鳥人娘と再開
クデルト国王が居なくなり、その場は片付けに皆精を出していた。
サイラと紗季は、すぐに獣人の元に駆け寄った。
「兄貴!」
獣人はサイラの声にやはり反応は無く、ただその場に立って前を向いているだけである。
それにサイラは眉を寄せ、紗季はじっと獣人の様子を見てみた。
「サイラ。」
紗季の声を聞き、サイラは慌てて表情を明るくする。
「…あっ!気にすんなよ?紗季は悪くないからな…他の方法を探そうぜ!」
…いや、無理してるの分かるって。
「私が治す。」
思ってもいなかった紗季の言葉に、サイラは目を見開き身体を固くする。
「…できる…のか?」
微かに震えた声音に、紗季ははっきり頷き返した。
「任せて。」
今度は、私が貴方を助けるから。
サイラは一度唾を飲み込み、黙って兄を背に負った。
それでも獣人はサイラに掴まりもせず、されるがままだった。
「…どうすれば良い?」
真剣な眼差しのサイラに、紗季もまっすぐ見つめ返す。
「…まずは、ネルビアの所に戻る。…そしたら、ウォーター国に行く。それからだね…。」
ウォーター国…とサイラは口に出し繰り返した。
二人はすぐ行動を開始し、ネルビアの居る場所に早足で向かい、すぐに着いた。
「…あれぇ?サキちゃんおかえり~。」
そこには、のんびりと椅子に座るネルビア。
そして…
「…サキ様!」
「っセラ!」
鳥人のセラが居た。
紗季はセラを見つけると、すぐにセラに走り寄る。
「セラ!ごめん…私が、クデルトに連れて行ってなんて、言ったせいで!」
いいえ…とセラはゆっくり首を振った。
「…そこのネルビアに聞きました。ずっと、紗季様は私を助ける、と言っていたと。…普通の人間なら、獣人の身など放って置くのが当たり前なのに。…嬉しかった。」
瞳を潤ませて微笑むセラに、紗季も思わず涙を堪えた。
こっちこそ、ありがとう。
「…セラ、ごめん。トレガ-を探すの少しだけ、待ってて?」
少し困った表情の紗季に、セラはサイラを見つけて何かを察して頷いた。
「分かりました。紗季様は私を見つけてくれましたから、信じます。」
セラの言葉にホッとして、紗季は今までの経緯を話し始めた。
途中、クデルト王の話しになると、セラとネルビアは一様に顔をしかめていた。
全ての話しが終わった時、ネルビアが口を開いた。
「…なるほど。そのウォーターに行けば、彼は助かるんだねぇ?」
不思議そうなネルビアに対し、セラは納得した様に頷く。
「…では、私が皆さんを運びますね。」
え…?
「いや、セラ。…怪我は?」
紗季の戸惑いに安心させるよう、セラはにっこり笑った。
「獣人は人より丈夫ですから。もう大丈夫です。私にさせて下さい。」
セラの本気を感じとり、紗季は最後には頷いた。
「分かった。無理ならすぐ言う事!」
「はい。」
そして、紗季達はウォーター国に向かう事になった。
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