件があるけど。」
「…何なりと。」
紗季は指を2本立てる。
「これが2つね?
1つ目は、うちにはまだ政に詳しい人が居ないから、官吏も欲しい。」
アルバンドが固まった。
「…?駄目?」
「はい。…承知しました。」
考え込む様な表情のアルバンドを不思議に思いながら、紗季は続けた。
「じゃあ、2つ目ね。
2つ目は、キリス・トレガーの罪を許すこと。これが交換条件。」
「……っトレガー殿を?…何故、貴女が…。それに、生きていたのか…。」
…何?
私が知ってるかって…?
アルバンドは額から汗を一筋落とす。
「…もし。それを承知出来ないと申したら?」
紗季は全く表情を変えず答えた。
…私、そんな優しい性格じゃないし。
一応王だから、官吏相手に妥協できない。
「取り引きはしない…。元々はケープラナとうちは、無関係だし受け入れる理由は無い。 取り引きをしなくても、大変だけど別に平気。」
アルバンドは眉を潜めて俯く。
「………っ。」
…でも。
「…でも。」
紗季の声にアルバンドはそっと顔を上げた。
「…でも、ここの民が私に助けを求めてくれた。だから、見捨てたくはないし、貴方の真剣な態度を邪険には出来ない。」
アルバンドの顔には、驚きと戸惑いが窺えた。
紗季は既に、考えず本能で語りかけていた。
その時、周囲の空気が変化する。
紗季の瞳は金に輝き、思わずひれ伏しそうな威厳が漂っていた。
それを紗季は気付かず、ただアルバンドを見据える。
「…宰相。貴方がするのは、承諾するのみ。さあ、答えを。」
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