底辺クラス(二)
先生が教室の中に入ってきた。
俺はその先生を見た時、試験のことを記憶の隅から思い出していた。
面接時に俺の会話を文字起こししていた人だ。
余りにも若い先生が来たので驚いた。
「あの人、私が面接していた時に話したと人だ」とリサが言った。
「俺も面接で会ったことあるよ」
「一緒の面接官だったんだねー」とリサと話していた。
リサの内容から人によって誰が話すかどうか決めていたらしい。
先生は教壇に荷物を置いた後、黒板に名前を書き始めた。
「私はカナ・クレイ。このクラスの担任になりました。専門科目は薬草学です。はじめてクラスをもって緊張していますがよろしくお願いします!」と淡々と挨拶を終わると何人かの生徒が手をあげた。
そのうちの一人はリサだった。
「それじゃあ一番後ろに座っている子」
「はい」とリサ立ち上がった。
「私達のクラスはずっと底辺クラスで落ちこぼれなのでしょうか?」
その質問を聞いた俺は何言ってるんだと思った。
入学式で理事長ノアが底辺クラスはおとなしくしろと差別対象にならないように頑張れと私たちは差別に対しては傍観すると…俺はそのように解釈していた。
「面白い質問だね。でもその質問には答えられない」
「答えられないってことは底辺クラスじゃあ無くなる場合があるんですか?」
「いや、私たちは三年間、底辺クラスには変わらない。ただ、ここの学園の差別はクラスだけじゃないんだよ」と言った。
(差別がクラスだけじゃない…?どういうことだ)
「差別がクラスだけではないのですか?」
「それは近いうちに分かる」とこれ以上答えられないのかカナ先生は別の生徒の質問に答えた。
リサの質問のおかげで俺は一つ確信した。クラスだけじゃないのなら個人だ。個人で差がつく何があると思っていい。若しくは学年か…いろいろとこの学園は複雑だと感じた。
「それじゃあそろそろ皆んな自己紹介をして欲しい」とカナ先生が言った。
確かに自己紹介をしてクラスメイトとカナ先生の記憶に残るような自己紹介をしないとダメだ。
「じゃあ…一番後ろの黒髪の君!」と俺の方を見て言っている。
(おいおい…勘弁してくれよ)と立ち上がった。
「えっと…アレン・ロウです。趣味は特にない…。よろしくお願いします」と言い終え座った。
周りからはパチパチと軽い拍手が鳴り響いた。
(最悪…失敗した。出来れば何人かのお手本があればよかった)と心の中で嘆いていた。
「次は前の席の君」と言うとガイルが立ち上がった。
「俺は人狼のガイルだ。無理に友達にならなくてもいい。たださっき自己紹介したアレンに反感を買うヤツは俺が相手する以上だ!」とガイルも自己紹介を終えた。
するとクラスメイトの俺を見る目が畏怖なような感情になっていた。カナ先生も面接で圧をかけたのもあって思いっきりビビっている。
ここ底辺クラスの一番の問題児が認めた男として俺は肩身狭い思いをすると確信した。
(はぁ…これから先どうすればいいんだ)
それから順調に自己紹介が進みクラスメイト全ての自己紹介が終わった。
そして今日は授業はない。これからは自由時間だった。俺は周りの席にいる人が立ち上がっているのを確認して席を立ち上がった。すると隣にいたリサが「今から一緒に学園内を回ろうよ」と誘ってくれた。
俺は快く「いいよ」と答えたが、近くにいたガイルが「アレン何故弱いヤツとわざわざ絡む?」と俺に言った。
「お前みたいな人間がアレンに近づくなよ!」とガイルはリサに高圧的な態度をとっていた。リサを見ると人間じゃない人狼の高圧な態度にその場から逃げ出そうと条件反射で後退りした。ただそれは一瞬だけでリサは胸を張って「私はアレンと一番最初の友達よ!」と声を大にして言った。
そのタイミングで俺は「ガイル!」と名前を呼んだ。「何だ!」と興奮しているのか俺にも高圧的な態度だった。
「お前は俺の事を邪魔するのか?」と目を真っ直ぐ見つめた。殺意を向けて…。
その瞬間、ガイルの膝は一瞬で震えていた。
「いや…悪い。少し興奮してしまった」と反省していた。
もう大丈夫だろう…。
「それじゃあガイルはリサに謝って」
「な、何で!」
「さっきの君は酷かったからだ」
「アレン大丈夫だよ」とリサが言った。
「そうなのか?」
「うん…。それよりも私はガイルくんとも一緒に行きたいよ」と言った。
その言葉を聞いて俺は…「いいよ」と答えた。
「ホント!?それじゃあ三人で行こう!」と言い教室を出る時にリサは俺たちの手を握る。ガイルはとても戸惑っていた。おそらく女子ということもあるんだろう。さっきまでの高圧的な態度が嘘のようで完全に変化が起こっていた。
こうしてリサを先頭に俺たちは学園を回る。




