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ウォーター国創世記  作者: 雪香
2章―クデルト道中編―
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宵闇の競売

※人身売買に似た描写が有ります。



夜通し行われるクデルト国の売買。

他国からの批判を免れる為、王族や官吏の関わりは公には皆無となっていた。

売買は怪しの森の近く、月に1、2回フェリスという街で行われる。

というのは、売れない『商品』は森に捨てる事ができるからだ。


紗季は、多くの客や見物客と共に、会場に足を踏み入れた。


隣を歩くのは、帽子を目深に被った男と、ターバンを巻いた少年。


商品を買う方法は、単純に金額に尽きる。

何処まで大金を積めるのかにかかっているのだ。

勿論、この国の貨幣でも良いし、宝玉や金銀でも構わない。


紗季はウォーター国の宝物庫から、万が一に備えて持てるだけ持ち出して来た。


それは、将来大国になれば国宝となりえる物だが、紗季にとってはどうでも良い事だった。


始まりの合図が聞こえるまで、会場は独特の空気に包まれていた。


それにしても…


紗季は隣の男を盗み見る。

癖のある柔らかなブラウンの髪に、金色の瞳。

甘い顔立ちは、少し切れ長の瞳の印象を柔らかくしている。


…そう。

ネルビアは美形だった。


私、こんな美形に色々されてました…

思い出すと無性に恥ずかしかったが、なんとか顔には出さず、普通に接した。


あのサイラって少年も、結構格好良い子だったんだよね。


兄を探す為か、さりげなく辺りを見渡している。


紗季が会場の中心のステージに目を向けた時、中央に男が現れた。


「…あ。」


あいつ!

紗季が顔色を変えたのに気付き、ネルビアが片眉を上げた。


「…どうかした?」


「あいつが、セラを連れて行った張本人。」


紗季の鋭い視線に、ネルビアは短く頷いた。


「そう。あの、豚人族より肥えた醜いデブが、サキちゃんに手をだしたんだ…。」


淡々と紡いだ言葉に殺気を織り交ぜたのには、サイラだけしか気付かなかった。


中央の男はにこやかに笑みを浮かべ、会場中を見渡す。


「…ようこそ皆さん、いらっしゃいました。ただ今より、様々な魚人・獣人の売買を始めます!

今回は、いつも以上に多く仕入れておりますので、ご満足頂けるでしょう。」


男の言葉が終わると、会場は熱気に包まれた。

既に奴隷を持っている者もおり、首輪をつけて足元に座らせている者も見える。


「それでは始めます!」


その声に、様々な獣人・魚人がステージに連れられた。

皆頑丈に捕らえられ、逃げ出せないようにされている。


紗季は目を凝らしてステージを見たが、セラらしき影は見えない。


「…何で?いない…。」


戸惑う紗季に、ネルビアは口を開く。


「…もしかしたら、次に出るかも?…商品価値が高いと、個別に提示されるからさ。」


え…。


ネルビアの言葉に、唇を噛んだ。

サイラもステージから目を離した。


「…兄貴も居ない…。」


次々買われて行き、一度目の競売は瞬く間に終わった。


そして二度目。


「…さてお次は、まだ若い雌の鳥人です!珍しいですよ、顔立ちも美しい。」


セラ!


出て来た鳥人を見て、紗季は叫びそうになった。

紗季の表情で察し、ネルビアもステージを目を向けた。


その時、紗季の隣にいた人間の少年が声を上げた。


「爺や!僕あれが欲しい!」


爺やと呼ばれた紳士は頷く。


「分かりました。…金5枚!」


その声に、会場は静まり返った。

この世界では、民が普段使用するのは銅、貴族で銀、稀に金がやっとである。

故に、5枚などはありえない。


しかし、それはあくまで貴族までの話し。


王には、金以上の宝物を扱える。


紗季はステージから目を離さず、息を吸って声を上げた。


「…黒曜石1つ!」


世界三大美石の名前に、息を呑む音が響いたのだった。







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