ルピアの役職
ルピアと共に、ウォーター国の城へと戻った。
初めて見る城に、ルピアは物珍しそうに辺りを眺める。
ルピアは辺りを見渡していたが、何かに気付いた様に足を止めた。
「…あの、陛下。」
…ん?
「何?」
そんなルピアに首を傾げた。
「…え、いえ。不思議に思いまして…土地以外、何も無いのですね?」
ああ、と紗季は頷いた。
「だって、まだ国民居ないし?街も何も作れないでしょ?」
当たり前じゃん。
そう思うと道程長いなぁ…。
紗季の言葉に、ルピアは何故か首を振った。
「いえ。そうではなく……民以前に、動物や昆虫の類いも見かけないので…。」
ルピアの言葉に、紗季は周りに目を向けた。
そういえば…
山では見られた、小さな動物とか虫とか見かけないかも…。
少し思案したが、紗季はすぐに考えるのを止めた。
まぁ、いいや。
後で神に聞くか…。
そう結論づけ、ルピアを促して城に入った。
城内を歩いている途中、ルピアが思い出した様に口を開く。
「…そういえば陛下。私は上級役人という役職を賜りましたが、主にどういった仕事内容になるのでしょうか?」
(…私などに務まるのだろうか?)
…そうだよね。
紗季はため息を噛み殺し、ルピアに視線を送る。
「…ルピアって、政とか判る?」
それに対して、ルピアは申し訳無さそうに頭を振った。
「すみません。魚人族は、人里離れた場所に暮らしていましたので…」
しゅん…と項垂れたルピアに、紗季は軽く肩を叩いた。
「ああ、気にしないで?私こそ何も知らない人だから。」
この世界のことも、全く分かりませんしぃ?
紗季は、まだ気落ちしたルピアに話しを続けた。
「じゃあ、ルピアにして欲しい事が思いついたらすぐに言うわ。」
「!はい。ありがとうございます。」
本当に嬉しそうなルピアに、紗季は思わず苦笑した。
…むしろこっちが感謝したいくらい…
こんな何も無い国に来てくれて…。
そんな思いの中、城内を歩いていて声を上げた。
「あ、そうだ。」
「え?」
ルピアはキョトンとした。
既に二人は執務室の前までやって来ていた。
「見取り図作ってくれない?…あと、ついでに水回りも調べて欲しい!」
「…見取り図?」
紗季の科白に、ルピアは不思議そうに続けた。
紗季はウンウンと頷いた。
「私、まだまだ城内を把握出来てないんだよね。だから、城内の見取り図作ってくれると助かる。」
ルピアはふわりと微笑む。
「承りました。あと、水回りとは?」
…そう。
これは切実。
「うん。私お風呂に入りたいんだけど、城の風呂の造りが分からなくて、使えないんだよね?
だから、後で見てくれない?」
ルピアはそれにも快諾した。
紗季はほっとした後、また足を進めた。
「よし、じゃあ後は、ただ1人の仮側近を紹介しよう。」
「仮側近ですか?」
うん、と頷いた。
「まだ、正式じゃないからね。あ…でもその前に食事にしようかな?」
作るのめんど…と紗季が呟くと、ルピアがやんわりと返す。
「陛下が作るなどとんでもない!…是非私に作らせて下さい。」
…マジか!
「ありがと。助かるよ!」
にこりと笑った紗季に、ルピアは頬を赤らめてはにかんだ。
「いえ!陛下に役立てるなら本望ですから…」
そう?と軽く流して、紗季は食料庫と調理場の場所を教え、ルピアと別れた。
向かったのは、トレガーのいる部屋である。
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