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ウォーター国創世記  作者: 雪香
2章―クデルト道中編―
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国に戻りました



あの妙な夢から覚めた朝。

後から起きたセラに朝の挨拶をすると、旅支度を整えた。

と言ってもたいした荷物なんて無いが…。


声を掛けてみたがサイラの兄は、やはり何の反応も無い。


皆で朝食を摂り、宿から出るとセラが周囲を見渡し羽を広げた。


バサッ


…おお、圧巻だなぁ。


その様子を見れば、鳥人には人が10人は乗れるという意味が分かる。

羽は大きく丈夫、横にも幅広い。

紗季、サイラと兄、背の高いネルビアが乗り込んだ。

全員が乗り込むと、セラはすぐに空高く上昇し始め、この国へ来た時と同じ様に、凄い速さで元の場所を目指した。


紗季はセラの体調を気にしていたがそれほど時間はかからず、クデルトの見える海辺に辿り着けたのである。


海辺に着くと、紗季は皆に顔を向けた。


「じゃあ、これからウォーター国に向かうから、着いて来てね。」


その言葉に全員が肯定を返す。

そうして歩き始めた時、セラがそういえば…と自分の斜め前を進むネルビアを見た。


「…今さらだけど、何であんたまで一緒にいるの?」


セラの疑問に、ネルビアは微笑んだ。


「いや、だってねぇ。サキちゃんと一緒に居たいからね。」


ネルビアの動機に呆れ、セラはまなじりを吊り上げた。


「そんな事の為に?サキ様、この男帰らせましょう今すぐ!」


「あっははーセラって厳しい~。鳥ってちょい神経質だよねぇ?好きな雄に嫌われるよぉ?」


軽い口調だが明らかに相手を逆撫でする言葉に、セラは怒りに身体中の温度が上がるのを感じた。


「狡猾でズル賢く、冷徹な狐なんかに言われたくないわ!」


言い争っても、私には違いが良く分かんないけどね。


ピリピリした雰囲気の二人に、紗季は口を挟まず放って足を進めた。


…それよりサイラが兄を案じてか、厳しい顔つきで黙っている事が心配。


四方の山を越えた頃、紗季はずっと硬い表情のサイラに向いた。


「そうだ、サイラのお兄さんの名前は?」


「兄貴の?」


サイラは不思議そうな表情を浮かべたが、すぐに口を開いた。


「レビュートだ。」


そっか…と頷き、紗季は思わず懐の神書を撫でる。


…これしか方法が無いなら。


山を越えると、何もない肥えた土地が広がっている。


「…ここが、ウォーター国だよ。まだ民は居ないんだ。」


紗季の言葉に、一同は周りを見渡す。

ネルビアは一度空気を吸って吐くと、笑みを浮かべた。


「うん。…空気が澄んでいて、良い所だね。」


サイラとセラは興味深そうに、静かに辺りを見ている。

皆の感触の良さに、紗季は安堵して城を目指した。

城まで着くと、紗季は黙って城門をくぐった。


それを見て、ネルビアは何かを察したのか紗季に視線を向けた。

サイラはいぶかしげに紗季を見た。


「…まだ、門兵も居ないのか。良いのか、勝手に入って?」


セラはそれに何かを言おうとしたが、やっと足を止めた紗季に制されて口を閉じた。

皆に振り返り、紗季は1人ずつに目を向けた。


「…城に着いたら言おうと思ったんだ。言うのが遅くなったけど、この国の国王、及び城主は私。ウォーター国王、水原 紗季です。よろしく。」


…距離取られるかな?


沈黙が降りて気まずく思い、顔を見れずに視線を下げていると、誰かの動く気配を感じた。


「…ありがとう。」


その優しく響いた声に紗季が顔を上ると、ネルビアは口元を綻ばせた。


「新しい国の王が君で良かった。…クデルトに言って欲しい事を言って、奴隷を否定した。どれだけ嬉しかったか…ありがとう。」

心からのネルビアの声に、紗季はゆっくり瞬きをする。


…こちらこそありがとう。

私を認めてくれて。






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