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手持ちの気持ち

 痛い、とにかくあちこちが痛い。戦いの後は大体こうだ。

 隣の部屋に押し込められている同僚は気を失っている。俺が交代したとき、あいつは瀕死になっていたからだ。

「テンテンテロリン」

 妙な機械音と共に、傷や疲れが一気に吹っ飛ぶ。この音を聞くと、俺は嫌な気分になる。回復したということは、また同胞との無意味な戦いに駆り出されるということだからだ。

 

 控室で飼い主が俺たちを部屋から出し始めた。今日は大会のようだ。コンディションや状態を確認するために、いつも大会の前はこうしている。

「先輩、俺、今まで怖くて聞けなかったんですけど」

 新人が話しかけてきた。昨日瀕死になっていたやつだ。そいつは唾をゆっくり呑み込んだ。

「先輩って、何年ここにいるんですか」

 俺はため息を吐き、人語を熱く語る飼い主に一度視線をやる。当初から何を言っているのかはわからない。隣の新人に死んだ目を向けた俺はこう言った。

「二十年」

 新人の表情は凍り付いた。息を吞み、恐怖で顔がこわばっていた。

 しかし無情にも会場のアナウンスは鳴り響く。俺たちは個々の部屋に詰め込まれ、いつ終わるとも知れない地獄の道を今日も歩むのだ。

 仕方ない、戦うしか生きる術がないのだから。

 俺は今日も奇声を上げて外に出た。

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