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人間傀儡は悲童貞の夢を見るか

 「早い話が、から◯りサーカスよ」


あっけらかんとしている芝田眠(しばた ねむ)、それを感じ取ったのか葉月咲(はつき えみ)は続ける。


「ピンこない? なら、ナ◯トのカンクロウでもいいわ」


「んなこたどうでもいいんだよ!」


学校の屋上に、野太い怒声が響き渡った。


「なんだよこれ! なんだテメェは!?」


「だーから、さっきから言ってんじゃん」


そう言うと咲は眠を指差す。二人は比喩的表現ではなく、物理的に赤い糸のようなもので結ばれていた。


「私はあなたの運命の人なの」


※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※


眠が人生で初めてフられたのは中二の夏、理由は


『なんか、いやな肩幅だから』


だった。


幼少期から様々な格闘技を習わされ、気が付いた時には、戸愚呂(弟)ような体格になっていた。歪な体型の所為か女子が全く寄り付かないので、自ら行動に移した結果、それ相当のダメージを受け、童貞を拗らせたまま高校に進級する。そして数ヶ月が経った今日、下駄箱に手紙というアナログな方法で呼び出され、放課後スキップ混じりで屋上に向かった。


「来たわね」


屋上のドアを開けると、誰か見ても美人と言うであろう、目元が印象的な女子がいた。


「はじめまして、眠くん」


「お、おう」


直立不動の眠だが、胸が高鳴り恍惚の閃光が体を走る。


「そんなとこ突っ立ってないで、もうちょっと近く来てよ」


咲は右手の人差し指を手前に倒す。

すると、眠の体がフワッと浮かび、まるで磁石のように咲の方へ引き寄せられる。


「!?」


二人の距離、推定10cm。


「な、なんだこれっ」


咲の人差し指と眠の体は赤い糸のようなもので繋がっていた。


「私はあなたの運命の人よ」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「ジャンケン。私がグー出すから、眠くんはパー出してみて」


言われた通りに眠はパーを出そうとするが、出したのはチョキ。なんとか手を広げようとするが、ビクともしない。


「か、体がいうこときかねぇ」


「君を操ってるからね。私は愛と欲望の戦士、葉月咲」


咲がポーズをとると眠も同じ事をした。


「これはゲームなの。男をいかに上手く従えて、いかに幸せになれるかを競うね」


「だから何言って…」



「葉月咲っ!!」



叫び声と共に屋上のドアが勢いよく開いた。そこにいたのは眼鏡女子と道着姿の男。


「ここにいたか! こん腐れ外道が!!」


眼鏡女子が咲に吠える。


「あら、これはこれは会長さん。また新しいの誑かしちゃって、やらしーやらしー」


「黙れこんにゃろっ!!!」


眠はその眼鏡女子に見覚えがあった。


「せ、仙澤生徒会長?」


彼女の指から出た赤い糸もまた、道着の男と繋がっている。


「空手部の本波くんか。今度はちょっとマジなの連れて来よってからに。そんじゃま、眠くん」


咲が構えると、眠の体は無意識にファイティングポーズをとった。


「これが君のデビュー戦よ!」


※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※



眠は不可思議な感覚に陥っていた。意に反して体が動く。それも本波の心臓やら肝臓、鳩尾を的確に捉えようとする左右のジャブ。


「ち、ボクシング齧りか」


そう言った本波はガードを固めたため、なかなか有効打が入らない。


「はあ はぁ」


自分の意思で動いている訳じゃないのに、眠の息が上がり出す。


「もろたっ!」


本並の後ろにいた仙澤が叫ぶと、本並の右足が眠のアゴ目掛けて飛んでくる。


(やべぇ、チン(アゴの先端)はまずいっ)


そう思った瞬間、右手が勝手にパーリング(叩くように避ける動作)し上手く防御する。そして眠は後退した。


「さすが有段者ね。基礎がしっかりしてるわ。眠くん、一旦ここは逃げるよ」


咲はそそくさとドアの方へ駆け出す。


「お、おいちょっと待てって!」


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