表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「役立たず」と捨てられた聖女、かつて救った魔王に拾われる 〜「監視」だと言う割に、その視線が甘すぎて溺愛が隠せていません〜  作者: レオン・クラフト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/20

第18話:狂乱の独白、あるいは甘美な罰

夜会の華やぎは遠ざかり、重厚な石の回廊には、二人の急な足音と衣擦れの音だけが響いていた。

 ゼノスはエリスの手首を掴んだまま、一度も振り返ることなく自室へと彼女を連れ込んだ。


 扉が閉まり、錠が降りる。その「カチリ」という金属音が、密室の始まりを告げる合図となった。


「……ゼノス、様……っ」


 エリスが名前を呼ぶ間もなかった。

 背中が冷たい石壁に押し付けられる。目の前には、月明かりを背負って漆黒の影となったゼノスが立ちはだかっていた。

 彼の全身から溢れ出す魔圧が、呼吸さえも困難なほどに部屋を支配している。


「……セラフィナの言葉が、そんなに胸に響いたか」


 ゼノスの声は、低く、掠れていた。

 彼はエリスの顔の横に両手を突き、彼女を完全に閉じ込める。

 至近距離でぶつかる黄金の瞳。そこには、エリスを焼き尽くさんばかりの激しい嫉妬と、それ以上に深い「絶望」が渦巻いていた。


「あいつの言う通りだ。……お前の羽をむしり取り、二度とこの城から、私の瞳の中から逃げ出せないようにしてやりたいと、そう願っている自分に吐き気がする」


 ゼノスの手が震えながらエリスの首筋に伸びる。

 あの「契約の鎖」を指先でなぞり、彼はそのままエリスの顎を掬い上げた。


「お前を他者の目に晒すことさえ耐えがたい。誰かがお前の名を呼び、お前に触れることを想像するだけで、この国ごと焼き尽くしてしまいたくなる。……これが『監視』だと? 笑わせるな。これは……ただの狂気だ」


 彼は自嘲気味に笑い、そのままエリスの肩口に顔を埋めた。

 熱い吐息が肌を打ち、エリスは小さく身を震わせる。


「……エリス。私にお前を捨てさせた連中と同じだと蔑んでもいい。だが、今この瞬間、お前を自分だけの深い闇に閉じ込めたいという欲動を、私はもう……止められない」


 ゼノスは、誓いを立てるようにエリスの鎖骨のあたりに、深く、痛いほどの口づけを落とした。

 それは慈しみの接吻ではない。

 「ここから先は、私の不可侵領域だ」と、世界に、そして何より彼女自身の魂に刻み込むための「罰」であり、そして「懇願」だった。


「……ゼノス様、私、は……」

「何も言うな。お前の優しい言葉を聞けば、私はもっと、お前を壊したくなる」


 彼はエリスの細い腰を力任せに引き寄せ、壊れ物を扱うような繊細さと、獣のような野蛮さで、彼女の存在を自分の中に上書きしていく。

 

 冷たい夜の空気の中で、二人の体温だけが異常に高く、混ざり合っていく。

 エリスは、自分の首筋に残る痺れるような熱を感じながら、この狂気的な執着こそが、自分が求めていた「たった一つの居場所」であることを、静かに受け入れていた。

「罰」という名の、あまりに身勝手で献身的な愛の証明。

誰にも見せたくない、誰にも触れさせたくない。

そんなゼノスの「子供のような独占欲」が、魔王の強大な力と結びついた時の危うい美しさを描きました。


エリスに刻まれた新しい「熱」の痕。

それが、これからの物語において彼女を縛る鎖となるのか、それとも守る盾となるのか。

二人の関係は、もはや後戻りのできない深淵へと足を踏み入れました。


次話では、この「独占」の夜を経て、二人の間に生まれる新しい「沈黙の質」について触れていきます。

ゼノスの嫉妬が、魔王領全体を巻き込むどのような波乱を呼ぶのか……。


もし、この甘美な狂気に少しでも胸が締め付けられたなら、

ぜひ【ブックマーク】や【評価】をいただけますと幸いです。


明日からは1日1話の投稿予定です。

ブックマークしてお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ