孤独な1日目
…はい私は今1人です。
それが何か?まあ、独りっ子の鍵っ子だから慣れてるよ?お化けの類い平気な人だしね。
ふと目が覚めたごく平凡な女子高生…水原紗季は、死んだと思っていたというのに見も知らぬ大きな城の前にいた。思わず周りを見渡すと、四方を山に囲まれた肥えて広々とした大地が視界に広がる。
…人っ子1人見当たらない。ねぇ、誰か聞いても良いでしょうか?これって噂に良く聞くトリップ??なら…何故1人なのさ!
普通なら都合の良い美形とか、神様らしい存在が近くに居
て「貴女を待ってました~」とか言って、歓迎されるもんじゃ無いの?!服装は着ていた高校の学生服のまんまだし、持ち物は鞄1つ。顔とか体には変化は無さそう?かな。
足下まで視線を下げていくが、事故に合うまでの記憶通りの姿であり別段変わりは無い。とりあえず何もしないよりは良いだろうと、城へと足を向けていく。
城の中を見て回ったら、調理場の近くに食料庫は見つかった。どうやら中には食糧もあるらしく餓死の心配はたぶん無い。
あと、本がたくさん置いてある図書室みたいな場所もあったな。まあ…私は読書嫌いだから良いけど。私、これからどうすれば良いんだろう?ワケわかんない!ずっとこうだったら、普通に死んでた方がマシなんだけど?
苛立ちながら少し落ち着こうと思い、城の食糧庫にあった食べ物を少し食べてみた。手に取った林檎に似た赤い果実を思い切って一口かじる。
毒は無いみたい…。普通に美味しい。
一つ食べ終えて空腹を満たし、気分が少し落ち着いた頃には日が沈みかけていた。夕陽に見掘れて窓の外を見ながら歩いている途中、執務室と扉に書かれた部屋が見つかった。他の部屋より豪華に見える扉を開けると、室内には木製の大きめな机と椅子がある。
「…何の部屋?てゆうか、執務室って日本語で書いてあったな。不思議…。」
机の上に置いてある1枚の紙に気が付き、目を止めた。
何々…?
『この城及び四方の山々までの土地は、貴女のものです。場所以外は自由に設定して下さい。応援しています。
まずは、国名を決めて下さい。』
そこまで読み終えると、机を勢いに任せ殴っていた。
「…意味わからん!!」
何?…ようは1人で国作れって事?やったね!私女王様だあ!…とは思えない間違っても。せめて説明役1人下さい。例えどんなに不快でも、生理的に気持ち悪い人でも良いです!誰か!!切実に!!
ぐったりしながら紙を握りしめ、寝台のある寝室らしき部屋を見つけて足を進める。目に入った衣装箪笥の中の衣服を取りだし、寝巻きとして適当に身に付けた。
…良いや寝よう。…あー風呂入りたい。お風呂だけは無かったんだよね。トイレっぽいのはあったけど。
布団を頭まで被り落ち着かないまま、ぎゅっと目を閉じる。
…もう帰りたい。
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