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ウォーター国創世記  作者: 雪香
2章―クデルト道中編―
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森の中で



「俺はネルビア。狐人族の雄だよ~!君はぁ?」


紗季は酷い傷を手当てされ、やっと座れていた。


しかし、側にはピタリと顔の知らない青年が寄り添っている。


こじん族…狐かな?


紗季はくっつかれているのは放って、顔の方向へ向いた。


「…私は紗季。ウォーター国の人間だよ。」


ふぅん…とネルビアは頷いた。


それよりも、紗季には急ぐ理由があるのだ。


「私、早く行きたいんだけど?」


早くセラを助けに行かなければ。


ネルビアは、それに頷く気配を見せた。


「うん。でも、売買はいつも夜に行われるんだよねぇ。だから、もう少し待ってて~?

そしたら、連れて行ってあげる。」


夜か…。

紗季には、暗い森の中で時間の感覚が掴めない為、ネルビアに任せるしか無かった。


「…ありがと。」


自然に出た言葉に、ネルビアは首を傾げた。


「何で?」


…は?いやいや!


「だって、わざわざ連れて行ってくれるんでしょ?」


それでもネルビアは、複雑そうな声音で返す。


「だって俺、サキちゃんを食べようとしたよ~?…嫌ったり、怖がるのが普通じゃない?」


あーそれか。


「何?嫌われたいの?」


紗季がそう言うと、ネルビアは黙って少し考え込んだ。


そして頭を掻いて紗季を見つめる。


「…ん~?良く分からないかも? …俺は、サキちゃん好きだよ?」


…あっあれっスか。

紗季は口元が引き吊った。


「食料として?」


半笑いの紗季に、ネルビアはキョトンとした。


「…半分くらい?」


何が半分?!


ネルビアに頬を口付けられながら、私食料かよ…と息を吐いた。

まぁ、違う種族だし。

仕方ないか…。


顔の知らないネルビアを想像するには、声しか判断出来ない。

声は艶のある低めの声で、20代ほどに感じる。


手や顔に口付けられる時犬歯があたる為、肉食の狐族というのは納得出来た。


する事も無い為、辺りを見渡していると、森の奥で何かが光るのが見えた。


それが段々と紗季に近付いて来る。


「あれ?ネルビアさん、旨そうな人間っスね!」


ネルビアより若そうな声色に、紗季は聞き耳を立てた。


「…サイラ。珍しいなぁ?いつもは寝てるのに。」


軽く話すネルビアに、サイラは人懐こく近付いた。


「だって最近うるさいんですもん!ケープラナが崩壊し始めて、どんどん難民が流れてるっしょ?なんだか森も落ち着かなくて…。」


そう言うと欠伸をして、近くの木に寄りかかって紗季をちらと見た。


「…今回はお裾分けありっスか?」


細めた瞳孔に、紗季は身を引いた。


うわ…こいつも肉食かい?!


ネルビアはニンマリ笑って紗季を腕に抱いた。


「な・し。触ったら殺す。」


軽い口調だが、その中の本気を感じたのか、サイラは目を見開いた。


「…へぇ。そんなに旨いんスね。」


探るように眺めるサイラに紗季は気付かなかったが、ネルビアは不快そうに眉を寄せた。


「…見るのも禁止。てか見るな。」


瞳の細まるネルビアに、サイラは慌てて距離を取った。


「うわ、分かりましたから!爪と牙しまって下さいよ!その人間に絶対触りませんから!」


サイラの言葉にネルビアは微笑んだ。


「…分かれば良いよ?あ…そろそろ日が沈むかな?」


サイラはじっと空を見た。


「…はい。俺、売買行って来ますね?」


「…ん?何で、珍しいじゃん。」


売買、という言葉に紗季も目を向けた。


サイラは、はいと頷く。


「…俺の行方知らずの兄貴が、今回売買の会場で見掛けたと、仲間が話していて…。」


そう…とネルビアは返した。


決意を込めたサイラに、紗季は思わず声を掛けていたのだった。


「一緒に行く?」






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