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第三王子の「運命の相手」は、かつて追放された王太子の元婚約者に瓜二つでした  作者: 冬野月子
第四章 隠された真実

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01

「お兄様!」

 学園の応接室の扉を開くと、ルーシーは中にいた人物へと駆け寄った。


「ルーシー、少し見ない間に綺麗になったな」

 駆け寄ってきたルーシーを抱き止めると、セドリック・アングラードは妹を見つめて目を細めた。

「いい学園生活を送れているようだ」

「はい。お兄様もお変わりありませんか」

「ああ」

「お父様とマリーお姉様は?」

「元気だよ、ルーシーに会えなくて寂しそうだけど。そうだ、送ってくれたリングピローを大層喜んでいてね」

 そう言って、セドリックは懐から封筒を取り出した。

「これはマリーからお礼の手紙だ」

「ありがとうございます!」

 封筒を受け取るとルーシーは嬉しそうにそれを見つめた。


「――エリオット殿下ですね」

 後から部屋に入ってきたエリオットの姿を認めて、セドリックは胸に手を当てると腰を折った。

「セドリック・アングラードです。妹がお世話になっております」

「エリオットだ。セドリック殿のことはルーシーからよく聞いている」

 エリオットは手を差し出した。

「ルーシーとのこと、認めてくれて感謝する」

「妹の幸せが一番大事ですから」

 差し出された手を握り返してセドリックはそう答えた。

 口調こそ穏やかだが、エリオットへ向けるその鋭く、値踏みするような視線は、彼が本心ではエリオットとルーシーの仲を未だ歓迎していないことを感じさせた。


「お兄様」

 ルーシーがセドリックの耳元へ口を寄せると何かささやいた。

「――そうか」

 頷いて、セドリックは改めてエリオットへ向いた。

「ルーシーの家族のことを知って、それでもこの子を望むのですね」

「ああ」

 セドリックを見返してエリオットは頷いた。

「ルーシーに辛い思いをさせたことは謝る。だが、それとルーシーを望むことはまた別だ」

「――そうですか」

 冷たさを感じる青い瞳の奥の光が少し和らいだように見えた。


 初夏の風が薫る季節となり、セドリックが王都へやってきた。

 辺境伯の爵位を継ぎ新しい当主となる許可を国王から貰うためだ。

 そしてもう一つ、エリオットとルーシーの婚約を正式に結ぶための手続きを行うのも重要な目的だ。


「お兄様はどれくらい滞在するのですか」

 ルーシーが尋ねた。

「挨拶回りや色々と片付けたい用事があるから、十日間くらいかな」

「それではお忙しいのですね……」

「妹のために割く時間くらいは取れるよ」

 セドリックはしゅんとしたルーシーの頭をくしゃりと撫でた。

「皆に土産も買って帰りたいし。買い物に付き合ってくれるかい」

「はい!」

 兄を見上げるとルーシーは顔を綻ばせた。



「随分と仲がいいんだね」

 これから別の約束があるというセドリックと別れ、エリオットとルーシーは学園の廊下を歩いていた。

「そうですね、お兄様もお父様も可愛がってくれています」

「それにしても仲が良すぎるんじゃないかな」

「そうですか……?」

 ルーシーは首を傾げた。

「うちの兄たちとは全然違うな」

「……それは、弟と妹の違いではないでしょうか」

「そうなのかな」

 エリオットは立ち止まるとルーシーへと向いた。


「ルーシーはセドリック殿のことが好き?」

「はい」

「セドリック殿もルーシーが好きみたいだね」

「それは兄妹ですから」

「でも血は少ししか繋がっていないだろう」

「……もしかして、ヤキモチを焼いているのですか」

 ルーシーの言葉に図星だというようにエリオットは眉をひそめた。

「自分の好きな子が他の男と抱き合っていたら不快になるよ」


「ふふ、心配しないで下さい」

 そんなエリオットにルーシーは微笑んだ。

「血の繋がりは薄くても、お兄様にとって私はずっと昔から『妹』なんです」

「ずっと昔から?」

「はい」

 ルーシーは笑顔のまま頷いた。

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