ケープラナ城
荘厳華麗、でかでかとそびえ立つ城に、知らず喉が鳴った。
今更だけど、突然訪問して大丈夫だろうか…。
門番の兵士と目が合うと、不審そうに見つめられた。
当たり前か…。
普通の女、獣人、黒装束。私でも怪しいと思うし。
レビュートは城を横目で見ている。
「…早く言わねぇのか?」
え。
「…私が?」
「当たり前だろ!」
半分呆れの混じる物言いに、紗季は納得して門番の前まで近付く。
「…あの、少し良いかしら?」
王である紗季が、敬語を使わないのは当たり前であるが、勿論知らない門番は怪訝そうに眉を寄せた。
「…何用だ娘。」
…確か、王族は役に立たないんだっけ?
「ええと…宰相か、話の分かる官吏と話がしたいのだけど。」
その紗季の言葉に門番は無表情で答えた。
「今は陛下が崩御なさり、宰相閣下方々は多忙だ。小娘一人、誰が通せるか。」
それはそうか…。
まあ、めちゃくちゃ怪しいしね。
アポ無しだし。
紗季は適当に返事を返し、レビュートの居る場所に戻る。
「…ん。やっぱ駄目みたい?」
「あ?そうか…。」
二人で顔を見合せていると、ローマネが口を開いた。
「…まあ、仕方ないじゃろう。お主は外見だけ見ると、普通の女人にしか見えんからのう。」
あー。
「どうすれば良いと思う?」
困った紗季の様子に、レビュートがチラリと城に目を向ける。
「…門番を殴って城に入るとかはどうだ?」
いやいやいや!
紗季が口元を引きつらせると、今度はローマネも城を見つめた。
「…いや、流石に不味いじゃろ。裏から入るのはどうじゃ?」
…どっちもどっちですが。
三人の様子に、門番は不審そうに視線を向けてくる。
紗季はそれを察し、二人を連れて城の裏に回った。
結局話し合いの結果、忍び込む事に決めたのだ。
なるべく兵士の少ない場所を見つけ、レビュートが塀の上に跳び乗る。
中の様子を確認したレビュートが合図を出し、ローマネが紗季を抱え飛び移った。
「…行くぞ。」
「うん。」
「うむ。」
城に入ると、人通りの無い廊下で立ち止まる。
「とりあえず、宰相を探すんで良いんだな?」
周りを隙無く見渡しながら、レビュートは紗季に目を向けた。
「うん。できればね?まあ、すぐに見つからないと思うけど。」
話し終えると、すぐに廊下を静かに移動し始めた。
そんな紗季の後ろを、ローマネは黙って着いて行く。
(…もし宰相に会っても、王だと分からせるのは難しいじゃろう。…まだミズハラ サキは王気が使えんようだしのう。)
王気…確か、王のみ使える気迫。瞳に黄金を宿し、身体に気迫を纏う。
大国の王ほど自由に扱える。
儂が見たのは、クデルトの王だったが…。
ローマネの思いには気付かず、紗季はどんどん城の内部に足を進めて行く。
…なんか、大国なのに人が少ない気がするなぁ。
王が亡くなったせいなのか…?
「…宰相閣下!」
紗季の思考が止まった。
突然聞こえた声に顔を上げると、複数の人間が見える。
…誰が宰相だろう?
そこを見ていると、その場の最も若そうな青年が口を開いた。
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