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使い捨てられ死霊術師のゴーストタウン建国記  作者: 藤崎


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274/295

274.新しい王宮の設計案

「なにをやるんだ? 楽しいことか!?」


 水の精霊ウンディーネが嗅ぎつけ……というよりは、泉からほとんど離れていないので気付かないほうがおかしい。


 邪険にするようなことでもないので、レイナは不敵な笑みを浮かべて迎え入れた。


「新進気鋭のアーティスト、ミュリーシア・ケイティファ・ドラクルのライブドローイングですね」

「玲那、無駄にプレッシャーを与えようとするもんじゃないぞ」

「心配ありません。ミュリーシアは、逆境でこそ輝くって信じてますから」

「友情っすね……」


 レイナの評価に、タチアナは目元を拭う。とんだ節穴だ。


 だが、プレッシャーを意に介さないという部分だけは間違いではなかった。


「見ておれば分かるであろう。どうせ、やることは変わらぬ」


 ミュリーシアの足下から伸びた影が。ひとつの塊となって地下空洞に蟠る。

 黒い羽毛扇を振ると、影の一部が溶けるようにして形を変た。


「分かったのです! グリフォンの頭なのです!」

「次は、前肢だの」


 続けて、両翼に胴体に後肢と描かれていく。いや、生えていく。


「ほ~。器用なものだな~」

「ミュリーシアは、すごいのです!」


 リリィがえっへんと胸を張るのと、新しい王宮のベースとなるグリフォンの姿が完成したのはほぼ同時だった。


「なるほど、島と同じ横からじゃなく上から見たイメージか」

「仰向けですね。ちょっとかわいい感じ?」

「かわいいことは、いいことなのです!」

「おっ、その通りだな!」


 水の精霊がかわいいと言われているわけではないが、それを指摘する者はいなかった。


「しかし、絶妙な感じだな」


 影絵というほどシンプルではなく。かといって、写実的というわけでもない。

 建物のモチーフにするには、ちょうどいいバランスに思える。


 しかし、ミュリーシアは納得いっていないようだ。閉じた羽毛扇をもてあそびつつ、眉間にしわを寄せる。


「ふうむ。造型しやすいようにシンプルな形にすると、あまり鳥と変わらぬのぅ」

「ピヨウスもマッスルースターたちも、喜ぶんじゃないか?」

「くくく。そうかもしれぬな」


 慰めでもおためごかしでもない、トウマの言葉。

 ミュリーシアの機嫌が目に見えて好転した。


「さすが、イナバ様っすね」

「ご主人様ですので」


 タチアナは感心し、ノインはなぜか誇らしげ。

 リリィとウンディーネは、少し離れた後方で腕を組んでうなずいている。


 微妙に納得のいかないレイナが、話を戻す。


「影絵というか、紋章みたいな感じにも見えますね」

「影でこのように描かれるとは、さすがは陛下でございます」

「これ、そのまま国旗にしてもいいんじゃないか?」

「反対はしないっすけど、王宮と同じ形になるわけっすよね?」

「それはちょっと、主張が強すぎるかもですねー」


 またしても、国旗はペンディングとなった。


「それよりも、今は設計じゃな」


 気を取り直し、ミュリーシアが羽毛扇をばっと開いた。

 影絵のグリフォンが、再び形を変えていく。


「入り口は、グリフォンのくちばしじゃな」

「口の中に入っていくのですよ~」

「いいんじゃないか? それくらいの外連味があっても」


 賛成意見を受け、グリフォンの口を構成していた影がブロック状に変わった。デック・オブ・メニィオブジェクトで構築することを前提に、調整しているのだ。


「ほうほうほう、グリフォンの目はどうするんだ?」

「窓ガラスで表現することになるであろうな」

「どうせ飾りだろう? 水とか氷をガラスにするのはどうだ?」

「どうだって、可能なのか?」

「水の精霊がいるのに、まったく頼る気がないとかどうかしてるぞ!」


 協力してくれるということらしい。


「いいんじゃないですか? ドライアイとは無縁で」

「そういう問題か……?」

「やってくれるのならば、お願いしたいのう。装飾も、いろいろ考えられそうではないか」

「おう! 任せろ!」


 水の精霊が、二頭身の胸をどんっと叩いて請け負った。


「くちばしが入り口として、前肢の部分はどうするんだ?」

「ここは、兵士の詰め所じゃな」

「あーしが指揮を執らせてもらうっすよ!」


 くちばしに迫る敵を、左右の足から十字に狙うこともできる。使うかどうかで言えば使わなさそうだが、備えは大事だ。


「そうなると、エントランスホールは喉の辺りになるっすね」

「ここから、階段や通路で別れるという形となりますでしょうか」

「内臓みたいなのです!」


 端的で分かりやすいが、ミュリーシアは苦笑を漏らす。


「区域に分けるとすると、胴体と左右の翼になるか?」

「うむ。そうなるであろうな」

「外向けのスペース、公的なスペース、私的なスペースでございますね」

「となると、正面。グリフォンの胴が、外向けのスペースとなるかの」


 またしても影が形を変え、いくつかの区画に別れていく。


「食堂に、ダンス兼ミュージックホール。それから、タチアナの言っておったトロフィールームもこっちであろうな」

「忘れずにいてくださったとは、感激っす!」


 涙を流すタチアナはそっとしておく。


「ここは、迎賓館みたいなものだな」

「でしたら、ゲストルーム。来賓用の寝室も必要になるかと」

「そうじゃな。10名程度収容できれば良かろう」


 ダンスホールなどの上に、ゲストルームを積み重ねていく。

 立体的な図面を作れるのは、影ならでは。もちろん、ミュリーシアの才能あってこそだが。


「いいのか? 少ないように思えるが」

「他の随員がおったら、別の場所に泊まらせれば良い」

「現状、あまり多くを受け入れるのは現実的とは申せません」

「理解した」


 旅館やホテルではないのだ。それに、受け入れ人数は少ないほうが断るときに角が立ちにくいというメリットもある。


「そうなると、そのための厨房とか浴場も必要になりますね」

「水回りは、ちゃんと頼れよ! な!」

「ついに、水の精霊から指令が出たっす……」

「気を遣わせて、申し訳ない」


 トウマは、頭を下げるしかなかった。


 それを横目に、レイナが軽く手を挙げた。ウンディーネの扱いは重要だが、もっと気になることがある。


「それはそれとして、右か左のどっちを私的なスペースにします?」

「今の“王宮”にくちばしを向けた場合、この地下空洞への通路は左翼側になるの」

「じゃあ、左があたしたちの部屋ですね」

「うむ」


 ミュリーシアが影を操作し、次々とブロック状に区域を分けていく。


 それぞれの私室、食堂兼談話室、厨房、温泉。こちらも、2フロアに渡る立体的な配置だ。

 特に、温泉は充分な広さを確保している。当然と言うべきか、胴体部分の浴場よりも大きい。


「中庭も、忘れてはいかんな。ここに、“王宮”を移設せねば」

「リリィたちは、そこに住むのですよ~」

「居場所が特定できると助かるっすね」


 一方、右の翼。

 ノインが言うところの公的なスペースは、円卓の間や行政関係の執務室とかを設置されることになる……が。


「今のところ、あんまり必要じゃない感じですね」

「まあ、将来のことを考えれば部屋と仕事場は分けたほうがいいだろう」

「うむ。左右の翼は、喉や胴体を通らずに行き来できるようにするかの」


 そう言って、通路を付け加えていく。


 これで、必要な部分は一通り配置し終わったが……。


「こうしてみると……下半身が余ってるっすね」

「両の後肢に、尻尾でございますね」

「ヘンリーが、倉庫が欲しいって言っていただろう」

「あとは、使うどうかはともかく牢も必要となろう」

「備えあれば……か」


 トウマは複雑そうだが、反対もしなかった。


「うむ。これで、叩き台は完成した……ということにするかの」

「手狭になったら、地下に拡張ですかね」

「そのときが楽しみだの」


 新しい王宮が狭くなるほど発展するのが楽しみなのか。

 それとも、地下を掘るのが楽しみなのか。


 わざわざ、それを確かめる声は出なかった。


 当然、両方ともだからだ。


「親方たちと相談して、設計を詰めていくとしようかの」

「モデルハウスが作れるから、便利ですね」

「じゃあ、俺は素材を集めるか」


 デック・オブ・メニィオブジェクトを使えば、簡単に新しい王宮の建材は揃えられる。

 そして、ただの岩や砂だけでなく他の素材も利用可能だ。


 おあつらえ向きに、ダンジョンには未知なる素材が眠っているはずだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] まだたたき台、ここから魔改造が……
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