非歓迎ムード
こんにちは!作者です!
執筆活動の歴はあまり長くありませんが、描きたいものを書いていきたいと思っています。お時間があれば是非読んでください!
「いえ、ダメに決まっていますよね。」
目の前のこの女性、クルヴェルは冷たくしかし冷静にそう言葉を吐き捨てた。
ーこの発言に至るまで遡ること数時間。
「いやいや!マズイどころか」
「ひゃうぅぅ!」
「君才能アリだよっ!」
「、、、ふえぇ?」
自身に向けられた言葉を理解できずに少女は思考する。目の前の青年は自分の魔法書を勝手に読まれて怒っているのではなかったのか?それともルーン文字を読める人が嫌いなのか?
少女の思考回路が焼き切れそうになった時に青年は畳み掛けるように言葉を少女に投げかける。
「私のルーク魔法研究所で働かないかい。いや、是非とも働いて欲しい!」
「???」
その瞬間、少女の脳は完全にショートした。青年は怒ったかと思えば次はどこかで働かないかと持ちかけてきたのである。その目はグルグルと回ってあわや失神というところまで来て、ようやく青年は少女の異変に気付いた。
「ごめん、急にびっくりしたよね。順序立てて、ゆっくり説明しようか。」
そうして青年は自分の置かれている状況について話し始めた。自身の名前はルークであること、本業は魔法研究員で日々魔法とこの世界の歴史について研究していること。最後に副業で何でも屋をやっていてその帰り道に少女と出会ったことを話した。
ある程度状況と青年の望みが分かった少女は手話で伝える。
スッススッ
(つまり、ルークさんが本業として行っている魔法研究のためにルーン文字の解読を私に頼みたいと。)
「そう、私の研究所は私を含めてルーン文字を解読できるのが2人しかいなくて、猫の手も借りたい状況なんだよ。」
少女はしばらくの間考えた。確かに自分はルーン文字が読める。が、しかし自分が読めるのは日常会話程度のものであって難しい単語は分からないと。
考えている少女の様子を見て、青年改めてルークは言葉をつけ加える。
「勿論、働いてくれるなら衣食住は保証するし供与も発生するから心配しないで。」
(いえ、私、そんな難しい単語とか知らなくて。)
ルークは低く唸ってから、何かをメモの切れ端に書いて少女に見せる。少女が見ればいくつかの簡単な単語がルーン文字で書かれていた。
「これは?」
(お酒、、、ですね。)
「これは?」
(勝利、、、)
「じゃあこれは?」
(知識の根、、、ですかね?最後の文字ちょっと違うけど。)
「あ、ホントだ。、、、読めるね。」
(読めますね、、これぐらいなら。)
「採用。」
「!?」
「という訳で、新しいウチの魔法研究員です。」
「???」
場所はルーク魔法研究所。ルーク宅から車で1ダイン程度時間が掛かる場所に位置しており、小さな山の麓にある。少女はやっと飲み込めた状況が再度急展開を始めたため、また軽く目を回していた。
突然のルークの発言に理解が追いついていないのは他の研究員も同じであった。
「所長、状況はわかりました。しかし、急に研究員を増やすんですか?しかもこんな幼い子を?」
「まぁ、所長の話を聞く限り即戦力にはなりそうだし良いんじゃない。」
「いえ、ダメに決まっていますよね。」
目の前のこの女性、クルヴェルは冷たくしかし冷静にそう言葉を吐き捨てた。現在点、ここである。
「第一、何故身元もわからない少女を雇用しようと思ったんですか?何故保安局に引き渡すなり、故郷を探すなりしないんですか?」
「確かにそうだな、、、。自分本位に考えすぎていたかもしれない。」
まだ状況が飲み込めずに目を泳がせている少女を見てルークは再度反省した。目線を少女の高さと合わせてルークは優しく語りかける。
「すまない、私は自分の事しか考えていなかった。選択肢は色々あるけど、君はどうしたい?」
そう聞かれて少女は考える。身に余るほどの自由をこの先どのように使うべきかと。言われていた通り、保安局に引き取ってもらった方が一見安全そうに感じられるが、少女の中のある1つの可能性が頭をよぎる。
ーもし、そうなってしまうなら
「まっ、今すぐに結論出してという訳でもないし無理して考えなくて良いよ。君が後悔しない選択をしてね。」
というルークの発言により、まとまりかけていた少女の思考は一旦そこで停止してしまった。
一拍おいてクルヴェルがルークに疑問を投げかける。
「というか所長、この子の名前すら知らないんですか?」
「名前、、、そう言えば聞いてなかったな?」
「、、、呆れて言葉も出ませんね。たまにポンコツになりますよね、所長って。」
「君の名前を聞いても良いかな?」
(確かに自己紹介してなかったですね。私の名前はマーr)
瞬間地面が大きく揺れ、同時に外で爆発音が発生する。全員その場に膝をつき、いくつかの本棚が倒れる。幸い、揺れはすぐに収まったものの外では悲鳴と断末魔が入り混じっていた。
「落ち着いて!まずは必要最低限の物を持って来て!避難する!」
ただ事では無いと判断したルークはそう叫んで所長室にある必要な書類だけ持って、状況確認のために少女と外に出る。そして悲鳴と断末魔の原因を見て目を見開く。
「なっ、、なんで大量のアイブスが街中にっ!?」
外には人々が無数の人型の影に襲われる惨状が広がっていた。
この度はお読みいただきありがとうございました!
今回のお話は面白かったでしょうか?誤字・脱字がありましたらご指摘をお願いいたします。アイブスに襲われた街は一体どうなるのかっ!?この先の展開を楽しみにして続きをお待ちくださいませっ!
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