狼煙
こんにちは!作者です!
執筆活動の歴はあまり長くありませんが、描きたいものを書いていきたいと思っています。お時間があれば是非読んでください!
中性的で童顔なその人はルークを見上げながら低く落ち着いた声で一言。
「仕事の時間だ。」
「いつもお仕事お疲れ様ラッツ。そろそろ頃合いだと思っていたよ。」
玄関前に立っているのはラッツであった。歳の割にどこか抜けていて無表情な顔に付いているその目は全てを見透かしているように見えるが、全く何も考えていないようにも見える。
しかしその無機質な印象とは逆に最近下がり始めた気温のせいで鼻先と頬は赤くなっている。
「肌寒いしここで話すのもなんだろう、中で話そう。案内するよ。」
「ありがと。」
ルークが客人と別室で話す旨を皆に話してから2人は所長室に向かう。その道中で顔の向きを変えずにラッツが話を始める。
「今回はやはりと言うべきかウィーケンドテラーへの依頼が多い。それに加えて内容が少々妙だ。」
「そっか。それであの日のことについては?」
「ごめん、既存の情報以外はまだ。」
ガチャリとルークが扉を開ける。そしてお互いに向き合うように少し低めのテーブルを挟んで座ると同時にラッツは自身のカバンの中を探りながら話し続ける。
「資料も件数も多いから紙にまとめてきた物を今日は見てほしい。」
「妙な依頼があるってどれがそれなんだい?」
「全部だ。」
ラッツは3つの依頼について書かれた書類をテーブルに置き、ルークはそれらに目を通して内容を確認する。
「1つ目は死亡したはずの保安官が生活しているところを複数人に発見されていてそれについての調査。2つ目は不思議な言語を使う2人組とその言語の調査。」
「そう。そして三つ目が、、、」
そう言うとラッツはまたカバンの中を探り、一つのジッパー付きの小さい保存袋を取り出してそれをルークに手渡す。
「道端に落ちていたその拳銃を持ち主に返す依頼だ。」
「最後の依頼については保安局に任せたほうがいいと思うんだけどな。」
「いつもなら私もそう考える。けど、その拳銃のマガジンを抜いてみてくれ。」
「どういう事?」
「貴方なら見ればわかる。」
ラッツはルークに手袋を投げて渡す。手袋を手にはめて薬室に弾が入っていないことを確認してからマガジンを銃から抜く。
「これは、、、。」
「私はルーン文字を読めないが、その直線のみで構成された文字を見てルーン文字と断定した。」
「あぁ、正解。しかもあまり出回っていない24連ルーン文字の方が刻まれてる。」
「そうか、ならばやはりこの依頼を貴方に託して正解なのかもしれないな。」
「そうだね、この依頼を保安局にすれば依頼主は非公式の魔法使いの疑いをかけられるだろうね。そうなれば処罰対象だ。」
そう話しながらも首を捻りながら手元のマガジンを見つめ続けているルークにラッツは質問をする。
「何か変な内容が書かれてるの?」
「うん。こう言うのは普通使用者や作成者の名前、またはその用途がルーン文字で刻まれるのが一般的なんだけど、、、。」
「内容はなんと?」
「直訳するとそれを私に返せ。世界のためにって書かれているんだよね。」
「なるほど確かに変だ。」
しばらく2人はこの文の意味について考える。お互いに見解を述べるも有用な物は出てこず、ラッツは話を本題に戻す。
「あれこれ考えたけど私が必要なのはこの3つの依頼を受けるのかどうか貴方の意見を聞くこと。」
「諦めたな、ラッツ。」
「私は今遠回しに質問を貴方にしたのだけど?」
「ごめんごめん。3つ同時にはちょっとなぁ。」
「そう、じゃあどれを受k」
コンッコンッコンッ
急に所長室の扉がノックされる。ルークもラッツも人が来ると思っていなかっため軽く身を震わせるも即座にルークはノックに答える。
「どうぞ。」
「マッ、マーリーンです。お2人にコーヒーを持って来らひた!」
「最後盛大に噛んだね。」
ルークがそう言いながら所長室の扉を開けるとお盆を持ったマーリーンは申し訳なさそうに入室する。
「ゆっくり話せば大丈夫なんですけど、、、?」
「ん?」
コーヒーカップをテーブルに置く体勢のまま固まるマーリーンの視線をなぞるとそこには保存袋の上にある銃があった。
「誰かの落とし物らしい。マーリーン、その拳銃がどうかしたのかい?」
「この鉄砲の模様をどこかで見たような気がしまして、、、。」
「そっか、まぁ確かにこの年輪みたいな模様はよく見る物ではないよね。」
話がまたあらぬ方向に進むことを危惧したラッツは咳払いをして再度ルークに先程の質問への回答を求めた。
「すまない、依頼の話だったね。申し訳ないけど今回は最初の依頼だけ受けさせてもらえるかな。」
保存袋に拳銃を戻しながらルークはその静かな質問に答えると、ラッツは他の依頼に関する書類を片付け始める。
「現実的に考えるのなら貴方の選択は賢い。最初の依頼以外はあまりにも情報が不足している。」
「あぁ、しかも幸運なことにこの男の顔は先日の6番街事件の際に見たことがある。」
「そう。」
ルークから保存袋に入った拳銃をもらったラッツは帰り支度を済ませてから熱々のコーヒーを飲み干す。
「なら話は終わり。私はこの旨を依頼人に伝えてくる。あとはそっちで依頼人と諸々の情報の擦り合わせをして。」
じゃあねと言いながら椅子から立ち上がるラッツを見てルークも立ち上がる。
「見送るよ。」
「ん。」
「えっ、、とえぇっと。」
客人を迎え入れるのが初めてだったマーリーンは戸惑いながらもお盆を持ったまま玄関に向かう2人についていく。
そうして研究棟を出る時にラッツは暫く立ち止まって考える素振りをしてからマーリーンの肩に手を置く。
「コーヒーありがと。味の違いはわからなかったけど美味しかったよ。」
「ひゃい、良かったれす!」
若干チグハグな2人のやりとりにルークは再度吹き出してしまっていた。
※※※
同日某所にとある祭壇の前で男は両膝を着きながら両の手を結び、祈りを捧げていた。
「薪を火種に焚べよ。罪と澱みに禊ぎと流水で以って我等に拝領は与えられん。しかして罪を知らぬ者に禊ぎは成し得ず、また澱みを呑む者は清流を吐く。ならば我ら、世も共々に焼かん。」
この度はお読みいただきありがとうございました!
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