名物菓子
獣人たちと別れて3日、雨続きで商人たちが動かず、仕事が無かった。
それでも布で屋根を張り、市はいつも立っていた。
そこでフランにばったり会った。
彼もこの国に用があって、今日着いたところだったらしい。
一緒に市を歩きながら、獣人たちに言われたことを話した。
俺はエルフに会ったことがないので、どんな奴らか全く知らない。
だから彼らと比べて「君は懸命だ」というのはどういう意味か、気になっていたのだ。
フランは「懸命じゃなくて『賢明』って言ったんだよ」と言った。
初めて聞く言葉で、だがほぼ同じ発音で、俺はびっくりした。
賢くて、適切な考え方ができる、という意味らしい。フランが字を書いてくれた。
それでも獣人たちの言った意味はよく分からないが、彼が「僕もそう思うよ」と言ったので、それでいいんだと思う事にした。
市では四角くて猛烈に甘い「サフ」という菓子を勧められた。
試しに食ったが、口が痺れるほど甘くて吐き出しかけた。
数種の穀物を粉にしたものに水と砂糖を混ぜ、更に、煮詰め焦がした別の砂糖と牛の乳を混ぜ合わせ、干して固めたものだという。
砂糖が安く手に入るセラムの名物だそうだが、俺は甘いものが苦手だ。
これだけは無理だと言ったが、「旅をするなら非常食は大事だ」と言ってフランが金を払い、俺の鞄に突っ込んでしまった。
結局断れなかったが、死にかけでも食える気がしない。