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ウォーター国創世記  作者: 雪香
3章―ケープラナ動乱編―
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それから7日目

紗季が口を開いた時、突然地下牢全体が揺れた。


何事?!


驚いて周りを見たが、原因が分からず戸惑っていると、衣服を直したローマネが天井を見つめていた。


「…上じゃな。」


「え…。」


紗季の声に、ローマネは直ぐに頷く。


「どうやら、これは自然現象ではなく、人為的なもののようじゃな。…上階で騒ぎが起きとるのかのう?」


ええ~!


紗季の驚きとは反対に、ローマネは落ち着いた様子で紗季に向いて来た。


「…では、続きを行うか。」


そう言うと、また紗季を抱き締める。


…良いのかなぁ?

まだ上から音がするけど。

しかし、自力で牢から出られない為、仕方なく動かず待った。





しばらくそうして待ち、なんとなく眠気が襲って来た時、ローマネが顔を上げた。


「…もう良いぞ。」


…本気で寝そうだった。


離れたローマネを見ながら、紗季は身体をほぐす。


「で?どうするの?」


首を傾げた紗季に、ローマネは少し笑みを浮かべた。


「うむ。……こうじゃ。」


言い終えた瞬間、ローマネは牢の一部に手で触れた。

そして、聞き取れない声で何か呟き、格子を何度か擦る。


すると擦った場所からみるみる内に、ビクともしなかった格子が砂と化していく。


…おお~すご!


紗季がその光景に釘付けになっていると、全てを砂にしたローマネが振り向いた。


「…これで出られるぞ。」




ローマネの言葉に、紗季は表情を明るくした。


「本当に?…ありがとう!…でも、貴方はどうするの?」


どっか行くのかな?


ローマネは何故か一瞬止まり、思案顔になる。


「…ふむ、特にないのう?強いて言うなら、魔術が必要な輩の所へ行くくらいじゃな。まぁ、急ぎじゃないがの。」


…いいなぁ。

気楽そうで。


そう思いながら、地下牢屋を過ぎて階段を登っていく。


上から聞こえる喧騒が、次第に近付いて来る。


少し距離のある階段を登り終わり、出口らしい扉に手をかけた。


扉を開ける直前、紗季は思い出した様にローマネを振り向く。

「…そういえば、自己紹介して無かったよね。私は、水原 紗季。貴方は?」


紗季の言葉に、ローマネは軽く頷いた。


「…儂は、魔術士ローマネじゃ。」


…職業つける必要なくね?


不思議そうな紗季に、ローマネは言いたい事を察したのか、紗季に目を向ける。


「何か言いたそうじゃな?」


あ…気付かれたか。


「うん。いや、どっちでも良いけど。…何で職業も名乗るのかと思って?」


その疑問に、ローマネは微かに苦笑した。


「ああ。まあ…………うむ。秘密じゃ。」


言葉を濁したローマネに、紗季は特に追求せず視線を戻す。


ま、いっか。

そんなに興味ないし。

それより、時間どれくらい経ったんだろう。

そして、扉をゆっくり開けて覗いた。




「………。」

そして、ゆっくり閉めた。


深い溜め息を吐いた紗季に、ローマネは首を傾げる。


「どうした。開けぬのか?」


「…わかってる。」


仕方なく、今度は思いきり扉を開け放った。


「…レビュート!」


見失っていた狼人に向かい、紗季は呆れまじりに叫んだ。


その頃には既に日が変わっていたのだが、紗季は気付いていなかった。








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