飛行中…
私、高所恐怖症じゃなくて良かった…。
紗季は、現在鳥人の背中に居た。
鳥人の少女…セラは、紗季がトレガーの王だと分かると、態度を軟化させた。
そして、紗季をクデルトまで送る事を快諾したのだ。
セラの背中から見える景色に、紗季は様々に目を移す。
すっごー!
良い景色だな~。
それから、セラと紗季はのんびり会話を交わしていた。
あと少しでクデルトに着くらしく、高度を下げた時、セラがふいに身体を震わせた。
「…音がした。」
顔色の変わったセラに、紗季も何事かと身を引き締める。
「…何の音…」
と続けた時、その場に銃弾の音が響いた。
パンッ
紗季が気付いた時には、セラの羽根の付け根が不自然に曲がっていた。
「…セラ!!」
紗季が叫ぶと同時に、セラが凄い速さで落ちて行く。すぐに素早く空中で手を伸ばし、セラの手を強く握った。
そのまま二人で落ちて行った先は、真下の森だった。
幸い、木がクッションになりなんとか直撃だけは免れていた。
身体中痛みで悲鳴を上げながら、紗季は瞼を上げてセラの姿を探した。
…何だったわけ?
てゆうか、セラは撃たれたの?
生きてるの?
視界の端にセラを認めて、顔を向けた。
安堵しながら、セラを見るとすぐにその光景に凍りつく。
数人の人間の男が、セラを袋の様な物に入れていたのだ。
「…っセラ!」
紗季の声に、男の1人が振り向いた。
「…おや、人間の方が気付きましたよ?」
男の言葉に、太った男が嫌そうに舌打ちをする。
「…放っておけ。せっかく雌の鳥人が手に入ったんだ。これは高く売れるぞ…。」
厭な笑みを浮かべた男に、紗季は身体の毛が逆立った。
…どうしよう!
私がクデルトまで運んでなんて、頼まなければ。
…ったく、後悔しても仕方ない!
「…その子は私の物よ!勝手に売らないで頂戴?」
真っ直ぐ見詰めた紗季の瞳に、男達は思わず後ずさった。
しかし、太った男はすぐに汗を拭うと笑みを浮かべる。
「悪いがお嬢さん、公の守猟場にいたのが運の尽きだったな?なぁに、医者代くらい払うさ。」
そう言い、馬車にセラを乗せた。
まだ気が付かないセラに、紗季は歯を食い縛った。
…どうしよう!どうしたら!
身体は痛みで言う事が聞かず、動かそうとすると脂汗が流れた。
「…この不細工豚!セラを置いていけー!」
紗季の暴言に、男は青筋を浮かべて近付いて来た。
「…おいクソガキ、こっちが甘い顔してりゃあ調子に乗りやがって!」
そう言うと、紗季の腹を足で踏みつけた。
紗季は声にならない悲鳴を上げながらも、男を睨み付ける。
男は思わず身震いをした。
(何だ!?この女、嫌に迫力がありやがる…)
男は舌打ちして、他の男たちに顔を向けた。
「…おい!このガキ、怪しの森に捨ててこい!」
「え?怪しの森っスか?でも…。」
戸惑う男に、太った男はにやりと笑った。
「…家族が居ようと分からねぇさ。あそこに入ったら一晩で獣の餌だ。骨も残るまい…。」
紗季は男に連れられながらも、セラの連れ去られた方向にただ目を向け続けていた。
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