11話 これから
えー前回の更新から半年以上空いてしまい大変申し訳ありませんでした!!!この作品にいいねや感想が想像の何倍もきて逃げてしまいました。本当に申し訳ございませんでした!この作品は今回の更新で最終回となります。何卒よろしくお願いします。
「白石さん、今日時間ある?」
ホームルームが終わり、クラスメイトが駄弁ったり、部活へ行く中、俺は教室を出ようとする白石さんに声をかけた。
「これから図書室で受付するんだけど、どこかに行くの?」
「いや、ただ白石さんに見てもらいたいものがあるんだ」
「なら一緒に図書室へ行きましょう。最近人が来ないからゆっくり話せるわ」
「わかった。ありがとう」
図書室へ向かう時、外から運動部と思われる声が聞こえた。ホームルームが終わったばかりだというのにもう活動しているのか。
「テストの結果はどうだったの?」
「全体的に平均くらい。でも国語が低かったな、特に古文。白石さんは?」
「私も似たような感じだけど、数学で計算ミスしちゃって平均より低くなっちゃった」
「あぁ。今回のテスト、一問目の答えを間違えたら全部合わなくなるからねー」
「計算式は合ってたから部分点をもらえたけど、やらかしちゃったなー」
先週終わった中間テストの結果について話していたら、いつの間にか図書室に着いていた。ドアを開け中に入ると、冷房が効いていて少し肌寒く感じた。
「……」
「……どうしたの?」
「ううん。なんでもない」
「待ってて椅子を持ってくるから」
白石さんが図書室の奥から持ってきた椅子を借り、俺たちは受付の机に横並びに座った。
「それで?何を見てほしいの?」
「……これ……なんだけど」
俺はスマホを取り出し、とある画面を開いて彼女に渡した。
「これって小説?」
「……俺が書いたやつ」
「えっ!?」
驚いた白石さんは俺の顔とスマホの画面を交互に見た。俺は恥ずかしくて目をそらしながらも小説を書いた経緯を話した。
「あの日から、あいつらと一緒にいることを気にすることはなくなった。でも、やっぱり堂々と隣にいてもいいって自身が持てるものがあったほうがいいと思った。だから、今までやったことがないことをとにかくやってみようって」
「それで小説を書いたの?」
「最初に思い付いたのがそれだった。元々本は好きだったし、自分で展開を考えてみたりしてたから」
「……」
「それでお願いがあるんだけど……」
俺はしっかりと白石さんの方を向き、頼み込んだ。
「これから俺が書いた小説を読んで、感想を聞かせてほしい」
「……感想?」
「感想というよりダメ出しかな?今まで書いたことがないから書き方がよくわかってなくて……」
「私も書いたことはないからきちんとしたアドバイスはできないと思う……」
「そんなことない。白石さんは俺よりも本を読んでるし詳しいでしょ?白石さんの意見は絶対ためになる」
「うーーん……」
白石さんは首を傾げながら決めかねていた。
……迷惑だったかな。
断られても仕方がない。白石さんには何のメリットもないのだから。
「ごめん、やっぱり今の話は無――」
「一つ聞きたいことがあるんだけど……」
俺が今の話をなかったことにしようとすると、白石さんが俺の言葉を遮った。彼女が俺の方を向く。眼鏡越しの彼女の目がしっかりと俺を捉えている。
「小説を読んでほしいって頼んだのは私だけ?」
「……え?」
「頼んだのは私だけなの?」
「……うん、そうだけど……」
「どうして?」
彼女の問いかけの回答を考えるが頭が回らず固まってしまう。
「小説の感想がほしいのなら他の人にも頼むか、webにあげた方がいいと思う。その方がいっぱい感想もダメ出しももらえる」
「……そりゃあ、いつかは読んでほしいと思ってるけど、それはまだ恥ずかしいっていうか、怖いっていうか……」
「……私はいいの?」
再び彼女の問いかけ。俺はようやく回り始めた頭でその問いかけに答える。
「さっきも言ったけど、白石さんは俺よりも本を読んでるし小説に詳しい。上達するには白石さんに聞くことが一番だと思った」
これは紛れもなく俺の本心だ。白石さんの助言が上達に繋がると信じている。そして――
「……」
「黒川君?」
「……その、……小説を書き終えて誰かに読んでほしいって考えたときに、最初に思い浮かんだのが白石さん、だった……から……」
「……」
二人の間は沈黙に包まれた。俺は耐えきれず下を向いた。
はっっっっっっっっっっっず!!!!!!
俺は顔を熱くし、冷や汗をだらだらとかきながらズボンをぎゅっと握りしめた。きっと他の人が見たら「この人、酒飲んでるの」と聞かれるのではないかと思うほど真っ赤になっているだろう。
いや勘違いしないでほしい。別に変な意味で言ったわけじゃない。小説の物語、登場人物、慣れない執筆、テストが終わってから約一週間、寝る間も惜しんで書いたのだ。時に保存し忘れてデータが消し飛んだりしたが頑張ったのだ。一週間もかかって一万文字しか書けてなくても人生で初めて書いた物語なのだ。そりゃあ誰かに読んでほしいじゃん!でもダメ出しを求めるなら詳しい人がいいじゃん!詳しい知り合いとなると白石さんか花じゃん!花はクラス離れてるけど白石さんは同じクラスで隣の席じゃん!もう白石さんしかいないじゃん!
俺は誰に言うわけでもなく頭の中で言い訳を並べていた。白石さんに気持ち悪がられたと思いながら。
てか白石さんも何も言わないんだけど!顔見れないんだけど、怖くて顔上げらんねぇよ!
俺はすでに黒歴史となりかけている数分前の自分を殴りたい衝動にかられていた。が、そんなことを考えているうちに、二人の間の沈黙がついに破られた。
「そういうことなら、いいよ」
「へ?」
「黒川君の小説読んであげる」
「ほ、ほんとか!」
「うん」
俺は勢いよく顔を上げ白石さんに確認した。白石さんはいつものように笑顔で答えた。どうやらさっきの発言に対して特に何とも思ってないようだ。
「でも私からも条件があるの」
白石さんの反応にほっとしたのも束の間、彼女がそんなことを言ってきた。
「もちろん何でも聞くよ!」
「ほんと?それじゃあ……」
こちらの我が儘を聞いてもらうのだ白石さんがどんな条件を言ってこようが必ず守る覚悟だ。
「それじゃあ……、今後書き終えた小説、必ず最初に私に読ませて」
「………………それだけ?」
「うん」
予想外の条件に俺は一瞬固まってしまった。俺としては卒業までパシリや荷物持ちをするつもりでいた。まあ白石さんがそんなこと頼むわけないとは思っていたけど。
「本当にいいの?他の条件じゃなくて?」
「うん。他にお願いしたい条件が無いわけではないんだけど、それだと卑怯になるから」
「?」
白石さんの言ってる意味はよくわからなかったが、本人がこれでといいと言ってる以上、俺からは何も言うことはない。
「それじゃあ、さっそく読ませていただくね」
「よ、よろしくお願いします」
白石さんは俺のスマホを開き小説を読み始めた。図書室が再び沈黙に包まれる。その中で俺はさっきとは別の意味で冷や汗をかいていた。
怖えええええええええええええええ!!
白石さんが画面をスクロールするたびに、胃が痛くなっていく。自分が考えた物語を人に読まれることがこんなにも怖いこととは思わなかった。小説を書いているすべての人を心から尊敬する。別のことで気を紛らわそうとスマホを取り出そうとするが白石さんが使っていることを忘れていた。
……白石さんのスマホに送ればよかった。
仕方なく俺は近くの本棚から適当な本を取り読み始めた。が、隣のことが気になって全く本の内容が入ってこない。結局、俺は白石さんが読み終えるまでただ待つことしかできなかった。
「読み終えたよ」
白石さんが読み始めてから約三十分、俺はようやく地獄のような胃痛から解放された。
「さっそく感想を言うけど」
そしてすぐに新たな胃痛が始まる!俺小説向いてないかも……
「結論から言うと全然だめだね」
「うっ!」
「この小説とても読みづらかった。小説って一人称と三人称の小説のがあるんだけど黒川君の小説はそれが交互の出てきてとても読みづらかった。どっちか一方にしないと読まれないよ。あと、誤字が多い。ざっと見た感じ二百字に一個はあった気がする。書くときはちゃんと漢字とその意味は調べないと。ああ、それから――」
そこから十分ほど俺の小説へのダメ出しは続いた。白石さんのマシンガンのようなダメ出しに対して俺はただ呻くことしかできなかった。
……やっぱ白石さん詳しいじゃないか。
「――といった感じだったかな。わかった?」
「はい。……ありがとう……ございました」
ダメ出しが終わったころには俺のライフはゼロ寸前。ただ机に伏せることしかできなかった。
「大丈夫。初めて書いた作品は皆こんな感じになるよ、たぶん」
はい今止めを刺されましたー。
俺は陰気なオーラを放ちながら唸り始める。ダメ出しの多さに以前の自己肯定感ゼロの自分がひょっこり顔を出し始めた。
「ふふっ、ここまで散々ダメ出ししたけど、物語のアイデア自体はよかったと思うよ」
「!」
俺は失われたライフを急速に回復させ顔を上げた。
「さっきダメ出ししたところを直したらかなり面白い作品になると思う」
「っし!」
「あ、ただの一読者としての意見だからね。きちんと小説の書き方を調べないと。私も間違えたこと言ってるかもだし」
それでもうれしかった。自分の作品をほめてもらえたことが。
「それじゃあ今後について決めましょう」
ガッツポーズをとる俺を見ながら白石さんは提案してきた。
「これから毎週木曜日、私がここの当番の日に修正した小説と、それとは別に新しい小説を書いてきて」
「え!?」
「上達したいのならこれくらいしないとね」
「ちなみに文字数は……」
「もちろん一万文字で」
白石さんの提案に口を引きつる。
薄々気づいてたけど白石さん結構スパルタだな……
「その代わり私も小説を書くわ」
「え!なんで?」
「私自身が書いたことないのに偉そうにアドバイスなんてできないでしょ?」
あなたさっき俺にマシンガン撃ってきましたよね。
「だから、私の小説はあなたが評価してね」
「それははい、もちろん」
「私もダメ出しもらわないように頑張らなくちゃ」
「ソダネー」
白石さんの意気込みを聞きながら俺は次の作品の構想を練っていた。一万文字も書かなければならないのだ、初心者の俺は頭を抱えて悩んだ。
「ふふふ、そんなに悩まなくてもいいのに」
「悩むに決まってるよ。そんなポンポンアイデア生まれないし、語彙力乏しいし」
マシンガンで撃たれたくないし。
「大丈夫。どんな作品でも、私は好きよ」
ドクンッ!
白石さんの言葉に鼓動が高鳴る。
「基本的に私嫌いなジャンルとかないし――」
わかっている。彼女が言ってた通り、今のは作品に対して言ったのだ。
――好きよ――
頭ではわかっているのに自分の鼓動がどんどん大きくなっているのを感じる。そんな鼓動や他の言葉はあの三文字の前ではひどく遠く感じる。今までだって何度も聞いたことはあるし言われたこともある。なのに、彼女が言ったときだけとても――
「黒川君?聞いてる?」
「ご、ごめん!急用思い出した!そろそろ帰るわ!」
「え?あ、うん」
鞄を背負い急いで図書室から出る。
「黒川君!」
俺は白石さんの声で足を止め、振り返る。
「また明日」
「……また明日」
俺は前を向き、廊下を走り去った。二週間ほど前と同じように。ただし、以前とはすこし異なってる。それは――
あああああああああああああああああ!!!!!
ここまで読んでくださりありがとうございました。これにて今作は完結となります。本当にありがとうございました。




