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おいゴミクズクソ野郎、お前いい加減にしろよ

作者: 上貝 颯空
掲載日:2026/09/20

私、恋愛もの破局系しか書いてないぞ?と思い至り。書きました、ちゃんとした(?)恋愛もの。

その日、私は王城に乗り込んでいた。


「ご機嫌よう、殿下。どうして私がここに来たか、分かりますよね?」

「……いや、さっぱり……。何の用かな、リネット嬢」


本気の困惑顔である。


「姉様のことです」

「エリーゼが、何か……?」

「本当に分かりませんか?」


私はすっと息を吸った後、台パンと共に声を荒げた。


「おいゴミクズクソ野郎、お前いい加減にしろよ」

「だから、何のこと!?」


とぼけているのか、本当に分からないのか。

どちらにせよ、私の怒りを助長させるだけだ。


「なに姉様放って他の女と遊び歩いてんだよ! なんとか言えや、ああ!?」

「……っ誤解だ!」


じゃあ今の間はなんだよ。


「じゃあ今の間はなんだよ」


おっと、心の声が漏れてしまった。


「それはその! 心当たりがなさすぎて戸惑ったと言うか!」

「先々週の金曜、エルグレン辺境伯家のタウンハウスを訪れた。令嬢が出迎え。次の日その女をエスコートして夜会に。さらに一昨日、そいつと街歩きデート! 心当たりが無い? もう一回言ってみろ!」

「いや怖!? めっちゃ把握されてる!」

「当然のこと。姉様の婚約者の全動向はチェックしている!」

「当然って何!? それが普通なの!?」


殿下はツッコミすぎて息も絶え絶えだ。

仕方ないので少し待ってやる。


「……まあいい。きっと天使よりも心優しい姉様なら、こんなミジンコ以下野郎の弁明だって聞いてあげるのでしょう。姉様に免じて話だけは聞いてあげます」

「ありがとう……? その人は従妹だよ。久しぶりに王都にきたから案内したりしてただけ」

「いや、従妹なのは知ってますよ。てかやっぱ浮気じゃねーか」

「話聞いてた!?」

「ここで名言を一つ。従兄妹同士でも結婚できるんですよ」

「いや、今の王家が血を薄める方針なの知ってるよね!?」


……このまま話しても平行線な気がする。

私は一つため息をついた。


「まあ私が口を挟みすぎるのもアレですし……。一旦置いておきましょう。でもちゃんと二人で話し合って下さいね。姉様泣いてましたよ」

「え!なんで?」

「街歩き見ちゃったからです」

「そっかぁ……」


なんでちょっと嬉しそうなんだよ、キモ。


「なんでちょっと嬉しそうなんだよ、キモ」


おっと。


「酷! 君、僕が王太子だって本当に分かってる? 打ち首にされても文句言えないよ!?」

「覚悟の上です。姉様を泣かせるなんて許せねえ……」

「おおう……」


それに殿下は、姉様の家族を打ち首に、なんて出来ないでしょ?

っと、話が戻るところだった。


「では本題に入りましょう」

「あれ本題じゃなかったんだ……」

「次も姉様のことです」

「だろうね……」

「殿下、いつまで姉様に気持ちを伝えないつもりですか?」

「ぶはっ」

「汚な」


殿下が紅茶を吹いた。

ゴホゴホとむせて、誤魔化すように紅茶を口に入れて、またむせた。

学ばねーな。


「君、一体なにを言い出すんだ……」

「これも第三者が口を出すことじゃないですが、あまりにも姉様が可哀想なので……。なんで気持ち伝えないんですか? いや、なんで好きなのに姉様に冷たくしてるんですか? ガキなんですか? いやガキのがまだ可愛いです。良い歳した男のツンデレなんて、いてーだけだよ」

「待って、刺さる、刺さるから……」

「勝手に刺さって死んどけば良いんです」

「未来の義妹が酷い……」

「キモ」


私はまだお前を認めていない。


「とにかく、早急に姉様と話してください。じゃないと、私が姉様泣き落として婚約解消させますからね」

「わ、分かった」

「絶対だぞ」


捨て台詞を残して部屋を出ると、廊下の先から侍従が歩いてくるのが見えた。


「あ、リネット嬢。エリーゼ嬢がお迎えに来ていますよ」

「え、ほんとですか!? 急がなきゃ!」


姉様を待たせてはいけない。

私は優雅に早歩きした。


「姉様ー!! 迎えに来てくださったの? わたくしとっても嬉しいわ!」

「ふふふ、王宮に向かったと聞いてびっくりしたのよ? 心配で来てしまったわ」


はあ、やはり姉様は天使。

あんな男にはもったいない。


「えへへ、少し王太子殿下とお話ししてきました」

「あら、そうなの? 大丈夫だった? リネットはまだ作法が身に付ききって居ないのだから、無理してはダメよ」

「はーい」


私は孤児院で育って、一年ほど前まで平民として暮らしていた。

そんな私を、慰問に来ていた姉様が見つけてくれたのだ。

幼い頃に行方不明になった妹だと、すぐに分かったらしい。

しかも孤児院に多額の寄付までしてくれた。

おかげで今は、私も、孤児院の下の子達も飢えることなく過ごしている。

もちろん家族みんな大好きだが、やはり姉様は別格なのだ。


「あ、姉様! 先日の、街歩きの人! 殿下の恋人とかじゃなくて従妹だそうです! 良かったですね!」

「ふぁ!? そ、そうなの? 嫌だわ私ったら、早とちりして、恥ずかしい……」


顔を真っ赤にしてる姉様、可愛い。

嫉妬と悲しさで泣いてる姉様も可愛かったけど、やっぱり笑顔が一番だよね。

……え?笑顔では無いって?

負の感情じゃなきゃ良いの!

……あ、てか殿下に話し合えとか言っておきながら、ばらしちゃった。

まあいっか。

わざわざあいつの顔を立てる必要はない。

姉様を泣かせたこと、私はまだ許してねーんだから。

ちゃんと、姉様を幸せにできるようになったら——。

許してやる、かもしれない。多分。

お読みいただき、ありがとうございました!

面白かったら、ぜひぜひ☆をよろしくお願いします!!

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