明日の私
こんにちは!作者です!
執筆活動の歴はあまり長くありませんが、描きたいものを書いていきたいと思っています。お時間があれば是非読んでください!
今までよりちょっと長いですが、最後までお付き合いくださいっ!
外には人々が無数の人型の影に襲われる惨状が広がっていた。
「皆さんっ!こちらに避難を!」
「おいっ押すなよ!」
「何なんだよあの怪物はっ!?」
保安官が民衆に避難誘導をしていたが皆、我先にと当てもなく逃げていた。数名の保安官が人型の怪物、アイブスの対処に当たっていた。
「クソッ弾丸一発で消えるけど焼け石に水だっ!数が多すぎる!」
「一般保安官の装備では解決できないな。そこのお前Rootsに支援要請を送れ!」
「承知しました!」
ルークはその光景を見て驚愕をしながらも思考していた。前に遭遇した時は一体出てきただけなのに対して今回は大量のアイブスが発生しているのだ。
「その違いは?どういう原理でアイツらは発生している?」
ふと横を見れば少女は酷く怯えていた。過呼吸気味になり、顔は真っ青になっている。何か喋っているようだったが喧騒に飲まれてルークには上手く聞こえなかった。
「所長!避難準備全員終わりました。首尾は、、、っ!!これは!?」
クルヴェルは冷静な声でルークに話しかけたが、外の惨状を見て思わず声が上擦る。出てきた他の研究員も同じ様に目の前の地獄に亜然としていた。
「この状況について理解する必要はない。避難が最優先事項だ。第二研究棟に避難しろ!」
「逃げてどうにかなりますかねぇ!?」
「逃げないとどうにもならんっ!」
ルークは余りの出来事にパニックになっている研究員を一喝し、クルヴェルと目を合わせる。
「クルヴェル、第二研究棟までみんなを先導してくれ。それとこの子を頼む。体調が優れないようだから優しく接してやってくれ。」
「所長はどうなされるんですか?」
「アイツらを食い止める。保安官が対処してはいるがこのままではジリ貧だ。それに所長として君たちを守りたい。」
「、、、。その目をされている時は何を言っても無駄なのは知っています。分かりました。」
「優秀な部下だな。みんなを頼んだぞ。」
少女をクルヴェルに預けて、ルークは踵を返す。
「ちょっ、所長!何してんすか!?」
「皆さん行きますよ、ほら。」
ルークはクルヴェルに連れて行かれる研究員の声を聞いて安堵し、アイブス達に目を向ける。
「いるのはアイブスと市民のご遺体だけか。御親族の人には申し訳ないな。」
ルークはそう呟くと手を前に突き出し、詠唱する。
「武神よ。名もなき巨人をその泥酔の片手間に契りも露知らぬまま頭蓋を砕き、駿馬の逸話の贄を成せ!ドランキッド!」
詠唱が終わった瞬間、鼓膜を刺す轟音とともに多くのアイブスが消えた。
「ふぅ、次っ!」
「魔法使い、、、。先輩どうしますか?」
「先日の件と関係あるかもしれんが今はそんな事を気にしている場合ではない!」
その後何人かの保安官も加勢に入り、ルークが魔法を使い続けても前線は少しずつ後退していく。アイブスを倒せどそれを上回るスピードで無限に何処からか湧いて出てくる。
ルークの体感10分程度戦った頃、保安官がたまらず叫ぶ。
「数が多すぎる!おいっ支援要請したRootsはまだか!?」
「あと5分ほどで着くそうです。」
「チッ遅せぇな!このままじゃ、、、」
「ギリギリの防衛ラインが突破される。」
最悪の事態を予見したルークは詠唱を止めて何か進行を食い止める方法がないか一度観察する。
「っ!、、、あれは!」
アイブスの軍勢の最後尾にある一際色の濃い影が地面から伸び、その付近からアイブスが生まれていた。アイブスの数が多かったため今まで気付かなかったのである。
「簡易詠唱、ヴィクトール!」
ルークの放った魔法によって、地面から生えていた影はアイブス同様に霧散したのと同時にアイブス全体の動きが止まった。
「っ!!今だっ!」
一瞬の沈黙の後保安官の誰かがそう叫ぶと、アイブスは次々と銃弾に撃ち抜かれて消えていく。
「後ろに生えていた影を攻撃すればヤツらは増殖と攻撃をやめるのか。」
ルークは安心して考察を始めながら、先に逃げた研究員の方に目を向けた。そんなに距離が離れておらず、もう少し気付くのが遅ければ大きな被害が出ていた事が想像できる。
表情はよく見えないが、少女はやはり依然として俯いていて呼吸が苦しそうな様子だった。
ー本当の災厄まであと数秒よー
そんな言葉が少女の頭の中で木霊していた。それは数回しか聞いたことのない自分の声で、誰かが頭の中で繰り返しそう囁いていたが、次の瞬間から言葉が変わる。
ーやっと出来そうに⬜︎った自分の居場⬜︎が消え⬜︎しまうのよ。ー
ーやだ。ー
ーそうよね、いやよね。ー
しっとりと生温かいその声が変に少女の脳に絡みつき、心を支配していく。
ーさぁ願って。何もか⬜︎全部壊⬜︎て⬜︎⬜︎う前に。ー
ーやめて!!ー
一方、防衛ライン付近では全てのアイブスが討伐されたが、地面が再度大きく揺れていた。
「なんだ!?また地面が揺れて!」
「やっと全部倒したってのに、、、!」
「総員、気を抜くn」
その瞬間、爆音とともに5エリムほどの身長のアイブスが現れたのと同時に近くにいた保安官全員の腹部が爆ぜる。
「うっ、撃てぇ!」
弾丸は当たるも、ソイツは消えない。そのアイブスは撃ってきた保安官達の方に腕を掲げると、その保安官達の腹部も勢いよく爆ぜる。保安官達は力なく地面に倒れ、その胴体からは折れた胸骨や内臓が露わになっている。虚ろな瞳には自身の血液がねっとりと付いている。
「ひっひぃぅう!」
恐怖に震えながら最後の1人の保安官が悲鳴をあげるとその治安官の腹部も破裂する。
「ルーク!逃げて!ルーク所長!」
「はっ、、、はぁっ、、せっ、せ」
クルヴェルが叫ぶもルークの身体は立ったまま一切動かなかった。瞳孔は開き、その両目の焦点は定まっていない。
そのアイブスはゆっくりとルークの方に腕を向け始める。
ーさぁ、願って。あなたが願えばあなたの大切な物はわたしが守る。ー
ー願うってなに、、、を?ー
少女の頭の中には依然として声が響いている。朦朧とした意識の中で、少女は自分を抱きながら叫んでいるクルヴェルを見る。
ーさぁ、願って!あなたの望みを!ー
ーわたしは、、、私は⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎!!ー
少女が心の中でそう願った瞬間その小さな体躯が動き出す。クルヴェルから離れ、据わった双眸でアイブスを見つめて両手を突き出し、その口で言葉を紡ぎ始める。
「抜髪、偶発、神聖、勝利の代名。神間と混沌の中で奮せたし、呑知の槍よ今一度この場でかの威光を示して我に勝利をもたらし給え。グングニル。」
刹那、ルークの目の前にいたアイブスは少女によって作られたまばゆい光を放つ魔法の槍に貫かれる。
ヴァァァアアアァァ!!
アイブスは断末魔を残し、消滅する。
その場には、数個の保安官の死体と立ち尽くしているルークのみが残っていた。
ー薪は手に入った。あとは雑多な意思の海に隠れた火種を探すだけ。ー
この度はお読みいただきありがとうございました!
今回のお話は面白かったでしょうか?誤字・脱字がありましたらご指摘をお願いいたします。少女の身にいったい何が!?この先の展開を楽しみにして続きをお待ちくださいませっ!
また、ブックマーク・評価も併せてお願いいたします!