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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

電車に住む身体を欲する生首の亡霊。と私。と酔っ払い小太りおじさん。

作者: 本郷隼人

めちゃくちゃ短いです。脳死で読んでください。

「こんばんは。私、この電車の亡霊なの」


 仕事帰りの人気のない電車で、私の隣の席にいる少女が話しかけてきた。少女は7〜8歳程だろうか。容姿の特徴はその可愛らしいおさげと、"生首しかない"事だろうか。


「………………」


 微笑む生首娘をじっと見つめて、頬をつねる。そうか、夢ではないようだ。

 仕事の疲れからか、いつの間にか熟睡していて、そして目覚めたら横にいた。左隣に生首だけが座席に座っていた。いや座っているという表現は正しいのか。置かれているの方が相応しい気がする。

 いや違う違う。何故こんな所にいる。喋っている。訳が分からない。こんなの驚きを通り越して唖然だ。恐怖が湧き上がってこない。脳内が『何故』で埋め尽くされている。ホントに何故だ。


「私ね、大昔にお母さんに首と身体を分裂されちゃって死んだの。そしてお母さんは私の生首を風呂敷で包んで電車に置き去りにしたの」


 勝手に語り始めた。なんだコイツ。何故話せる死んでないのか。なんなんだ。笑顔で話すなそんな内容。


「それでね。私はいま身体が欲しいの。身体があれば歩けるしね。それで、この生首が誰か人間に触れられれば、その身体を手に入れられるのね」


 生首が見上げていた視線を落とす。コチラの身体を舐め回すように見ている。


「な、なに……」

「お姉ちゃん、綺麗だなぁ……。私、お姉ちゃんみたいなスラッとした身体が欲しいなぁ」

「…………ッ」


 瞬間、忘れていた恐怖が全身を走り鳥肌が立つ。

 ああ、悟った。これはダメだヤバい奴だ。絶対ダメだ「お姉ちゃんの身体ちょーだぁーいぃ!」とか言って私の身体乗っ取る系の怪異だ。その後私の生首だけが電車内を彷徨う感じの奴だコレ。めっちゃ漫画とかで見た事あるヤツだ。あーあーヤバい。今更怖くなってきた。

 そんな怯えているであろうコチラの顔を見てか、生首娘は更に口角を上げた。あ、終わった来るこれ死んだ。


「お姉ちゃんの身体ちょーだぁーいぃ!」

「ひぃ!」


 こうして人生の終わりを悟った瞬間だった。


 ――――ガタンゴトン、大きく車両が揺れた。それの影響で生首が遠く向こうへ転がっていった。


「「――あっ」」


 という声をお互い出して、そしてコロコロ転がって行った生首は、


「ウヒィ……ここぁどこだぁ……」


 扉を開けて別の車両からやって来た、小太りの酔っ払いおじさんの足にぶつかった。


「「――あっ」」


 とまたしてもお互い声を出して、そして次の瞬間、生首娘の身体は小太りおじさんになっていて。おじさんの方は生首になって地面に転がっていた。


「「……………………」」


 そしてその場は、何とも言えない微妙な空気に満たされた。


「オヒョヒョ……?急に視界が低くなったなぁ……?」


 状況が分からないおじさんだけ、1人呟いていた。



 その後、私は何だか可哀想になったので咄嗟に「あ、えっと。ど、動画投稿者とかなったらどう?」と謎の提案をした。そして小太りボディを手に入れた少女と生首になったおじさんは『子供顔おじさんチャンネル』としてデビュー。割と高い登録者を獲得して、一躍とかの人(亡霊?)になった。


「今日も面白いなぁ」


 かくいう私も、仕事後の酒のつまみとして良く観ている。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 軽い怖さではじまり、電車が揺れたあとの素晴らしい展開で鹿馬鹿しい笑いで終わるというのは読んでて楽しいものです。
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