はじめての学園生活
朝の光が差し込む中、レオン・フォン・アスカルトは学園正門の前に立っていた。
その荘厳な門構え、左右に広がる蔦の絡まる石壁、魔力で動く自動開閉扉。レオンはそれをじっと見つめて、ふっと鼻で笑った。
「ふむ。まあ、合格点といったところか。僕のような才能を受け入れるには、これくらいの格式は必要だろう」
「坊ちゃま、入学式はもうすぐ始まりますよ。遅れると目立ちますから」
「むしろ歓迎だ。目立って何が悪い。僕はこの学園に名を刻む存在なのだからな」
「普通に過ごすだけで目立つ坊ちゃまが、わざわざ遅れて悪目立ちする必要もないかと」
「……それもそうだな」
「それに、坊ちゃま。今年の入学者の中には、第三王子のルシアン殿下を筆頭に、数多くの名門貴族のご子息がいらっしゃいます。あまり騒ぎを起こさぬよう、お願いいたします」
「任せておけ、セリス。僕は空気を読むのも得意だからな」
(坊ちゃまの“空気読み”ほど、信じられない言葉はないのですが……)
この学園は、貴族の子息が数多く在籍する格式ある場所だ。そしてレオンが注目を集めるのは、決して本人の言動だけが理由ではない。
(坊ちゃまのお兄様とお姉様の評判があまりに高く、加えて、付き添いの私が目立ってしまうのも……)
セリスは自分に向けられる生徒たちの視線を感じながら、そっとため息をついた。
校内へと進むレオンとセリスの姿に、周囲の生徒たちの視線が集まる。
「……あの人、誰?」「新入生?」「かわいい……」
レオンはそれに気を良くしたのか、堂々と歩を進めながら宣言するように言った。
「今日という日は、学園史に刻まれる一日になるだろう」
(すみませんみなさんこの子の発言を記録から削除して……)
こうして、学園生活の第一歩が、いつも通り少し斜め上のテンションで始まったのだった。