話しましょう
レビュートは黙り込んで紗季を見た。
紗季はなんとか感情を抑えようとしたが、身体は震えて鼻声だった。
あ~…
駄目だ。
今だったら、嫌な事言っちゃいそう…。
その時、静かに見ていたローマネが口を開く。
「…お主は、王なのか?」
…あ、バレたか。
特に隠しているつもりでは無かった為、あっさり答えた。
「…そうだよ。」
ローマネは、ふむと首を傾げる。
「…現在世界の国は5つ。ケープラナ、クデルト、フラワ、ヨッツア、チェイダー。 そのどれなのじゃ?」
…5つしか無いんだ。
ローマネの説明に意外に思いながら、紗季は「それは」と頷いた。
「…私の国は、ウォーター。まだ何もない新しい国だよ。」
その言葉にローマネは初めて表情を崩す。
「…真か。世界に新しい国が生まれたのか…。」
感慨深そうなローマネとは違い、レビュートは何やら難しい表情を紗季に向けた。
「…お前は、王になりたくてなったんじゃねぇのか?」
レビュートの疑問に、紗季はまた感情が波打つのを感じる。
「…な訳あるか!この世界の常識は知らないけど、私は王になりたいなんて一度たりとも言ってない!」
「……そうか。」
(苦労知らずの甘い奴じゃねぇのか…)
レビュートは、更に話を続けた。
「…今は、どうなんだ?」
「何が?」
「…王になりたくねぇのか?」
レビュートからの思いもよらない言葉に、紗季は口をつぐんだ。
今は?…今?
ふと考えた。
この世界に来て、軽く5日以上は過ぎたかな。
まだまだ考えるのには足りない時間である。
でも、そうだなぁ。
紗季は少し微笑んだ。
「…分からないな?」
「…は?」
レビュートは口をポカンと開けた。
その表情に紗季は可笑しくなりながら、ゆっくり瞬きをする。
「分からない。…なりたいなんて言う前に、既に私は王だったし。
…でも、他の国を見てちょっと思った事はあったかな。私は、獣人を奴隷にしたくない、政治を臣下に任せきりにしたくない。 …これは、自分が王じゃないと出来ない事だよね。」
レビュートは邪魔をせず、相槌を打った。
話が終わると、深い息を吐きバツが悪そうに頭をかいていた。
「…あの、よ。」
歯切れの悪いレビュートに紗季は首を傾げる。
「何?」
「いや…あの、くそ!………うっせえ!何でもねぇ!」
結局舌打ちをして後ろを向いたレビュートに、紗季はますますハテナを浮かべた。
何がしたいんだこの子は?
何やら、ローマネは妙にニヤニヤしていたが。
紗季が屋敷から出ようかと思い至った時、部屋の入り口が勢い良く開いたのだった。
「…あの、畏れながらお願いがあります!」
入って来たのは使用人の服装の少女だった。
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