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ウォーター国創世記  作者: 雪香
3章―ケープラナ動乱編―
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宰相アルバンド

外見は20代半ば頃の、吊り目の青年だった。


「どうかしましたか?」


青年が周りの官吏達に問うと、すぐに官吏達が口を開く。


「…この案件ですが…」


「…都市部の被害を…」


「災害の悪化が…」


口々に言い募る官吏に、青年は熱心に聞き手元の資料を見ながら答えていく。


官吏達は話が終わるとすぐに、忙しそうにその場から立ち去った。


官吏達が居なくなった後は、青年は真剣な表情で手元にあった紙に、筆で何か書き付け始める。


集中している青年を見て、紗季は少し思案するが最後は決心した。


…聞いてみるか。

レビュートとローマネに目配せすると、レビュートも紗季に着いて行こうとした。




しかし、ローマネがレビュートの肩を掴んで引き留めた。


「…何しやがる、魔族。」


苛立ちを浮かべ眉を寄せたレビュートに、ローマネはただ首を振る。


「いきなり儂とお主も一緒では、あまりに怪しいじゃろう。少しミズハラサキに任せてみよう。…何かあれば、出ていけば良い。」


レビュートはその言葉に仕方なく留まる事にした。


青年は、集中している為、近付く紗季に全く気付いていなかった。


「…ねぇ?」


「!」


声を掛けると勢い良く顔を上げ、紗季を視界に入れると凝視する。


「…!だ、誰だ?」


驚いて目を見開く青年に、紗季はゆっくり近付いた。


「…ええ。少し話が…。」


「っ!」

紗季が近付く度、青年は大袈裟に肩を揺らして後退る。


…何なの?


青年は慌てながら手のひらを紗季に向けた。


「そ…そこまでにしてくれ!それ以上は困る!」


「何で?」


不思議そうに聞きながらも、更に距離を縮める。


青年はとうとう背を壁につけ、視線を横に逸らした。


「…頼む、それ以上は…!!」


必死な青年に、紗季は不思議に思いながら青年を観察する。


…ん?もしかして女嫌いとか?


でも、その割りになんか顔が赤い様な?

耳も真っ赤…。


紗季は青年の制止を無視し、顔を近付けた。


すると、青年の顔が茹で上がった蛸の様に、みるみる赤く染まる。

「…っ!近い近い近い!もうやめてくれ…。」

…しょうがないなぁ。


仕方ないと言う様に嘆息して、少しだけ離れる。


青年はやっと安堵するが、やはり警戒して距離をとった。


まだ赤い顔に、緊張を滲ませて紗季を見つめた。


「…それで、俺に何の用なんだ?」


「うん。」


紗季は頷くと、青年を真っ直ぐ見据える。


「…貴方がこの国の宰相で良いの?」


紗季の言葉に、青年は先ほどとは変わり顔色を戻す。


「…ああ。ケープラナ国二代目宰相、アルバンド・ライトーク。確かに現宰相をしている。」


…ライトークね。


アルバンドの言葉が終わり、今度は紗季が口を開いた。


「…私は、水原 紗季。ウォーター国の王。宰相の貴方と取り引きをしにきたの。」





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