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ウォーター国創世記  作者: 雪香
2章―クデルト道中編―
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狼人族



「それで、お兄さんの特徴は?」


紗季の質問に、サイラは周りを見渡しながら答えた。


「ああ。うんと、凄く背が高くて、髪は灰色だ。種族は俺と同じで狼。」


ごめん…犬かと思ってた。

ふぅん…と頷く。


「…兄貴は口数は多くないけど、強くて格好良くて尊敬してんだ。絶対黙って居なくなる事なんて無い!」


サイラの辛そうな表情に紗季は黙って頷くが、そんな紗季にサイラは少し焦って慌て出す。


「っ悪い!手伝って貰って、勝手にこんな話しして迷惑だよな?」


あーそんな事は、ある事はあるけど…。

私はそれより…


「別に?食べられそうだった相手に、普通に話しをされて不思議な感じかな?」


おどけた紗季に、サイラは目を瞬き少し考える素振りをして口を開けた。


「…そういやそうか…。でも、今は特に食おうと思ってないからな?」


…今は?


「…いや、ちょっと?

今は…ってどういう意味?」


…返答次第じゃ距離取らせて貰うぞ!


紗季の言葉にサイラは、紗季に対して初めて笑みを浮かべた。


口の端を上げた男っぽい笑みに、紗季は思わず見惚れた。


「…よく見れば、あんた俺の好みだからな。俺、好きなものは後にする性格だから?」


はい…終了~!


紗季は心の中で盛大に距離を取った。


うん。

こいつの兄貴が見つかったら、さっさと離れよう。


そう紗季が思っていると、近くから話し声が聞こえた。


「…まぁ!ワタクシの息子になんて事を!」


「あら、申し訳ありませんわぁ?どうか、この薄汚い奴隷を、これで思う存分気の済むようになさって?」


「ふん。よろしいですわ。ああ、忌々しい!」


そして、鞭で人を打つ様な音が聞こえた。


紗季は気にせず行こうと思ったが、サイラは横目に見てその場に立ち尽くした。


「…っそんな。」


サイラの顔が驚愕に染まったかと思ったら、その場に駆け出していた。


「兄貴!!」


その拍子に、サイラのターバンが外れ てしまった。


露になったサイラの頭に、周囲がざわめいた。


「…獣人族!」


「首輪も紐も無いわ!」


「何故自由にしているんだ?!」


その聞こえる声に、紗季はスッと心が冷えた。


この国に来たがらなかった、ルピアの様子を思いだし、唇を噛みしめる。


サイラは、鎖に繋がれて首輪をされた獣人に抱きついた。


「っ兄貴!なんて酷い事を!」


そして、鞭で打った女を憎悪の籠る瞳で睨み上げた。


「…殺す。」


彼にしては静かな声音に、紗季はすぐに勘づく。


…本気だと。


睨まれた女は恐怖に震え、叫んだ。


「きゃああ!誰か!誰か来て!この獣人に殺される!」


醜い顔をひきつらせ騒ぐ女に、サイラは犬歯をむき出しにした。


その場に、焦った様な数人の男達が武器を手にやって来た。


「…やめないか獣人!奴隷が人間様に手を出すな!」


「…恐かったでしょう、ミカリー夫人こちらへ!」


そう言って女を、サイラから引き離した。


サイラは屈強な男に地面に叩きつけられ、身動きを封じられた。


「…っく!」


そのまま頭を踏みつけられ、うめき声を洩らす。


そんなサイラに、周囲はただ良い気味だと笑みを浮かべるのみ。


カッチーン


そんな音が紗季の頭に響いた。


「何が奴隷だふざけてんじゃねぇーーー!!!」






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