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ウォーター国創世記  作者: 雪香
1章―はじまり―
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小国クデルト

※少しご不快になる言葉が出ると思います。



「クデルト…ですか?」


長テーブルのある広間で、食事を始めた紗季はルピアに話しを始めた。

紗季はパンをちぎりながら、ん…と頷く。


「…これが神に貰った世界地図なんだけど。見てくれない?」


ルピアは地図を受け取り、見ている内に眉を寄せた。


紗季もそんなルピアを見て、頬杖を吐いた。


「…面倒くさそうでしょ?」


「…難しいですね。」


ルピアは困ったように嘆息した。


ここウォーター国と、クデルト国・ケープラナ国のある大陸は、完全に海で隔たっていたのだ。


「…うーん。トレガーはどうに行ったと思う?」


ルピアは、そうですね…と、少し考えながら口を開いた。


「そのトレガー殿が人族という事でしたら、一般的には船を使いますね。ただし、船でしたら三日はかかり、傷を負っているなら 短時間での到着は有り得ません。」


…三日!

ルピアの言葉に紗季は目を丸くした。


「じゃあ、早い方法もあるの?」


ルピアは頷いた。


「…はい。例えば、魔族は魔術というものがありますが、これは今回度外視しまして。…きっと、トレガー殿は獣人族を使ったのだと思います。」


「獣人族?」


獣って事だよね?

想像しづらい単語に、紗季は思わず眉根を寄せる。


それに対して、ルピアはすぐに説明を始めた。


「獣人族は、獣と人の両方の特性を持った一族です。忠誠心が高い為、忠誠を誓った相手の命を、忠実に守ると言われます。」


ふぅん…。

それが獣人族か。


「それで、獣人族を使うって?」


「…はい。獣人族の中の鳥人に乗って移動したのかと…。」


ちょうじん?

鳥…人かな?


紗季は食事を続けながら、続きを促した。

ルピアは続ける。


「というのは、鳥人は人ならば10人乗っても、一月休まず飛び続けられると言われています。それに、速さも並みではありません。」


紗季は深く頷く。


「…なるほどね。それでトレガーはクデルトに行ったんだ。」


1人納得する紗季に、ルピアは静かに視線を送った。


ん?

何見てるわけ?


「どうかした?」


紗季が首を傾げると、ルピアは慌てて、えと…と口ごもった。


「それで、陛下はどうされるのですか?あの、クデルトに向かうのですか?」


妙に戸惑うルピアに、紗季は不思議そうな表情を浮かべる。


…何か挙動不審じゃね?


「うん、まあね?今後の為にも、人材探しの為にも、他の国は見たいんだよね。…ルピアも行くでしょ?」


最後の言葉は圧をかけてみたが、それでもルピアの表情は良くならなかった。


紗季は、ますますいぶかしむ。


「ケープラナに行くのは嫌なの?」


紗季の疑問に、ルピアはやっと仕方なく頭を振った。


「いえ。…私が行きたく無いのは、クデルトです。」


…え、そっち?


「何で?」


ルピアは表情を固くしたが、本当に分からない紗季の瞳を見て、息を吐いて話し始めた。


「…クデルト国では、私達魚人族・獣人族等は、良くて愛玩生物…悪くて奴隷なのです。」


思わず紗季の眉間に皺が寄った。


「本当?」


身分制の無い場所から来た紗季にとっては、あまり現実味は無いが、良くない響きが耳に残る。


ルピアは顔をしかめて俯く。


「クデルトは80年程前に出来た国でしたが、王が国の生業と定めたのが人身売買でした。しかし、さすがに他国から反感を買いやりづらくなり、次に獣人・魚人に狙いを定めたようです。」


ルピアは何かを堪える様に続けた。


「獣人は忠誠心があり、魚人は穏やかな性質ですから、扱い易かったのでしょう。その興業は軌道に乗り、クデルトは今に至ります。」


…マジか。

クデルト、何か私も行くの嫌になってきた。


こんなひよっこの王に言われたくないだろうけど、私は絶対そんな方法で国を作らない。


まだ辛そうなルピアに、紗季は軽い口調で話した。


「…じゃあ、ルピアは留守番で良いよ?私が行って来る。」


「…え?」


驚くルピアに、紗季はにこりと笑みを向けた。


「私は、初めて出来た臣下に嫌な思いをして欲しくないし?

だから、待っててくれない?」


ですが…と言い募るルピアに、紗季は目で止めた。


「…ルピア。これは命令。私が戻るまで国を守る事。…貴方は守ってくれると信じるから。」


紗季の脳裏にはトレガーの笑みが過る。

ルピアは紗季の声音に何かを感じ、最後は黙って頷いた。


「…必ず、成し遂げます。陛下のご無事をお祈りしてお待ちします。」


うん、と紗季も返事を返した。


絶対だよ。

ルピア…!







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