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「役立たず」と捨てられた聖女、かつて救った魔王に拾われる 〜「監視」だと言う割に、その視線が甘すぎて溺愛が隠せていません〜  作者: レオン・クラフト


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第17話:魔王城の晩餐会、あるいは静かなる嫉妬

魔王城の大広間は、水晶のシャンデリアが放つ冷たい光と、重厚な薔薇の香りに満ちていた。

 今夜、城を訪れているのは、北方の有力な領主である公女セラフィナとその随行員たちだ。彼女は魔王の幼馴染であり、この国において最も「王妃」に近いと目されてきた女性だった。


 エリスは、ゼノスの傍らで立ち尽くしていた。

 漆黒のドレスに身を包んだ彼女の首元には、あの日ゼノスが刻んだ鎖が鈍く光っている。その存在は、この場にいる誰に対しても「彼女は私のものだ」と無言で叫んでいるようだった。


「――お久しぶりね、ゼノス。相変わらず、可愛げのない顔をしていること」


 扇子を優雅に閉じ、セラフィナが歩み寄る。彼女の瞳は、エリスを「一人の女」としてではなく、まるで鑑定すべき「古い家具」でも見るかのように冷徹に射抜いた。


「それで? その隣にいるのが、噂の『拾い物』かしら? 聖教国が捨てたゴミを、わざわざ玉座の隣に置くなんて。貴方の美意識も随分と地に落ちたものね」


 広間に、凍りつくような沈黙が流れた。

 エリスは指先を強く握りしめた。蔑まれることには慣れていたはずなのに、ゼノスの尊厳まで汚されたようで、胸の奥がチリチリと痛む。


 だが、ゼノスは眉一つ動かさなかった。

 彼は手に持っていたグラスを、傍らの従者に無造作に預けると、一歩前に出た。そして、エリスの肩を引き寄せ、彼女の髪に指を潜り込ませた。


「セラフィナ。お前の言葉選びは、相変わらず私の不快感を煽るのが上手い」


 ゼノスの声は静かだった。けれど、その背後から溢れ出す漆黒の魔圧は、広間の空気を暴力的なまでに支配した。周囲の魔族たちが、その重圧に耐えかねて次々と首を垂れる。


「……だが、この女を『ゴミ』と呼ぶことは許さない。これは私が、生涯をかけて『監視』すると決めた唯一の、そして最後の獲物だ」


 ゼノスはエリスの腰を、骨が軋むほどの力で抱き寄せた。

 そして、セラフィナに向ける視線とは対照的な、狂おしいほどに熱い、どろりとした瞳でエリスを見下ろした。


「お前のその濁った視線が、私のエリスを汚している。……これ以上、彼女をその目に映すな」


「あら……。そこまで言うのね」


 セラフィナが不敵に微笑む。

 彼女はエリスに近づき、耳元で密やかに囁いた。


「気をつけてね、小娘。その男の愛は、祈りよりもずっと重くて……いつか貴方の羽を、根元から毟り取ってしまうわよ」


 エリスは答えられなかった。

 ただ、自分を抱きしめるゼノスの手が、微かに震えているのを感じていた。

 それは恐怖ではない。自分を他者の目に晒すことへの、抑えきれない嫉妬と、彼女を自分だけの深い闇に閉じ込めてしまいたいという、狂気的なまでの渇望の震えだった。


 華やかな夜会の裏側で、二人の間の沈黙は、より深く、より逃げ場のないものへと変わっていく。

 ゼノスはそのままエリスを連れ、夜会の主役であることを放棄するかのように、無言で広間を去った。

「私だけの獲物」

他者からの蔑みを、圧倒的な支配欲で跳ね返すゼノス。

セラフィナの登場によって、彼の「静かな嫉妬」が初めて公の場で爆発しました。

エリスを世界から隠したいと願う彼の独占欲は、もはや誰にも止められません。


聖女から魔王の所有物へ。

その立場が明確になったことで、エリスの心にも「彼を独占したい」という

無意識の芽生えが生じ始めています。


物語の規模は、ここから魔王領を揺るがす権力争いへと拡大していきます。

それでも、二人の視線がぶつかる時の「溜め」だけは、どこまでも丁寧に綴らせてもらいましょう。


もし、この冷たい夜会の熱に当てられたなら、

ぜひ【ブックマーク】や【評価】をいただけますと幸いです。

レオン・クラフト

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