狐対狼
累計PV二万超え感謝です。
「…君さぁ、聞いてれば何なの?助けて貰った上に仕事は受けない、弟が言うなら考える…何様?」
ネルビアは口元の笑みに対して、目元は冷たい光を宿している。
そんなネルビアに憶さず、レビュートは眉間の皺を寄せた。
「…お前には関係無いだろ、狐人。」
ネルビアはスッと笑みを消す。
「ああ、関係無いね?俺がムカつくだけ。…獣人を助けようとしたり、まして神書に正式な官吏として名を加えられた恩を感じない狼野郎なんかねぇ?」
ネルビアが言い終えると、レビュートは剣呑に
瞳を鋭くした。
「お前に何が分かる…」
目に暗い光を宿したレビュートを、紗季は黙って見つめる。
人間に…何かされたのは確かかな?
別に聞こうとは思わないけど…。
二人の不穏な空気に、サイラが慌てて間に入った。
「ネルビアさん!兄貴も何か事情があるんスよ?それに、今は身体も酷い状態ですし…。」
ネルビアにそう言い、今度はレビュートの方へ向く。
「兄貴も、俺がウォーターに残るからって、残らなくて良いんだ!兄貴の意思で決めてくれ。」
サイラから諌められ、二人は口を閉ざし何か考え込む様子を見せる。
しかし、すぐにまた睨み合いを始めた。
「…てゆうかさぁ、 どんな事情であれ、その態度は気に入らないなぁ…。」
「サイラ、ここに残るのは、お前の為でもあるが俺が考えた結果だ。」
お互いの言葉に、更に剣呑な空気が増した。
サイラとセラが困惑している内に、どちらかが手が出そうな空気が漂う。
面倒くさい…。
紗季にとっては、実際どちらでも良い事だった。
…でも子どもの喧嘩では無い。
簡単には止められない事だとも思う。
二人の言い合いは続き、紗季は見ている内に口元に笑みが浮かんでいた。
それに気付いたセラが、不思議そうに声を掛ける。
「…紗季様?」
「ん?」
紗季が首を傾げると、セラが小声で囁き掛ける。
「…笑っている場合じゃないですよ!」
ああ、と紗季は頷いた。
「…嬉しかったんだ。」
紗季の放った言葉に、言い合いを続けていた二人がピタリと止まる。
サイラも視線を向けた。
「…何がですか?」
セラの疑問に、紗季は苦笑を浮かべ微笑む。
だってさぁ…
「…この国って、最初の日は私以外居なかったから、そういう言い合いすら出来なかったんだよね。」
ネルビアは、みるみる顔から怒りを消した。
私は…
紗季は続けた。
「私は、意見のぶつかり合い事態悪い事じゃないと思う。 お互いを知ることが出来る方法の一つだしね?…レビュートは、居たければ居れば良いし、嫌なら帰れば良いと思う。」
むしろ帰れ。
喧嘩の仲裁面倒くさい。
紗季の言葉にレビュートは口をつぐんだ。
紗季は、それを見ているネルビアに向いた。
「…ネルビアはありがとう。気持ちは嬉しかったよ。」
ネルビアは頭を掻いて、苦笑する。
「…いや、空気悪くしてゴメンね?」
紗季は笑って首を振った。
「ううん。気にしてないし?」
むしろ、私が言いたい事も言ってくれたしね。
とりあえずは言い合いが収まった為、話しを進めた。
「じゃあ、サイラの役職はまた考えるとして…。早速、私とセラはする事があるの。」
紗季が全員を見渡し、話し始めた。
.




