競売の後に
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黒曜石…
その名前に静まった会場に、進行役の男だけは顔を綻ばせた。
「では、雌の鳥人は黒曜石で決まりました!」
隣にいた少年は、まだぐずぐずと駄々をこねていた。
「爺や~僕も欲しかったよー!」
紳士は仕方なさそうにため息を吐き、やんわりと宥めている。
「…いくら若様でも、黒曜石は手に入りませんよ。」
紳士の言葉に、少年はふて腐れた。
「父上に言えば良いじゃん!」
騒ぐ少年を脇目に、紗季とネルビアは交換場に向かう。
交換場には、イカサマをしない為か鑑定士らしき者もいた。
その者は紗季から黒曜石を受けとると、じっくり眺めると感嘆の声を上げた。
「…確かに本物だ。獣人なんぞよりよっぽど価値がある。」
鑑定士はすぐに、セラを連れて来るよう他の者へ指示した。
「お買い上げありがとうございました。」
商人達のそんな声に、紗季は適当に頷いてすぐにセラに近付く。
「…セラ。」
彼女の曲がった羽根、身体の傷が目に入る。
…生きていて、良かった。
用の済んだ商人達はさっさと居なくなり、その場は紗季達だけになった。
「セラ。」
紗季は、意識の無いセラに顔を近付けて名を呼ぶが、それでも中々目を覚まさない。
困惑する紗季に、ネルビアはセラを覗き込んだ。
「…もしかしたら、薬を盛られてるかもねぇ?」
え…薬?
目を見開く紗季に、ネルビアは頷いた。
「睡眠薬か、麻痺薬か…。」
ネルビアの話しに、紗季は眉を寄せていく。
酷い事をするものね…
最低…!
セラの羽根を労るように撫でていると、入り口からサイラが入って来た。
それに気付いたネルビアが顔を上げる。
「…どうだった~?もう終わったのか?」
ネルビアの軽い口調とは裏腹に、サイラは拳を強く握った。
「…ネルビアさん。…っ兄貴が、いないんです!」
サイラは情けなく眉を下げて、頭を抱えた。
「…どうしたら、良いんでしょう?」
ネルビアは、ふむ…と手を口元に当て首を傾げる。
「…今回は出されないのかなぁ?」
そんな…と悲痛な声を上げたサイラに、紗季の考えは違った。
いいから、探してみろや!
スッと立ち上がると、サイラの目の前に止まって相手をじっと見つめた。
「……何だよ?」
「ちゃんと隅から隅まで見た?」
「え…いや。」
じゃあ…と紗季はサイラの腕を掴んだ。
「もう一回行こう!ここでうじうじしてるなんて、時間の無駄。」
え、とサイラが声を上げたが無視し、紗季は歩き出す。
そんな紗季に、ネルビアは首を傾げた。
「サキちゃん、俺はぁ?」
そんなん決まってるっしょ。
「セラ見といて!」
紗季は素早く返事をした。
そして、サイラを引きずる様にまた、会場を周り始めたのだった。
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