宣戦布告
校舎に向かう途中、俺に視線を向けてくる奴がいた。
目的が何なのかわからないが、俺は向けてくる視線に気づかないフリをした。気づかないことに危機感を覚えたのか走って俺の所に来たのはユーリだった。
「どうしたユーリ。さっきから木の陰に隠れていたようだが?」と尋ねた。
「いや…その…」と中々話してくれない。
「出来れば話して欲しい」と俺が口にした瞬間、「僕は、アレンと一緒に教室に行きたかった」と勇気を出して言った。
「いいよ!ユーリ一緒に行こう」と答えた。
「あ、ありがとうございます」
「全然いいよ。ただ顔を上げて前見てよ」
「え?」とユーリに前を向かせるとリサとガイルが待機していた。
「アレン待っていたぜ!」とガイルが俺の肩に回した。
「ガイル…重い」
「お、悪りぃ」と俺から離れた。
「おはよー。アレン」とリサは満面の笑みで挨拶をしてくれた。
「リサおはよう」と挨拶を返した。
「ユーリもおはよう」とリサが挨拶すると、「あっ…はい!おはようございます」と挨拶をした。
「よう!」とガイルはユーリに軽く挨拶をした。
「おはようございますガイルくん」と挨拶をした。
「それじゃあ行こうか」と俺たちは底辺クラスに向かった。
教室に入る前、何やら騒がしかった。
(…朝から一体何が?)
俺は扉を開けて中を確認した。
そこに居たのは昨日知り合った人たちが注目されながら立っていた。
俺たちが入ってくると、「おはようアレン君」と陽気な挨拶をこちらにしてくる。
「確かレオンだったな」
「うん。レオンだね」と名前を言うと「ほら謝れ」と二人に対して言っていた。
「昨日は迷惑をかけてすみませんでした」と前歯が無くなった状態で挨拶をしてくれた。
「ユーリ。昨日殴って申し訳ない」と目をつぶって謝っていた。
「何だこれは?」と俺が疑問持つと、「ん?昨日の品のない数々に対して謝罪してくれているんだ」とレオンは綺麗な碧眼の瞳で言ってきた。
「ユーリ・ライアンごめんね。僕が王族・貴族クラスのリーダーでありながらクラスメイトが君に対してした行為を聞いて自身が許さなくてそこの二人に昨日の夜怒ったんだ」とレオンが言うとコールとキーンの二人は震えていた。どうやらコテンパンにさせられたらしい。
「いや、僕はもう大丈夫です」
「そういってくれると僕もありがたい。何故なら君の母と僕の母上は知り合いだからね」
「母から聞いたことあります。レオン様」とユーリの口からも言った。
「そうだよな。母上同士が友達だからこうして一度話してみたいと思ったんだ」とレオンはユーリとの距離感を掴んでいた。
(もう俺がここで立っている意味ないな)
俺は昨日座った席に座りに行こうと歩き出すとレオンは「待った!」と右手を俺の右肩に置いた。
「何?」と俺が尋ねると「ちょっと待ってて」と言った。
「二人は帰っていいよ」と言うとコールとキーンは逃げるように教室から出ていった。
おそらく二人は底辺クラスに頭を下げて謝ったことが自身のプライドを傷つけてしまったんだろう。
「ごめんね。個人的にはアレン君とお話ししたかったんだよ」と言った。
「何のようだ?」
「君がキーンにした行動についてだよ」
「殴ったことに対する話か?」
「そうだよ」
「アレは正当防衛だ」
「確かに君の言うことは正しい。ただ僕はそんな結果よりもやり方に興味を持ったんだよ」と綺麗な碧眼の瞳がアレンのことを見つめていたり
「君は、わざとキーンに対して挑発して殴られた…正解でしょ」と自信満々に推理を披露した。
「さあ、覚えてないな」
「そうやって答えをはぐらかすんだ?」
「本当に記憶にないだけだ。期待するな」
「僕はこう見えて、人を見る目はあると自負してる」と急に話し始めた。
「今までいろんな人を見てきた学者や政治家、アスリートや魔法学者など様々な人と出会ったことがある。そんな人たちよりもアレン君の纏うオーラに興味がある」
何故ガイルといいレオンといい、俺のことを持ち上げる。
「それで?話は終わりか」
「いや終わりじゃない。ここからが本題だ…。勝負しようか」とまさか決闘に誘われた。
「勘違いしないで貰いたい。ただの学力勝負だよ」と言った。
(急に脳みそがガイルになったかと思った)
「何か失礼なこと考えてない?」とリサが言った。
(何故わかる?)
「今まで僕は負けたことがない」と話し始めた。
(ほう…それは凄いな)
「だからさ退屈なんだ」とどこか悲しそうな顔をした。
「つまり退屈な人生から解放されたいと?」
「話が早くて助かるよ!だから勝負しよう!」とさっきまでの威厳はなく子供のように目を輝かせて俺の答えを待っていた。
「メリットがない」と俺は一言いうとレオンは笑みを浮かべて「じゃあ…次のテストでアレン君が勝ったら一つだけ君の願い叶えよう」と言った。「もちろん僕は勝ってもアレン君に対して何もしない」と口にした。それを聞いたクラスメイトの皆は騒ぎ出した。近くにいたリサ、ガイル、ユーリもレオンの言った言葉に耳を傾けた。
(罠か…?何か俺は知らずのうちに目の前にいるコイツに狩られそうになっているのか?)と考えていると「心配ないよ。これはただの遊びだよ」とレオンは笑顔で俺に言ってきた。
「じゃあ俺の願いがレオン・スクロフトの退学だったら?」と刺激を与えた。
「フッフッフッ…フハハハハ!」とレオンは笑い出した。
「いいね!僕相手にここまで言える人間はアレン君だけだよ!いいよ君が勝ったら僕が退学するよ」と言った。
すると教室の扉が開いた。
「レオン様!どうして底辺クラスに来ているんですか?」と銀髪ロングでグレーの瞳の女子が来た。
「ちょうどよかったイザベラ。生徒会に入った君にたのみたいことがある」とレオンがお願いした。
「え?お願いですか?」とイザベラと呼ばれた女子は首を傾げた。
「その…願いとは?」
「ただの承認だよ」
「承認ですか?」
「僕とアレン君の勝負内容だよ」と言いレオンはイザベラに事の経緯を話した。
「そんな一方的な勝負を受けるんですか?」とイザベラが当たり前の意見を述べた。
「心配してくれているのか?」
「だって負けたら…」と俺の方を睨んでいた。
「大丈夫だ。僕が一度でも負けたことはない」とイザベラにハグをした。
「レオン様…」きゅうに抱きつかれてイザベラの顔は赤面していた。周りのクラスメイトも戸惑いと嫉妬の空気が混ざっていた。
リサは、恥ずかしがっているのか手で顔を隠している。
「それじゃあアレン君。楽しみしてるよ」
「確か…リサさんだよね」と帰り際リサに話しかけていた。
「はい!」と返事した。
「先程の内容覚えてね」と伝えた後、レオンはイザベラと共に教室から出ると、カナ先生が教室に入ってきた。
「みんな席についてね!」