表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウォーター国創世記  作者: 雪香
3章―ケープラナ動乱編―
43/100

取り引きしましょう



「…ウォーター国?」


アルバンドは紗季の台詞を繰り返した。


「それに……王だと?」


そう…と紗季は静かに頷く。

少し説明した方が良いとも思い、簡単なウォーターの情報も付け足す。


「…ええと、5、6日 かな?それくらい前に出来た国よ。場所は海を隔てた場所。クデルト国の前にある。…私は、その国の王。」


アルバンドは何か考える様に俯き、紗季に戸惑いの視線を向けた。


「…簡単に信じられない。何か証明出来る物はあるのか?」


…あー

そうきたか…。


相手の反応に内心げんなりしながら、懐の厚い書物を取り出した。


「…これでどう?」


「…なんだ、それは?」


「神書。」

はっきり発した言葉に、アルバンドは眉を上げて紗季の手元を凝視した。


「………いや。言われても、俺は神書を実際拝見した事が無い。」


そう言って黙ったアルバンドは、小さい息を吐く。


「…悪いが俺には時間が無い。他に無ければもう良いか?」


…はい?


こっちだって、遊びで来たわけじゃ無いんだけど!


踵を返そうとしたアルバンドに、紗季は口を開いた。


「…確かに物的な証拠は無い。でも、私はケープラナの民に頼まれたから、貴方に会いに来たの。」


「?」


アルバンドは足を止め、眉を寄せる。


「…民に?」

「そう。現在のこの国は、小さな町や村から酷い被害に合い、国も手が回らないのでしょう?だって、王の居ない国は一年経たず滅びるから。」


アルバンドは息を呑み、唇を噛んだ。


「ああ。そうだ。」


紗季はアルバンドに真っ直ぐ目を向けた。


「私なら、助けられる。」


「…本当に、王なのか?」


アルバンドの表情に、初めて違う感情が生まれつつある。


しばらく瞳が交差し、アルバンドの顔つきが変わった。


先ほどまでの半分不審がっていた表情は無く、宰相としての振る舞いを示す。


「先ほど、取り引きをしたい…と仰っていたが?」


…んん?

あれ。食い付いてきた?


紗季は不思議に思いながら、自身も姿勢を正した。


「そう。2つほど。」

…私がここに来るまで考えていた事。


紗季は逃がさないとばかりに、アルバンドに足を進めた。


アルバンドはやはり、身体を揺らして後ずさる。


「ちょ、近付かないでくれ!」


…はい?


紗季は勿論それを聞かず、最後は走り出しアルバンドの腕を掴んだ。


「宰相なら逃げないで聞きなさい。」


至近距離で鋭い視線を向けた紗季に、アルバンドはまた顔を朱に染めて瞳を揺らす。


「…ねぇ、聞いてる?」


紗季が更に顔を近付けると、アルバンドは突然紗季の腕を振り払った。


驚く紗季を尻目に、アルバンドは沸騰しそうな顔を腕で隠し、壁に身体を寄せて座り込んだ。


「…っすまない。俺は、その、女に近付かれるとどうしたら良いか、分からないんだ…!」


…はあ?!


「何それぇ!」


思わず声を上げた紗季は、口をあんぐりと開いた。


…ちょっとそれ。


面白いんだけど。


座り込むアルバンドに、紗季はニンマリ笑みを浮かべる。


静かに近付くと、アルバンドの肩にポンと手を置いた。


「…これも駄目?」


「…っひぃぃ!!」


鋭い目を上げ、端正な顔立ちを崩すアルバンドに、紗季は楽しくて仕方ないと身体に触れる。


「はい。」ポン。


「っ!!」


「こっちは?」トン。


「…ぎやああ!」

アルバンドは半分白目になり、精根尽きそうになり始めていた。


その時、その場に呆れた様な声が掛かる。


「…お前いい加減にしろ、サキ!目的忘れてねぇか?」



















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ