底辺クラス(四)
続いて僕らは食堂に来ていた。
食堂には学年全体が来るフリースペースとなっており、皆好き勝手にしていた。飯を食べたり、勉強していたりとしている人がいた。
食堂で看板を見てみるとやはり値段表記が違うことに気づいた。
「ねぇ、やっぱり値段がおかしいよ」
「間違いって訳じゃねえよな」
俺の両隣で二人は考察していた。
「明日カナ先生に聞いてみようよ」とリサが言うと、フリースペースで人だかりが出来ていた。
俺は気になったので「ちょっと見てくる」と言うと、二人もついてきた。
近くまで様子を見ると、メガネをかけている黒髪の男子生徒に対して男二人で嫌がらせをしていた。
「おいおいユーリさんよ!君はこんな所で勉強してもいい身分じゃないだろ」
「やめてあげろよコール!コイツは昔から友達がいなくていつも一人だったんだ」
「そうだった!すっかり忘れていたよ。お前友達がいなかったな」
するとコールと呼ばれていた男はユーリのノートを魔法で燃やした。
「まず、お前が行動するべきは底辺クラスで友達を作ることだろ。そうだよなキーン」
「コールのいう通りだ」
「だからまずは声を出す練習をしないとな」といいユーリに「立て!」と命令するとユーリは椅子から立ち上がった。すると次の瞬間コールがユーリのお腹を殴った。
その場にいた人々は『いいぞ!もっとやれー!』と焚き付けていた。
すると調子に乗ってキーンも一発殴った。
その様子を見ていて隣にいた筈の人と人狼がユーリの元へ行っていた。
「やめろ!」とガイルがキーンの手を掴んだ。そしてリサがユーリの手当てをしており何か話している。
「うん…?底辺クラスの分際で俺の腕を掴むのか」
「離せよ!人外」とコールは冷静にキーンが大声で言った。
二人はガイルに対して力任せで腕から離れようとしていない。それに対してガイルの方は二人に対して今にも殴りかかろうとしている。
「テメェらそれでも友達か!」
「友達だよ!」
「当たり前じゃん」と二人はくすくすと笑っている。
周りのギャラリーも『殴れ!』『やり合えー!』と焚き付けている。
これでレオンが来れば、その場で解決してくれるが俺には出来ない。ただ俺にもこの場の空気を変える事が出来る。
(目立つのはイヤなんだけどな…)
俺は、まず大声でガイルに言った。
「ガイル!二人を離してやれ!」と俺が大声で言うとギャラリーを含めコールとキーン、ユーリも俺の方を見た。
「チッ!」と言いながらもガイルは二人の腕を離して一歩引いた。
俺はそのタイミングでコールとキーンの所まで歩いた。その場にいる人々の目は興味津々で俺を見ていた。コールとキーンはこちらをみて笑っていた。
「何だテメェ!」とキーンがこちらに近づいた。
俺よりも背が低くて威圧的な態度を取られても感情が動かない。
「…何とか言ったらどうだ!」
俺が無視していると、「舐めてんのか!」と胸ぐらを掴んできた。
「何してる!」とガイルが俺たちの所に歩いてきたのを「ガイル止まれ」と冷静に言うと、「はい」と返事した。
いま完全に場の空気が変わった。ギャラリーも騒いでいたが徐々に静かになっている。
それはコールも感じており「キーン離してやれ」と口に出しても「何ビビっているんだ?コール」とムカついている。
「はぁ〜口だけなら誰でも強気に出れる」と俺は話し始めた。
「あぁ?」とキーンは殴るモーションをとっている。
「お前はどうせ後ろで見守っているコールが居ないと…何も出来ない」と言うとキーンは俺の頬に殴った。
それに対して俺もキーンを殴った。
俺の頬は腫れた程度でダメージは無かった。
ただキーンは違った。
その場で膝から崩れ落ちて口元を抑えている。
するとキーンの口から歯が二本とれていた。
「な、何で歯が取れているんだよ!」とキーンはその場で取り乱していた。
「俺の大事な歯が〜!」と前歯もなくなり、終いには泣き出した。
俺はその場から立ち去ろうと歩き出すと、ガイルとリサはユーリを連れてついて来た。
俺はあまり人がいない噴水場に来てベンチに座った。
すると「あの…ありがとうございました」と声が震えながらも俺に対して感謝した。
「マジで見ててスッキリとしたぜアレン」とガイルもキーンの様子を見て気分が晴れていた。
「それにしても大丈夫アレン」とリサが心配していた。
「何に心配しているんだ?」
「それは顔よ」と言いながら隣に座ってリサが魔法で治療してくれた。
「アレンは自分を大事にしないといけないよ」
「そうだね」と返事した。
「それで?君の事知りたいから自己紹介をしてよ」
「え?僕の名前ですか?」と聞き返すと、「アレンが言ってるだろ早く答えろ!」とガイルが圧をかけた。
「ガイルハウス!」と俺が命令すると、「その命令だけは受け付けないぜ!」とガイルは言った。
(ダメだったみたい…)
するとユーリは勇気を出して話してくれた。
「僕はユーリ・ライアン。貴族出身です」と言ってくれた。
「そうか。じゃあアイツらも貴族なんだな」と俺が言った。
「道理で身だしなみが良かったわけね」
「口から出る言葉は、相変わらず上から目線だったけどな」
(ガイル…それはお前だ)
「それじゃあユーリ。今日からよろしくな」と俺は手を伸ばした。
するとユーリは困惑していた。
「そうね。私たちは今日から友達ね」
「まぁアレンが認めるなら俺はいいぜ」
二人の右手は俺の右手の上に置いた。
「はい!それじゃあユーリの手も置いて!」とリサが言った。
「三人は僕が貴族なのに何とも思わないの?」と尋ねた。
「特に?」
「別に?」
「弱い奴等には興味ない」と三人は答えた。
その言葉を聞いたユーリは右手を置いた!
「それじゃあこれからよろしく!」と俺が言うと、『よろしく〜〜〜』と三人もそれに合わせて言った。
こうして俺たちの校内の散歩は終わった。