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ウォーター国創世記  作者: 雪香
2章―クデルト道中編―
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国を出た5日目

ほとんど眠れずに過ごした夜が明け、ルピアに助言され旅支度を整えた。


荷物を持ち、城門に立つと見送りのルピアを見返す。


「じゃあ、行ってくるね。すぐにトレガー連れて帰るから。」


殊更明るく言うと、ルピアは恭しく礼をした。


「はい。留守番をしっかり務めさせて頂きます。」


「うん。」


紗季はそう言うと、国を旅立った。


そんな紗季の後ろ姿を、ルピアは見えなくなっても見つめていた。


「…どうかお気をつけて。」

(…一緒に行けば良かった。今更遅いけれど…)


紗季は、なんとか国を越えて海沿いまでやって来た。

太陽に反射された美しい波の様子に、見入っていた。


…綺麗。

そういえば海に来たのって、学校の修学旅行以来だもんなぁ。


しばらく眺めて満足してから、船着き場を探そうと顔を上げた。


神が言うには、何処の海沿いにも、大なり小なり船着き場はあるそうだ。


…まずはそれを探さないと。


辺りを見渡していると、離れた場所にポツンと大きな木がそびえているのが見えた。


…ん?

一本だけなんだ。

ふ…私と一緒だな?


我が身を振り返り、ため息を堪え足を向ける事にした。


近くで見ると、更に大きく感じる木を見上げると、木の頂上に何かの影が見える。


何だろう?

不思議に思い、試しに声を上げた。


「…誰かいるのー!?」


…まさかね?


返事が無い事に頷き、木から離れた時、頭上から何かが降りて来た。


風を切り、辺りに砂ぼこりが舞う。


紗季がポカンと見ていると、その何かは紗季を不審そうに見つめた。


「…一体、人間の女が1人で何をしているの?」


相手の姿を認めると、紗季はまた閉口した。


…羽?

相手は可愛らしい少女だった。

少なくとも背中から生える、大きな羽根さえなければ。


…もしかして。


「貴女って、獣人族?」


紗季の言葉に、少女は目を細めた。


「…そうよ。だから何?鳥人など、そこまで珍しく無いでしょう?」


いや、私初めて見たし。

紗季はただ曖昧に笑っておいた。


「あ、そうだ。この辺に船着き場知らない?」


他意の無い紗季の質問に、少女は更に警戒したようにじろりと見据えた。


「…ここから行くって事は、あんたクデルトの人間?」


うわ…クデルトって、やっぱり嫌われてるんだ。


…ウォーター国は、絶対良い国にしよう。

そんな思いを胸にし、紗季は返事を返した。


「ううん。違うの…人を探していて…。」


「…人?」


少しだけ少女の警戒の雰囲気が和らぐ。


「うん。キリス・トレガーって人だけど、知ってる?…わけないか。」


そう紗季が言い終えた瞬間、少女が勢い良く紗季に近付いた。


「キリス様を知ってるの?!」


へ?


「…トレガーを知ってるの?」


紗季が少女を見つめると、少女はみるみる内に瞳を潤ませた。


「…キリス様は、私を育ててくれた親代わりの方。…でも、酷い怪我のまま、私はクデルトまで運んでしまった!

…キリス様は着いてくるなと言って…

どうしたら良いのか…!」


少女はそこまで言い、あとは泣き出して言葉にならなかった。


なるほど。

この子がトレガーを運んだんだ。


紗季は納得して、少女の肩に手を置いた。


「…ねぇ、私をクデルトまで連れて行ってくれない?…きっと、トレガーを連れて帰るから。」


はっきりした紗季の言葉に、少女は泣き止み戸惑った様に瞳を揺らした。


「…本当に?でも、どうして…?」


紗季はすぐに、キッパリ言い放った。


「トレガーは、私の側近だから。」








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